感想「はじめの一歩 130巻」
今月17日、「はじめの一歩」の最新刊が発売されました。
少しだけ語ります。
・前巻の感想
感想記事をリンクします。
以下、最新刊のネタバレ注意!
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・千堂vsゴンザレス
前巻のダウンがそのまま試合終了に繋がりました。
すなわち千堂の勝ちです。
これで千堂は晴れて世界ランク一位、同時にリカルドへの挑戦権を手にしたわけです。
一歩相手以外には無敗のボクサーとして活躍し、順当に世界ランクを上げていた千堂ですが、日本王座を降りて以降の活躍描写は非常に乏しかった印象でした。それはひとえに、対戦相手に恵まれなかったからでしょう。
宮田にはランディーボーイジュニア、真柴には木村や沢村、ヴォルグには世界タイトルマッチ……といった具合に、かつての一歩のライバルには、一歩との対戦以降にもそれなりに活躍の場がありました。
しかし千堂にのみ、これまでそういった描写がほとんどありませんでした。対戦カードはいつも無名かぽっと出の選手で、華がありません。
かつての一歩との激闘や周囲の評価から、強者である事はずっと示唆され続けていましたが……無冠である事、宮田や真柴等と違って階級がフェザー級のままであるにも拘わらず、今井や板垣といった国内の強者が特に意識している風ではない事から、千堂の立ち位置は割とよく分からない感じでした。
しかし今、千堂は世界一位。リカルドを除いた全てのフェザー級ボクサーよりも上という、圧倒的な評価です。その勇ましい性格も相まって、完全に主人公ですね。かっこいい。
対するゴンザレスは、敗北と共に引退を決めたようです。
これで三回目の敗北とはいえ、一歩のようにボクサー生命を絶たれたわけでもないのに引退とは、少々勿体ない気がしますが……当人が満足ならそれで良いのでしょう。
しかしゴンザレスも、いいキャラでしたね。
当初は一歩の敵として地味な選手が登場したものだと思いました。実際、それまでの一歩の挑戦者がイロモノ揃いだった事もあり、正統派な強者であるゴンザレスはあまり映えない見た目でした。
しかし「一歩に勝った人物」としてその後も描写され続け、千堂の敵として新たにクローズアップされ、丸々一巻以上の濃厚な試合描写を経て、ようやく彼にもキャラクターとしての個性が現れました。
わりと渋くて好きでした。
・リカルドvsビリー
メインイベントは世界タイトルマッチ。千堂vsゴンザレスが前座とは、最高に贅沢な舞台ですね。
対するはビリーという選手。ぽっと出のキャラクターですが、元WBC王者で無敗の選手という前評判……強そうです。
バイソンといいヴォルグといい、ここ最近は別団体の世界王者がよく描写されるようになりましたね。世界観の広さを感じるとともに、「世界王者が階級最強ではない」という状況が歯がゆくなります。まあ実際、現実でもそういう感じなのでしょうけれど。
さてこのビリー選手、前評判での実力は非常に高いようです。一歩やスカマラスの下馬評を見るに、ゴンザレスや千堂以上の実力者である事が窺えますが……
……
まあ……ね。
丁寧な前フリでした。
完全にかませ犬の空気でしたし、仕方が無いですよね。千堂の挑戦直前に王座が入れ替わるわけもありませんし。
終始余裕のリカルドは、クリーンヒットはおろかグローブ以外の場所に触れる事さえ許さず1RKO。さすがにあんまりな結果です。まだしも伊達の方がよほど善戦したじゃないですか。
というかリカルド、こんなに強く描写して大丈夫なんですかね? これじゃ絶対千堂勝てないじゃないですか。圧倒的過ぎて先が心配です。
そしてここで、リカルドの心情が描写されました。どうやらここ最近の一歩が常々気にしている「孤高」の領域に、最も深く入り込んだ人物のようです。鷹村だってきちんと強敵相手には死闘を繰り広げますし、普通に負けそうにもなりますからね。そういう意味ではリカルドの懊悩も分かります。国内最強の鷹村でさえもおそらく見えていない領域が、リカルドには見えているのでしょう。あっちはあっちで全試合KO勝ちというとんでもない記録の持ち主ですが。
そういう意味では、やはりリカルドこそこの漫画のラスボスに相応しい精神性の持ち主ですね。「強いって何ですか?」から始まった一歩の物語を〆るための存在と言えます。肝心の一歩は引退していますが。
一歩……引退してから何年経ったんでしょうか。作中の時系列は不明ですが、数年経過していてもおかしくありません。ここから先復帰したとしても、年齢を考えると伊達コースですが……本当にまだタイトル「はじめの一歩」で大丈夫ですかね?
ちなみに現実時間だとほぼ3年くらいのようです。ハンターハンターの最新話掲載よりも前と考えると、もう相当前ですね。
まあ一歩引退の話はともかくとして。
リカルドの強さに興味を持った千堂は、どうやら怪我が治り次第挑戦するようです。楽しみですが……現状負ける未来しか見えないのが辛いところです。
・ただいま日本
はじめの一歩特有の息抜きギャグ回、好きです。
さすが100巻続いているだけあって、ギャグ回のレベルは高いです。
神がかったタイミングで木村への覆面にカッパを選ぶ一歩のセンス、好き。脱皮を見て笑い転げる一行、もっと好き。
特に板垣の笑い顔、ゲスくて良いですね。青木村と違って板垣はあまり顔芸をしないキャラだと思いましたが……これはこれで好き。
・ミットの極意
トレーナーとして成長しつつある一歩ですが、育成技術はまだまだのようです。元々不器用なスタイルの一歩ですし、こればっかりは難しそうですね。
篠田さんかっこいい……と思いきや。
「ユニークスキル」て何ですかねその言い回し。その後も何度か出てきますが、特にツッコミは入っていません。ソシャゲ用語っぽいですが……森川ジョージ先生、ソシャゲにハマってるんですかね。マイブームを作品に取り入れるスタイル、彼岸島みたいですね。
・摩天楼の男
鷹村のスーパーミドル級王座挑戦が決まりました。
前回の王座統一戦、さらに前のミドル級世界タイトルマッチから随分経過しましたが……ついにいよいよといった感じですね。
相手の名前はキース・ドラゴン。
ホークやイーグルといった猛禽類から始まりバイソン等の大型哺乳類、そして今回は龍……ついに架空の生物にまで至ったわけですか。そのうちゴッドとかになりそうで笑えます。
そして麻雀好き。
マージャン
……
ほう。
麻雀は大好物です。こういう展開は大好きなのでもっとやってほしいです。
娯楽につられて日本にやってくる辺りホークと似ていますが、ホークほど嫌な性格はしていないようです。
・王者の条件
そんなキースですが、どうやら豪運の持ち主なのだとか。
ホークともイーグルとも……というかこれまで登場したどのボクサーとも全く違うタイプの対戦相手になりそうです。130巻にして新境地とは恐れ入りました。
そして鷹村曰く、そういう相手が怖いという事です。
でもボクシングって、そんなに運が絡まない気がしますが……
鴨川会長の論を聞く限り、どうやら鍵は試合前。そもそもリングに上がる段階にありそうです。
突然の事故や災害が起こったり怒らなかったりするのでしょうか。なんだかちょっと面白そうです。
総評
リカルド戦に鷹村三階級制覇挑戦と、話題に事欠かない巻でした。続きも気になります。面白かったです。
130巻の満足度:85/100