感想「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 喪177(後編)」
前回の更新からおよそ3週間……ついに最新話が更新されました!
とはいえ前後編なので、前回の更新と合わせて喪177という一話という扱いの様ですが……気分的には別のお話として読んでもよさそうです。
早速読みました。最高だったので感想を語ります。
以下、ネタバレ注意!
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さて、前回は偶然居合わせた初芝くんからもこっちが何かもらっていましたが……まずはそのお話からになりそうです。
ただ、その前に一つ。もこっちとネモがプロのコスプレイヤーを遠巻きに眺めているコマが初めに映ります。このコスプレイヤーに関しては前回も今回も、ここ以外何の追及もされていない部分です。要するにここは、物語の間としての要素が情景描写のように登場しただけか、あるいはコスプレイヤー本人はただの背景で、もこっちとネモがコスプレイヤーについて関心を抱くシーンに重要な意味があるかのどちらかでしょう。
元々わたモテは細かい描写が多く、背景のようなシーンからその後の展開に繋がる場合もあります。
という事は……次のお話はもこっちとネモがコスプレをするというフラグと見てもよろしいんですかね?
……すみません、適当言いました。久しぶりの更新でテンションが上がっていたようです。
大好きな漫画が読めるのは素晴らしい事です。どんどん語っていきましょう。
・初芝くんに貰ったもの
初芝くんは、かつて授業で描いたもこっちの似顔絵に、自分自身で納得していないという過去の持ち主です。彼自身、非常にストイックで向上心に溢れる性格なので、過去の「逃げ」を許さないというわけです。
なのでここで久々にもこっちと接点を持った初芝君が一心不乱に筆を走らせたのは、きっと彼本人の全力の画風のもこっちの似顔絵なのでしょう……と、わたしはそう思っていました。
が、いざ見てみるとそれは、遠足時のスケッチ絵でした。
……何故持ち歩いてるのか。
スケッチ用のスケッチブックを使いまわしているのでしょうか。あるいはたまたま何の縁で……と考えるときりがありませんが、不意打ちだったのでちょっと驚きました。
そしてネモの顔が描き直されています。あの時筆を走らせていたのは、もこっちではなくネモの顔を描くためだったのですね。確かにあの時初芝は、もこっちを描こうと意気込むあまりにネモとゆりの顔を忘れてしまい、シンプルな絵文字の顔を当てはめていました。文字にすると淡々としていますが、絵面が滅茶苦茶シュールで当時は大いに笑ったものです。
ここでネモの顔を加筆したのも、初芝くんのストイックさの表れなのでしょう。スケッチブックを渡したのは、コミケの慣習みたいなものでしょう。
でもそれなら、もこっちではなくネモに手渡すべきだったのではないでしょうか。前回の話、初芝くんの視線はフレンドリーに話しかけてくるネモではなく、終始無言だったもこっちに向いていました。明らかにもこっちを意識した初芝くんのムーブには、かつての因縁のみではない何かしらの思惟が含まれているような気がしてなりません。
この漫画、もこっちがある程度他人と絡むようになって、周りの人物の思考や個性が際立つようになってきました。
が、それはあくまで女子間でのお話で、もこっちは未だに男子とほとんど絡みがありません。タイトルでモテないと言っているだけの事はあります。
強いて言うなら和田くんとは漫画の趣味が合うので話をするみたいですが、緊張は隠せていないようです。まだまだ男子と深く関わるには時間が必要な気がします。
そんなもこっちの目線で進行する事が多い物語なので、男子の心情はほとんど描写されません。初期からいる気の良いイケメン陽キャの清田くんをはじめとして和田くんといい、もこっちに対して何かしら思うところがあるとは思うのですが……この辺りはなかなか進展しそうにないです。
ただ、ここでの初芝くんとの邂逅が無駄になるとも思えません。ネモともこっちの将来設計に、何かしらのかたちで初芝くんが絡むとしたらちょっと面白そうです。
さて、改めて初芝くんの画力に感心するもこっち。そういえばもこっち、初芝くんの絵を見るのは二年前の似顔絵の時以来ですか。この二年間、何一つ継続的な努力をしてこなかったもこっちは、初芝くんとの差を痛感します。
「私はあの頃から何も変わってない」と自虐的な事を考えるもこっち。
もちろんもこっちは大いに変わっています。成長しています。一年前と現在では、比べるべくもないほどに。ただそれはあくまで「人間的」にというお話であって、初芝くんのそれとはベクトルが異なります。そこにわずかながらも憧憬を覚えているところは、もこっちの今後に関する大きなポイントかもしれません。
・ここ最近を振り返るネモ
遠足時の思い出を指して、もこっちの人間関係を語るネモ。一年時の頃を思い出したのか、もこっちが妙に複雑そうな表情をしているのが気になりました。
一年時、もこっちにとってネモや岡田さんは雲の上のような存在で、忌むべき目の上のたんこぶでした。それが時間経過でここまで打ち解けるというのは、不思議なものです。当人がその変化をどう受け止めているかは……意外と明らかになっていません。もこっちは結構卑屈な性格なので、見当違いの方向に思考を巡らせてしまいそうで、少し怖いです。
・ネモとホテルへ
……ホテル?
