見出し画像

「感想 MAJOR 2nd 20巻」

今月17日に、「MAJOR 2nd」の最新刊が出ました。

ついに「2nd」も20巻。いよいよ並の漫画だと終盤に差し掛かろうという巻数にまで行きつきました。早速語って行きたいと思います。

・あらすじ

以前の記事をご参照ください。

以下、20巻のネタバレ注意!

・大吾の変心

前回、元風林野球部監督国友が率いる辻堂野球部に惨敗した大吾達。辻堂戦で敵チームの捕手として再会した光に煽られなじられ完膚なきまでに叩き潰された大吾の精神的ダメージは計り知れなかったようで、倒れてしまいます。

無理もない事です。元々父親ほどメンタルが強くない大吾ですが、光はかつての親友であるという以上に、彼の野球人生における最大の負い目でした。光に怪我を負わせた事を深く気に病んでいた大吾は、一時期野球そのものから離れていたほどでした。そんな光が見事強豪野球部に復帰しているという事実は本来、大吾にとって朗報のはずでした。

光が余計な煽りさえしなければ。

確かに光は決して口が良いとは言えません。帰国子女であるためか、当初大吾と出会ったばかりの時も、辛辣な言葉を浴びせてきました。

しかし決して優しくないわけではありません。口が悪いなりに野球に対して卑屈な大吾を焚きつけチームに誘ったり、一生懸命にプレイする大吾の姿を見て笑うチームメイトに怒りを露わにしたりと、思いやりのある行動が目立人物です。

そんな彼が再開後突然冷たくなるその様は、小・中学編の寿くんを想起させられます。寿くんは吾郎と再会するたびに冷たくなっていましたからね。

ですが寿くんにも寿くんなりの理由がありました。小学時代は単に試合で全力を尽くすため、中学時代はスカウトの件で確執があったためと、それなりの理由がありました。

察するに光にも、相応の理由があるのでしょう。少なくとも辻堂戦でのセリフを額面通り受け取るべきではないと思います。

ですが敗戦直後の大吾にそこまでの思考が可能であるはずもなく、半ば自暴自棄に向上心を失った末、それを睦子に責められついに爆発。あろうことか中学生の若さでパニック障害を患ってしまいました。

大吾は本当に可哀想です。中学時代は監督業とキャプテンを兼任しながら自分の能力アップを二の次にしてチームのために文字通り身を粉にしていたというのに、その末路がこれとはあんまりです。あまりの報われなさに、キャラクター的に別の意味での需要が生まれてしまいそうです。

ですがそこに一筋の光明が……

・吾郎登場

ついに父親の登場です!

大吾が小学生の頃に光関連で窮地に陥った際に一度、大会での負けを喫したタイミングで一度姿を見せた吾郎が、ここで三度目の登場です。

前作主人公として、丁度良い塩梅の登場回数と言えましょう。しかしそれでいて決して地味ではなく、劇的に登場するところが憎いです。吾郎の活躍を見ていると、やはり主人公の風格を感じます。

さて吾郎、病院で大吾を攫っていきます。清水に送ったラインが吾郎っぽくて好きです。こういう子どもっぽいいたずらが好きなのは、昔からですね。清水弟にもお金を拾わせるいたずらをして楽しんでいたのを思い出させます。

子どもっぽく大吾を連れまわす吾郎。ファミレスで思い出の海堂入部試験を思い出しながら親子の語らいを交わし、バッティングセンターで父親らしく大吾をしごき上げ、河原でキャッチボールとやりたい放題な吾郎に和みます。

ですが親としてきちんとやる事はやるのが吾郎。とっても素敵です。

さりげなくパニック障害の原因を訊いたり、清水と連絡を取って大吾の現状を確認しながら言葉を選んだりと、すごく良い父親しています。傍若無人な若い頃の面影を残したまま、それでいてきちんと息子を愛しているという姿勢が伝わってきて、こちらまで嬉しくなってきます。

この漫画、吾郎の父親ムーブこそが大きな魅力の一つかもしれません。

紆余曲折の末、本当に大吾を置いて帰ってしまうあたりが実に吾郎といったところでした。

・監督問題

さて、学校に突撃する吾郎。思い立ったが即日で、行動力があります。あの大吾が教員にきちんと敬語を使っているのが妙にシュールで笑えますね。

さて、野球部監督問題を解決するべく、校長室へ向かう吾郎。校長室では校長と顧問の山口先生が話をしていました。

山口先生はやる気がありません……が、興味のない分野の顧問をやらされているだけなのでやむを得ない部分はあるでしょう。一応これまで心の中で散々文句を言いつつも、野球部によくしてくれている面を考慮すると、彼女は彼女で現在の野球部の隠れた功労者の一人です。リアクション芸も可愛いので、好きなキャラです。

