
漫画感想「賭博堕天録カイジ 24億脱出編 11巻」
今月6日、「カイジ」最新刊が発売されました。
ちょっとだけ語ります。
・漫画紹介
紹介記事をリンクします。
・前巻の感想
感想記事をリンクします。
以下、最新刊のネタバレ注意!
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なんだこの巻!?
思わず前巻の時と同じリアクションになってしまいました。
・遭遇
前回、奇跡的にカイジがキャンピングカーを借りた店「地球のどまん中」に辿り着いた遠藤は、電話での探りに限界を感じ、自ら赴く事になりました。
まずは極悪人面を取り繕う遠藤ですが、一ページで崩れてて笑います。
それにしても遠藤、キャンプに対する不寛容さが異常ですね。確かにキャンプが好きではない人は世の中に一定数いるでしょうけれど、ここまで頑ななのは珍しいと思います。大方、先の黒崎とのキャンプが原因なのでしょうけれど……
黒崎とのキャンプの時、遠藤は毎週のようにキャンプに行きたいと考えている黒崎に「そんな奴はクズだ」という旨のセリフを吐き捨てています。仮にも帝愛No.2の相手に対して、あまりにも配慮に欠けるセリフです。
また、カイジの実家を張り込んでいる時も、仕事に対してやる気の無い部下を執拗にクズ扱いし、忌み嫌っていました。もっともその時は部下も部下だったわけですが……
この辺りから遠藤は、労働に関して過剰な美徳を見出しているきらいがあるように感じます。超絶ブラック企業の帝愛の傘下で長年働いていたせいで、そういう極端な価値観を育んでしまったのでしょうか。もっとも、自分の価値観に合わない事柄、相手を見下す思想は紛れも無く遠藤自身のものでしょうけれど。
さてそんなワーカーホリック気味な遠藤が、自由人の「どまん中」店主を相手に上手く立ち回れるか……というお話です。
・表裏
善人を装っている時の遠藤は新鮮ですね。人の良さはあまり感じませんが、愛嬌があります。
しかしその裏で店主の事を見下しまくっている辺り、キャラはぶれていません。口に出さないとはいえ会ったばかりの相手に「税金未納」「犯罪者」などという強烈な決めつけは普通しないでしょう。いい感じに嫌な奴という印象が常に付きまとう遠藤、良いポジションですね。
さて、カマの上塗り遠藤の玄人芸、嫌いじゃないです。伊達に長年悪党を務めていません。が、やっぱり店主とは相性が悪いみたいですね。
・陳弁
遠藤、語るに落ちた格好ですね。
取り繕おうと必死になって、途中から善人面も忘れてしまっています。店主は論理的というよりも感情的な方なので、悪人面を晒したのは心証を大きく損なう一因となったのではないでしょうか。
ともあれ店主と敵対した遠藤。立場が変わった段階ですぐさま別の手段で攻め立てる遠藤、良いですね。こういう揺さぶりは個人的に好きです。
・手管
どうでもいいですが、やっぱりカイジはどうあっても名前呼びなんですね。こういう印象を窺う場面でもフルネームや苗字ではなく名前で呼ぶ辺り、相当「カイジ」という響きが印象的にきこえるのかもしれませんね。
しかしその揺さぶりにも引っかからない店主、強いです。紛う事無い変人であるがゆえに、他人に対する理解力が乏しい遠藤の理から外れているのでしょうか。ともあれ遠藤、タネ切れです。
だからここから先は色んな意味で茶番です。
何故素人の喧嘩を買ってしまうのか。
理論派のくせにこういう加虐癖が災いして、全く必然性の無い行動に身を投じてしまう玄人……小者感前回で笑えます。
そして謎のアルファベットの応酬、唐突過ぎて面白いです。こういうところでふざけてくるこの漫画、好き。
ただそこまでやったなら、スパナのSって言えよ!!! とは思いました。
・喧嘩
結局警察呼ばれて退散の末、どうでもいい喧嘩の勝敗に拘って部下に八つ当たりした挙句、当初の目的は果たせなかったという遠藤、最高に小者。
松本も呆れてますわ。
・邯鄲
邯鄲というのは、中国の故事「邯鄲の夢」から引用された固有名詞です。「一炊の夢」という慣用句の由来であり、要するに喧嘩を終えた店主のその後を夢と現実になぞらえたサブタイトルなのでしょう。妙に凝っていますね。
「カイジ」シリーズもそろそろ相当長いですし、漢字二文字のサブタイトルも段々と複雑化していきそうです。
さて、喧嘩で無惨にもぼろぼろになった店主ですが、そんな身体を押してカイジ達に連絡を入れます。
遠藤と比べて相対的に評価が上がったというのもあるのでしょうけれど、ここまで手を回してくれる店主、面倒見が良いです。遠藤も認める通り、カイジの人徳の為せる業でしょうか。
・機転
久々登場のカイジ、主人公っぷりを発揮しました。
途中危ない場面は何度もあり、店主から遠藤の来訪情報がその日のうちに聞けたという時点で相当運が良いですが、そこから先はカイジの機転です。結果的に遠藤はカイジの自宅でのやり取りに続き、完全に後手を踏んでしまった事になります。
さて、今回も遠藤の追跡を逃れたカイジですが……
遠藤にはもう打つ手がありません。カイジ側から何か失策でもない限り、もう一度その影を見つける事は難しいでしょう。
しかし遠藤の追跡が無ければ逃走劇が成立しません。
次巻でどういう展開になるのか……予測がつきませんね。
総評
イタチごっこを続けるカイジと帝愛との逃走劇も、もう11巻です。おそらく終盤に差し掛かってはいるのでしょうけれど……どういう着地になるのか、楽しみです。
11巻の満足度:65/100