ホテルですか?
これは……ある意味家にお泊りよりも過激な展開なのではないでしょうか。シャワールームの構造といい、このツインルームは明らかに普通じゃなさそうです。高級ホテルに泊まった事が無いので分からないのですが、こんなものなんでしょうか。ファンがざわめきそうな展開です。
さてこのホテルお泊り、ネモが自分の母親から貰った旅行券の賜物らしいのですが……
そういえばネモの母親って、まだ登場していませんよね。ネモに限らず、友人の家族についての言及は、作中全体を通してもほとんどなされていません。
小宮山さんの父親が亡くなっているというエピソードと、加藤さんに兄がいる事、それと加藤さんの母親が姿だけ登場した……というくらいでしょうか。明里ちゃんは小宮山さんの妹ですけど妹ではありませんからね。ちんちんシスターズは数えないものとして。
そのせいか、ネモに母親がいるというイメージがまるで湧いてきません。一体どんな人物なのか、想像もつかないです。一応声優の目標に向かって習い事をしている辺り、両親はネモの夢を認めている側面はあるのでしょうが……意外と奔放だったりするのでしょうか。
どうもネモの私生活が分かりません。投票でメイン回を張った経験すらあるネモですが、その辺りについての言及はほとんどなされていないあたり、まだまだ「わたモテ」という漫画発展の余地の大きさに驚きます。
あと10年くらい続いてほしいものです。
・シャワーを浴びるネモ
サービスシーン……ではありませんでした。フィクションでシャワーといえば、大抵はサービスシーンが期待できるものです。実際この漫画でも、修学旅行にてうっちーがシャワーを浴びるシーンがサービスしてありました。
が、今回は無い模様。一周回ってあざといです。
さてネモ、ブラインドが上げられるシャワールームにもこっちを残して一人、赴きます。
(まあクロなら絶対開けてくるよね!)
という、通常の相手ならばおよそ考慮に入れる必要の無い悪ふざけを当たり前のように想定に入れて、その際のシミュレーションまで脳内でこなしておくネモ。卑猥です。卑猥極まりないです。
裸を見られる事が分かっていながら、その時の計画を入念に練っておきながら、あくまで受動的にもこっちの悪戯を待つというその受け身の姿勢、ネモの本質を表しているみたいですごく好きです。
これはネモがドMだとか、露出願望のあるド変態だとか、そういう下ネタ的な事を言っているわけではありません。むしろネモは反対に、親友の岡田さんを振り回して面白がるという若干加虐的な一面も持ち合わせており、一概に受け身が全てというわけではありません。
ネモがもこっちに求めるのは、そういう幼稚な悪戯を介した気の置けない関係、という事でしょう。そしてその悪戯を通したハプニングを逐一楽しむのが、根元陽菜という人間です。
ネモはかつて、食堂で出会ったもこっちと小宮山さんとの関係に対して羨望のようなものを抱いていました。もこっちと小宮山さんとの関係は非常に複雑で、あの時ネモが見たものが全てであるとは口が裂けても言えません。ただ、二人の間に流れる遠慮の無さというか気安さが、ネモに「羨ましい」と思わせたのもまた事実。
つまりネモはここで、もこっちにシャワールームを覗いて欲しいのです。裸が見られたいとかではなく、気の置けない関係としてのやりとりを楽しみたいのです。
「変態!!」と言ってもこっちに逆襲するネモのシミュレーション――ここのネモが妙に可愛いという戯言は置いておくとして――ここではネモは怒ったような表情を浮かべていますが、きっと内心は嬉しいのでしょう。
もっとも当のもこっちは、ネモに見向きもせずにエロ音声に夢中の様子。楽しいじゃれ合いを予想していたネモは、そりゃあ機嫌を悪くもします。もこっちは何一つ悪くは無いのですが……まあしょうがないです。
ネモも本気で怒っているわけではないので、次のコマで元通りなのがお互い可愛いです。
・突然の下ネタトーク
もこっちって、毎回下ネタ挟んできますよね。もはやこの漫画、下ネタがノルマなんじゃないでしょうか。なんか急にプレイボーイみたいな事を言いだすもこっちが面白いです。
