感想「ヒナまつり 最終巻」
今月12日、一世を風靡した珠玉のギャグ漫画「ヒナまつり」の最終巻が発売されました。
非常に気持ちの良いラストでした。早速語っていきましょう。
・漫画紹介
以前の記事をリンクします。
以下、最終巻のネタバレ注意!
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・分解! 全壊! さようなら!
スピード感のあるサブタイトルが、そのまま今回のあらすじなのが面白いです。最終話に向かってアクセル踏み抜いているこの感じはどこか切なくて、長い長いお祭りの終わりを想起させられてエモーショナルで素敵です。
とりあえず話の縦軸は語らず、ただただ感想を連ねます。
・新曲5曲作ってきた
アツシお前……!
本番まで一週間を切ったという段階でそんな無茶振り……
そんな無茶振りしといてよく「たまんねぇぜ」なんて言えたものです。たまんねぇのはお前だよと、次元の壁を越えてツッコミたい気持ちでいっぱいです。
初登場時はただの路上バンドメンバーの一人に過ぎなかったアツシですが、ロックージョンが世界の命運を左右すると判明した辺りから厄介な面が目立つようになりました。なりふり構わない情熱というのはこんなに厄介なものなのですね。というかアツシ自身、未来を盾に新田さんや瞳にわがまま言っているようで、とんだクズ野郎に見えてきました。クズ野郎なのは今更かもしれませんが……ここにきてさらに一段飛び越えてきました。
サブや詩子さん越えしたかな?
・マネキンが免許持ってたら怖いわ
新田さん人形、万能で笑います。
新田さん人形は人形なので当たり前ですが表情がないので、この漫画において比較的破壊力の高い顔芸が出来ないという弱点があるはずなのですが……無表情でも面白いのが卑怯です。
新田さん人形もこの「ヒナまつり」において、もう欠かせないキャラとして機能していました。それだけに、今回の展開はなかなか笑えます。
・罪 償いましたぁ?
真っ黒な顔したヒナがたまりません。
でもヒナのこの滅茶苦茶な行為も根本を辿れば完全にアツシのためです。
言い換えればアツシのせいです。
アツシこの野郎!
しかしどうでもいいですが今回のヒナ、やたら敬語が多いです。それでいて全く相手を敬った感じが見られないのがヒナらしくて面白いです。
・俺のベントレーちゃんどうなってるの!?
タイトルで全て察せる展開なのに面白いのが不思議です。絵面って大事なんですね。シュールが過ぎて最高です。
・後は飛んでこう
結局飛ぶのか……
・SUPER SUGEE FESTIVAL
ついにフェス本番です。
人類史上誰も見た事がないライブ……熱いです。
もうね……これね……
言葉では語れません、本当に。
シュール全開で大味なギャグで、かつ謎の感動が溢れだしています。積み上げてきたものの集大成、まさにヒナ「まつり」といったところでしょう。
ヒナ・アンズ・マオがかっこいいし、解説役してる新田さんと瞳のコンビが最高だし、アツシはウザいし言う事無しです。
それでもその中で一つだけピックアップするなら、やっぱりヒナのかっこよさです。
ヒナは高校生になってから、かっこよさが光る場面が増えました。なんていうか、いちいち言動がイケメンなんですよね。嵐を呼ぶ前に空を飛んだ時に「ステージ止まっちゃうよ」と口にしているシーンのヒナ、何故か滅茶苦茶かっこよくて、すごく素敵でした。
作中でもお祭り騒ぎで、読んでるこちらもアツアツで、最高の一話でした。
・皆さんお疲れさまでした!
こちらのセリフです、大武先生。
さて、ここから先はまとめですね。物語の縦軸が消滅した後は、縦糸を取り去った事で浮いたキャラクター達の回収といったところでしょう。
・ねぇお姉さん ボクすごいでしょ
ハルくん……キャラ変わった?
ショタキャラが成長した結果キャバクラにハマるとは……初登場時の黒幕感はもはや見る影もありませんね。
ナチュラルにお尻を触るな!
・過去回
最終話手前にて、今まで一切描写されてこなかった未来の世界のヒナ達のエピソードです。超能力少女三人組の性格がよく表れている一方で、あまり展開性を感じないお話でした。なるほど未来の描写は三人組の印象を大きく決定づけるリスクがある一方で、次の話に繋がらないので連載に出すには向かないという事ですね。
だからこその最終回手前の露出という事でしょう。特別感あって好きです。
・シャンパンタワー
ヒナまつりといえば、やっぱりこれですよね。これが最終回でも違和感の無いさっぱり展開、良いです。
そしてヒナ、向上心が垣間見えます。これまでニートまっしぐらの思考だったのが、ライブでの成功体験のためかゲームを作る側への興味を持ち始めます。ヒナのかつてない成長が見えるまとめ回でした。
・それからの日常
後日談といったところでしょう。ここは前後を無視してキャラごとに語って行きたいと思います。
・ヒナ
まあ、そう簡単には変わりませんよね。日頃の怠惰が祟ってしまったというわけです。
しかし、変化は確かにあります。仁志に告白されて年相応の反応を見せたり、以前よりも新田さんとの父娘的なやり取りが自然に生じたりと、人間関係的な部分の成長は著しいです。首へのダメージを顧みず授業と向き合おうとするその姿勢だけでも、何の疑問も無く居眠りで過ごしてきた高校時代とは違います。
最初から最後まで通して見ると大きく変化したキャラですが、主人公だけあって一番好きです。
・新田さん
父親っぽさが強くなっています。
底なしに勢力を強めていく瞳の力に後押しされながらヤクザとしても順調に成功を収める新田さんですが、釈然としていない感じなのが新田さんっぽくて好きです。
変人ばかりの周りにうんざりしていながらも満更でもなさそうな新田さんはまさにこの漫画のもう一人の主人公。安定感がありました。
もう再婚する気はなさそうですが……新田さんが幸せそうで満足です。
・タカシとケンゴ
中学時代の友人その1、その2。ヒナが超能力者であるという事を知る数少ない人物の一人でありながら、最初から最後まで物語の本筋に大きく関わらなかった真の意味での友人キャラ。
二人とは恋愛感情抜きで友人という風な関係を築いていて、良い距離感です。
・殺マスク
まさかの留年。同じくヤンキーの足立が真面目に働いているのと対照的に自由な男です。大武先生お気に入りの足立、完全なモブであるにも拘わらず出番が多くて嬉しいです。
・さよちゃんと委員長
委員長って名前出てましたっけ……?
