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感想「賭博堕天録カイジ 24億脱出編 8巻」
今月6日、カイジの最新刊が発売されました。早速感想を語って行きたいと思います。
・漫画紹介
紹介記事をリンクします。
・前巻の感想
感想記事をリンクします。
以下、最新刊のネタバレ注意!
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帝愛会長の息子、兵頭和也とのギャンブルに勝利し、24億を得たカイジ、チャン、マリオの三人は帝愛の追っ手を逃れつつ、逃亡の際にかさばって邪魔になる現金を圧縮するべく、銀行の口座を開設しようとしていました。が、カイジには口座の開設に必要な身分証がありませんでした。唯一所持する保険証も実家にあり、帝愛にマークされているであろう実家に戻る必要が。
変装と地の利を生かし、なんとか帰省と保険証の入手を果たしたカイジでしたが、追っ手のリーダーである遠藤はカイジの帰省に勘付き、着々とカイジ捕獲のための包囲網を張り巡らせます。しかし満を持して遠藤が乗り込んだカイジ宅は、既にもぬけの殻と化していて……
と、ここまでが前巻までのあらすじです。異様に長くなりましたが、やむを得ない事です。「24億脱出編」はギャンブルではない分、過程が複雑ですから。
では、順を追って感想を述べます。
・遠藤サイド
まずは遠藤主観のエピソードからです。
遠藤はカイジの姿こそ見ておらずとも、明らかにカイジの帰宅を確信していました。そしてそれ以降はずっとこの団地……特にカイジ宅を中心に見張りを立てていたので、そこから逃げる術は無いはずでした。
が、遠藤突入時にはカイジはいませんでした。遠藤からしてみれば、狐につままれたようなお話です。
そうですよね。
遠藤は確かにカイジの存在を確信しています。それなのにいないというのは、理に反しています。推論と事実が不可解に食い違うというのは、実に納得のいかない事でしょう。
しかしそうなると、精神的な疲労がすごそうです。悪魔の証明よろしく、カイジが実家に「いない事を証明する」というのは困難です。今まで以上に疲弊した調子で張り込みを続けるというのはしんどいでしょうね。
諦めるにしても、論理的な説明が必要です。カイジがどこにいったのかという事に対して、遠藤が納得できるだけの説明が。
出ましたねえ。えらいところから出たものです。
遠藤が張った完璧な包囲網は、部下のうっかりミスで崩壊していました。これは酷い。
前巻、めんどくさいおじさんムーブの遠藤と責任感の無い部下のぶつかり合いで両者痛み分けになっていましたが……これはさすがにちょっと遠藤が可哀想です。遠藤も悪人かつそこそこクズではありますが、彼なりに頑張った結果がこれですからね。やりきれないところです。
これでカイジ脱出を諦める論理的な説明が終わりました。
ただし、それはあくまで遠藤サイドのお話であって、本来の真相ではありません。理詰めで動くカイジが、見張りのうっかりに任せた特攻をするわけがありませんからね。ばかばかしい展開で終わらなくて、読者としても胸を撫で下ろします。
・真相
やっぱり保くんでしたか。さすが実家周り、深夜に突然押しかけても対応してくれる幼馴染は貴重ですね。
遠藤が見誤ったのは、まさにここでしょう。破戒録の班長が三好達のカイジに対する無条件の信頼力を見誤ったように、あるいはワンポーカー編における和也がチャンとマリオのカイジに対する献身を予想していなかったように、敵はいつもカイジの周りの人物の純粋さを見誤ります。平常時はクズな側面が目立つカイジですが、いつもいざという時に頼れる仲間がいるのは、彼にそれなりの求心力があるからなのでしょうね。仲間っていいですね。
だからこそ、わたしは今でも三好と前田は最低だと思ってますがね。
……
話を戻します。
無事に実家から脱出を終えたカイジは、母親にお金を残していきました。その額は100万円。現在11億を所持しているカイジからすればはした金ですが、カイジとしては大金を残してしまうとかえって心配かけるからという配慮です。
が、100万でも十分心配ですよね。作中での時間経過を考える限り、カイジはせいぜいまだ22歳。ポンと置いていって違和感のある立場ではないでしょう。
なおかつ、母親は見てしまいました。利根川や兵頭会長とのギャンブルによって刻まれた、カイジの頬と耳の傷を。痛々しい息子の姿と不自然な大金……カイジが母親を納得させるためにしたごまかし話は、もはや何の信憑性もないでしょう。母親がカイジを思って心痛する描写は、心にきます。カイジにはいつか、もう一度実家に戻ってきてほしいものです。
・銀行へ
2巻以上かけてようやく身分証を手にし、チャンやマリオと合流したカイジ。ここからがようやく本題……いや、お金を圧縮するにしても、結局逃亡のための手段に過ぎない以上、やはりまだ準備段階です。
そしてその準備が長いです。カイジ質はこの巻の半分以上を費やして、じっくり預金していきます。本筋とほとんど関係の無い描写盛りだくさんです。
しかしそういう、緊張感の薄い回だからこその見どころもあります。生死を賭けて共闘し、今まさに力を合わせて逃亡を成し遂げようとしているカイジ、チャン、マリオの三人。当初はカイジが生命の恩人で、チャンとマリオは大勝負を見守る事しか出来ず、逃亡開始後もしばらくはカイジの指示に従うだけだった二人。今でも作戦の立案は基本的にカイジが行っているのでその関係は変わっていないのですが……なんというか、フランクになりましたよね。
軽トラを捨てた辺りから本格的に苦楽を共にするという感覚が強くなってきたのか、あるいはギャンブルの時だけ光り輝くカイジの、昼行燈な部分が目立ってきたためか、三人が三人とも他の二人の事を仕方が無い奴だと呆れている構図が何とも言えず面白いです。それでいて、信頼だけはきちんとあるのがミソです。彼らが三好や前田みたいにならない事を切に願います。
さて、資金の圧縮化も円滑に軌道に乗ってきましたが……
・ちらしの指名手配
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これは笑うところなのでしょうか。
「コイツら本当に悪人」じゃないよ! なにこのちらし。これ作ったの海老谷だろ!!
ツッコミどころ満載のちらしですが、意外と効果的かもしれません。なにせ帝愛は全国チェーンの金融屋。これからは全国に散らばる債務者も追っ手になるという事なのですから。ちらしのツッコミどころは置いておくとして。
総評
回り道も多いですが、順調に話が進んでいますね。道中のギャグや日常描写も楽しみながら、次巻を待ちましょう。
8巻の満足度:67/100