11月27日はノーベル賞制定記念日
1895年のこの日、かの有名なスウェーデンの科学者アルフレッド・ノーベルが自身の遺産を使ってノーベル賞を創設する旨を遺言状に書いたとされています。
ノーベル賞は有名ですよね。物理学、化学、生理学、医学、文学、平和および経済学の分野で功績を残した人に贈られる、世界的な賞です。かつてダイナマイトを発明した偉大な功績者であるノーベルが、更生の発明家のために道を作ったというのはなかなかの美談です。この手の偉人伝にありがちな諸々の裏事情はよく知りませんが、とりあえず尊敬できる人物だと言えましょう。
さて、ノーベル賞作家の著作を一つ紹介します。
2017年にノーベル文学賞を受賞された小説家、カズオ・イシグロの著作の中で最も有名なのが「わたしを離さないで」でしょう。2016年には日本人キャストで大幅に設定やストーリーが変更されたテレビドラマ化もされているらしく、非常に知名度の高い作品です。
世界観としてはSFに該当するのですが、物語そのものは純文学の色が強い雰囲気です。
主人公のキャシーが昔を懐かしむような口調で回想し続けるという内容のこの物語は、あらゆる描写がどこか懐かしく、ノスタルジックな気持ちにさせてくれます。
そして作中において当初から示唆され続けるとある残酷な真実が、ページの進行とともに少しずつ確かな輪郭を帯びていき、ゆっくりじわじわと物語が終わりに近づきます。急転直下に不幸や衝撃の展開が訪れるのではなく、非常に細やかで段階的に終わりが訪れるため、読み手の方は最初から最後までノスタルジックで穏やかな気持ちのまま、しかし不穏になりつつある描写に心を乱され、静と動の矛盾した心持ちで物語に振り回されるのです。
さすがはノーベル賞作家の代表作というだけあって、非常に面白いです。ぜひともオススメしたい一冊です。
そういうわけで、明日はノーベル賞制定記念日。偉大な賞を礼賛しましょう。