「私のクラスになると女の裸見飽きてるのもあるし」
もこっちのクラスって何なんでしょうねえ……自己評価低いくせにすぐこういう事言ってくるから、もこっちは面白いです。
しかしもこっちの「ネモの体はもう見てるし」というセリフ、端的で真っ当な事を言っているように聞こえて、よくよく考えるとおかしいですよね。
他人の裸を見るのをトロフィー獲得ミッションみたいに語るのは笑えます。いや、他人の裸を見るのってそういう事ではないでしょう……と。
確かに何度も見たってしょうがないかもしれませんが、そういう思考の人はそもそも一度だって見ようとはしないでしょうよ。このずれ方がもこっちらしくて、大好きです。
どうでもいいですが、このタイミングでもこっちが「一年も前から~」のくだりを言いだすの、なんか卑怯です。このタイミングで言うと、あのお姉さん達が一年も前から卑猥な事しているみたいではありませんか。文脈的にありえない発想なのに……話の流れって怖いですよね。
・夢の大きさを感じるもこっち
さてここで、エロ音声の声優として活躍していたあのお姉さん達を思い出したせいか、もこっちがちょっと切ない表情で半ば諦観のような言葉を口にします。以前からネモに乗せられて作家という道を見ていたもこっちですが、一線級の人物達を目の当たりにしたせいで相対的に自分自身のスキルの乏しさを実感し、根拠の無い自信をいくらか失ってしまっていたのかもしれません。
ただ、そうやっていじけて、初めの一歩を踏み出そうとしないのはよくない事です。ネモの指摘を即座に否定するあたり、本当にもこっちは捻くれています。
もこっちにはまだ自信がありません。作家としての活動履歴の無さが原因です。そしてそのための一歩を踏み出す気が無いのなら、その夢はかないっこありません。そんなちぐはぐなもこっちを正すため、ネモが動きました。
・卑猥なネモ
…………
なんだこれは!?
やっぱりネモは淫乱ピンクですねえ。
即興でエロ声を出してもこっちに迫るとは、やれば出来るではないですか。音声を聞いて赤面していたネモはどこにいったのか。
あくまで能動的に動く分には覚悟が決まっている分平成を装う事が出来たのか、エロを演じる躊躇よりももこっちの姿を見ていられない気持ちが勝ったのか、それは定かではありませんが……どうあれネモはもこっちに対して、示したわけです。初めの一歩を踏み出す事の容易さを。
実に綺麗な物語ではないでしょうか。絵面は酷いですが。
ネモはドMではないかもしれませんが……そういえばもこっちは普通にドMでしたね。よくよく考えたら作中の初期時点で卑猥そうな音声聞いて顔を赤らめていましたし、淫乱もピンクももこっちの事ですね、これは。
ネモのエロ声にゾクゾク肩を震わせるもこっちが弱すぎて笑えます。
ただ、エロ声ではあっても、この場面にてエロは求められていません。絵面が下ネタなだけで、ここは結構真面目なシーンです。
もこっちの自虐的な部分を指摘するネモ。彼女がそれを指摘したのは初めてではありません。クラスマッチでも似たような感じでもこっちの自虐思考を咎めていましたし、ネモはもこっちにもっと堂々としてほしいのでしょう。
「うぇーい」から始まったネモともこっちとの関係は、少なくともネモ側からすればもこっちには対等以上でいてほしいはずです。
ネモともこっちとの語らいで、今回のお話は終了です。
総評
今回もとても面白かったです。9ページの内容とは思えないくらい、いろんな感想が出てきました。今回は下ネタと心情描写多めという構成でしたが、それゆえ非常にわたモテらしさが溢れた良回でした。
さて、ネモともこっちの二人中心のお話はまだまだ続きそうです。ホテルに泊まって二日目、ネモが一体どんなプランを用意しているのか、想像すらできません。楽しみでしょうがありません。
次回の更新は7月9日だそうです。何としてでも続きが読みたいものです。
喪177(後半)の満足度:98/100
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