単行本では倉敷という苗字が出ていましたが……
まあそれはそれとして。
さよちゃんは一歩引いたような態度を取りながら意外とハートフルですが、委員長は徹頭徹尾一歩引いていて笑えます。
ストイックな恋愛を追求し続けた結果、最後には瞳をターゲットに絞る辺り、割と本気なガチです。こういうキャラは一周回って好きです。
・瞳
閣下はもはや雲の上の人です。
でもそのすごさは本人にとってはあまり意味が無いものだというのが切ないところです。世界を動かしてまで身を置いたキャンパスライフに浮かれる彼女は年相応の少女といった風貌で、こちらが彼女の本懐なのでしょう。
初登場時はちょっと面倒見の良いだけの普通の子だったのが、まさかこうなるとは……
ちなみに瞳、単行本にて「自身が欲するモノは何一つ手に入らない」と無慈悲な宣告を受けています。
このキャンパスライフも長くは続かないという事でしょうか……
あるいは新田さん関連? 彼女はそう簡単に冷めるタイプではなさそうですし、まだ新田さんが好きなのでしょう。でも新田さんにはそんな気が微塵もなさそうなのが最高に切なくて美味しいです。瞳は不憫なのがよく似合います。
・マオとセントラルパーク
マオは女優として活躍する傍ら、再結成したセントラルパークのロックージョン部分を引き続き担当しているようです。
マオの人生は波乱万丈でした。未来で不遇に囲われた後、無人島で何年も過ごし、エセ中国拳法に囲われ、流されるままに忙しく……
でも本人は友人との絆を得られて幸せそうなのでハッピーエンドといったところでしょう。
・アンズ
アンズはマオほど華やかな生活ではありませんが、マオ以上に家族の絆に恵まれました。
ヒナのライバル枠として登場した当初からすぐに一転、まさかのホームレス転落、からの養子縁組となかなかの荒波でしたが、ツンデレ的な性格である彼女持ち前のピュアハートにより新田さんの心を打ち抜き、唯一無二の立ち回りを見せてくれました。新田さんのアンズバカも健在で、周囲のにぎやかさが楽しそうでした。
・サブ
サブこの野郎!
・詩子さんと津田とハルくん
まさかの津田再登場。もはやハルくんしか登場しないものかと思っていたので意外です。っていうかまだハルくんを扶養していたんですね、この人……
作中でもヒナに並ぶ物理的ポテンシャルが高いハルくんはキャバクラにハマって牙が抜かれましたが、代わりに津田さんのサイフにダメージが……
割と明確なかたちで新田さんと敵対関係にあった津田さんですが、こうなるとかわいそうなものです。同情はしませんが。
そして詩子さん……真面目に働いている……!
一応クズからある程度立ち直った描写もありましたが、まあこれが本来の彼女の姿なのでしょう。サブとは違うという事ですね。
かつてはあの新田さんが鼻の下を伸ばすほどの器量の持ち主だった詩子さんですが……さすがにもうヒロインにはなれませんよね。アニメ版のOPでヒロイン顔していたのは、今見返しても爆笑ものです。
・仁志
最後に仁志。爽やか系イケメンにして内藤さんの息子……そしてある意味この漫画一番の苦労人。
ヒナの事が好きという、非常にインポータントかつ唯一性の強いポジションのキャラですが、結局恋愛面でもヒナに振り回されっぱなしの仁志、不憫で大好きです。
これがラブコメなら間違いなくメインキャラクターですが、これはギャグ漫画なのでそういう感じにはなりません。でも仁志には幸せになって欲しいところです。
とりあえず内藤さんにはあらん限りの罵声をぶつけても良いと思います。
・最後に
やっぱり〆は、ヒナと新田さんの二人きりでの会話ですよね。
落ち着くというか、心が安らぐというか。
ジェットコースターに乗った後のベンチみたいな、そんな安心感。
それに包まれて終わる物語……とてもよかったです。
総評
ヒナまつり最終巻……笑いあり涙あり感動ありの逸品でした。
ギャグ漫画史に残ると言っても過言ではないこの漫画、これからも読み返しては笑いたいと思います。そして大武先生の次回作、期待しておきます。
最終巻の満足度:100/100