ですが、そんな山口先生が霞む展開がここで露わになります。

強豪だったはずの風林野球部の没落の元凶。

中学時代の黒幕。

「MAJOR 2nd」における最大の敵。

それは江頭でした。

かつて海堂高校野球部のマネージャーにして、実質的な監督権限を持っていた江頭は、その横暴さゆえに吾郎のみならず海堂野球部にいた寿くんとも敵対し、最終的に味方側の造反によってその地位を追われた敗北者です。

その江頭がここにきて吾郎の所属する学校の校長に就任していたという事実は、なんとも醜い運命の巡り合わせです。

江頭はかつて自分の顔に泥を塗った吾郎を激しく敵視しています。あれから何があったのか、大人として以前よりもずっと落ち着いた様子で吾郎と相対しますが、陰湿な性根は変わっていないようです。

……というか。

よく平気な顔をして吾郎と会話が出来るものです。

片や現在校長の地位に君臨するとはいえ、すねに傷持つ男。片や日本を代表するスター選手。かつて監督代行と生徒という関係だった二人の地位は、もはや比べ物にならないほどに一変しました。

それでなくとも江頭にとって吾郎は、まさに過去の傷と直接的な関係がある人物です。監督の指示によって故意に生徒に怪我をさせるという二、三年前の時事ネタみたいな真似が明るみに出た暁には、教育者として致命的です。江頭にはもっと吾郎の事を恐れてほしいところです。

というか前作で反省や改心をせず、悪人のままでフェードアウトしたほとんど唯一の人物なので、ここらでそういう展開に向かって欲しいところです。

さて、どうあれ吾郎が監督をするのは駄目みたいです。資格も無いし、第一まだ選手ですしね。

・大河コーチ

という事で、満を持して清水の弟、大河の登場です。作中では大吾の叔父という美味しいポジションにあるにも拘らず、ここに至るまで登場しませんでした。ある意味美味しい登場の仕方ですが。

さて、かつては輝かしい才能を持った頼れるスーパーサブ投手だった大河ですが、年月の経過は残酷です。とんだ無気力サボりパチンコおじさんに成り果ててしまっていました。あまりの没落振りに涙が出てきそうです。

とはいえそんな没落っぷりを見せるだけ見せて終わらないのがこの漫画の良いところ。野球に触れてかつての情熱を取り戻すという構図は、とても綺麗で陳腐ながら大好きな展開です。

やる気を取り戻してコーチとして活躍する大河。しかし風林野球部の能力は思った以上に高く、大河だけでは限界のようで……

・寿くん監督

……

…………

……………………

こんな事があっていいのでしょうか?

作中でも散々突っ込まれていますが、寿くんはもはや保護者ではありません。れっきとした外部コーチです。レジェンド級の元メジャー選手が資格を引っ提げて、無名中学の監督業に携わるという展開は、控えめに言ってえげつない優遇っぷりです。

さてここで気になるのは、寿くんと光との確執。

もう光も中学生活後半に差し掛かっているというのに、進学以来一度も会っていないというのはかなり異常な事態です。実の息子とゆうに一年間会えないままというのは、一体どういう心境なのでしょうか。

寿くん周りには、かなり謎が多いです。奥さんとも既に離婚しているようですし、中学時代で光の苗字も変わっていました。もしかすると光の母親が再婚したのかもしれません。いずれにしても、複雑な事情がありそうです。

大吾の家庭は、総じて幸せです。

プール付きの広い家に、お金持ちの家計。父親が単身赴任とはいえ非常に良好な両親の仲。加えて近所には頼れる恋女房。

家庭環境だけを見れば、大吾ほど恵まれている人物は他にいないでしょう。

それに対し、光の家庭はどうなのでしょう。全くの謎に包まれています。上の方でも述べましたが、きっとこの辺りがカギになってくるのでしょう。

ともあれこれでようやく風林野球部の始動です。

現在秋季大会を終え、残すところは三年夏の大会のみ。それまでに打倒辻堂は成されるのでしょうか。

女子達の中には自分の伸びしろに対して達観している人物もいるようですが、それは寿くんの指導で変わるのでしょうか。

絶妙にやる気のない「キノコ」こと千葉くんの明日はどっちでしょう。

そして監督就任でやる気を取り戻すであろう仁科やさらに発奮した大吾は、さらなるパワーアップを遂げるのでしょうか。

次巻から、いよいよ気になる展開になりそうです。

総評

今巻、一度も試合を行いませんでした。けれど展開は大きく動き、次巻が気になる内容になっていました。面白かったです。

20巻の満足度:87/100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?