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手を見る意味

「じっと手を見る」
という動作を、自分なりに行うようになりました。
考えてもせんないことを堂々めぐりして
気づくと自分の手のひらを見ています。

手の甲は、年齢がわかるほどになってきました。
でも、手のひらは存外、時間の経過を忘れさせてくれます。
手相についてはわからないので、
もしかすると、そこに出ているのかもしれません。

昔、叱られて服を脱がされて外へ追い出されたとき
家の影に隠れて、晴れた寒空に浮かぶ月を見上げました。
あの白さは、今でもたまに目にすることができます。
そこには、変わらない温かさと、なにかしらの冷たさを
いつも感じます。

手を見るのは、月を見るのに似ているかもしれません。
月ほどそのままではないけれど
あのころは見なかった手のひらに
忘れられないことや、忘れたいことを映しています。
いつも、それは未来ではなく
過去や現在の負を、狭いスペースにちょこんと乗せているのです。


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有島 緋ナ
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