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私が目にした「人身売買」

昨年、旧統一教会の養子縁組家庭に対して「人身売買」という言葉がメディアを通して、私達家族にも投げ掛けられたので、それを機に鮮明に蘇ってきた、私が目にした事のある「人身売買」について話したいと思います。

2004年のスマトラ沖地震の後、当時10代だった私は 、教会関連のボランティア団体を通して、被災地の一つであるタイのプーケットに被災一ヶ月後くらいにボランティアに行った。

島を呑み込む津波

現地は津波で船が山の上に流され、普段観光客で賑わっていたホテルも跡形もなく大破し、木は薙ぎ倒され、街はボロボロだった。
私は直接目にはしなかったが、津波で流された水死体も沢山上がっていて、現地の方々や先に来られた方々がその対処をされていたらしい。

私達は現地の小学校に寝泊まりし、ライフラインもままならないので、外に溜めてある水で体を洗った。
私達が滞在してる間も余震が何回かあってヒヤッとした。
被災地を視察し、現地のボランティア団体や警察学校等の学生と一緒に復興支援活動を毎日した。

実際に打ち上げられた船

活動内容は、避難キャンプ・仮設住宅の設営と現地の被災孤児の子供達の心のケア、物資の提供が主だった。

そこで様々な衝撃的な現実を見聞きしたが、私が今も心に残っているのは、子供達のことだ。

当時プーケットにも、災害により家族や家を失った「災害孤児」の子供達が沢山いた。
幼い子供達は恐ろしい体験をして、身近な人達を失って傷付いていた。

私達は被災地のキャンプでそういった子供たちと関わり、物資の支援をしたり、一緒に遊んで心のケアをしたりして沢山の時間を過ごした。
初めは恐怖や不安から警戒したり泣き出してしまった子供たちも、段々と心を開いてくれて、日が経つにつれ懐いて側を離れようとしなくなった。

言葉は通じなかったけど、指差しやジェスチャーで沢山会話をして、一緒に体を動かして遊んだりした。

子供達の純粋な笑顔に私達の方が救われていた。
当時の私も自分の問題に悩んでいたが、こんな悲惨な状況でも笑顔で懸命に生きている子供達を見たら、自分の悩みなんてちっぽけに感じた。

笑顔の子供達(イメージ)

そんな中、子供達に気分転換をしてもらおうと、彼等を連れてバスツアーで山の上にある観光名所に行く機会があった。(海の近くは子供達はトラウマで辛くなってしまうため)

そこでみんなで楽しく時間を過ごしていたが、少し人目が離れたところで、ある子供が不審な男に連れて行かれそうになった事件があった。

その時近くにいた人が気付き、大声をあげてくれたおかげで、不審者は逃げていき、その子供は無事だった。

これはとてもショックな出来事だった。
後に知った事で、現地ではこの震災後に、災害孤児の子ども達が何百人と誘拐され行方不明になっていたのだ。(タイだけでなくインドネシア等でも問題になった)

東南アジアは人身売買の闇マーケットで、貧困に苦しむ親が子供を売りに出すような日本では信じられない現実があり、そのような犯罪も横行していた。当時、災害で孤児になった子供達もそのような犯罪集団に狙われ、誘拐され、海外へ売り飛ばされてしまうケースなどが多くあったらしい。

とても重苦しい内容だが、江口洋介や妻夫木聡、宮崎あおい等が出ている「闇の子供たち」という映画に、タイの人身売買、臓器密売の闇が描かれているので、この問題に関心があったら見てみてほしい。(この闇に日本も無関係ではない)


現地を去る時、子供達に手作りの文具(ノートにイラストやメッセージや飾り付けなどをした物)を一人一人にプレゼントしたら、子供達はとても喜んでくれた。

でも、私の方が人生の中でもずっと忘れない大切なプレゼントを貰った。

私は現地でこの災害孤児になった子供達と接して、彼らを助けてあげる立場だったが、結果的に彼らにとても励まされ、生きる力をもらった。

それでも、現地を去る飛行機に乗りながら、この子供達のことを考えて寂しさや色んな感情で心が苦しくて、窓の外を見ながら涙が溢れてきたのを今でも覚えている。

この子達はこれから元気に生きられるのかと。
あれから長い時間も経って、きっと彼らの人生は、私達が想像できない沢山の悲しみや理不尽や困難もあったと思う。無情で悲惨な現実もあるのかも知れない。

平和な日本に暮らして、衣食住にも何不自由なく暮らせるのが当たり前の私達には想像できない、辛い現実があるのかも知れない。

あのキラキラした笑顔をくれた子供達が、どうかみんなあの笑顔を失わないで幸せに生きていてほしいと思うが、それは勝手な絵空事なのかも知れない。
それでもこの地球のどこかで強く生きていてほしいと思う。

*最後に思うのは、私達が生きてるこの平和な環境、日々は当たり前ではなく、有難いものなんだということ。

タイの災害孤児の子ども達は、住む場所も着る物も食べる物も、そして家族も奪われた。
それでも尚彼らの残った小さな命までも、体までも狙われる危険がすぐ隣にあった。
そんな残酷な現実や環境に置かれた子供達も世界にはいる。

それでも彼らは日本や世界からの物資や、ボランティアの人達の思い、関わりに救われて、それをとても喜んでくれた。
そして、そんな過酷な環境でも、純粋な笑顔を沢山見せてくれて、私達に生きる力を見せてくれた。

この日本の中にも様々な問題がある。
勿論世界中にはもっと多くの問題と苦しんでる人達がいる。

私はこの経験を通して、日本のような恵まれた環境にいる私達は、恵まれない環境にいる人々のために、世界の為にできる努力をしていかないといけないと感じた。

どんなに物が溢れていても、愛を感じられずに苦しむ人も沢山いる。
逆にどんなに過酷な環境でも、笑顔で前を向いて強く生きている人もいる。

目の前の現実を否定的な色眼鏡で見れば全てそのように見えてしまう。
でも、同じ、もしくはもっと酷い環境でも、自分の心の持ちよう、捉え方で現実は変わる。

私は人生や過去に不平不満を抱くより、今ある日々の日常が当たり前ではなくとても有り難いものだと感じて生きていきたい。
また自分が恵まれていると分かれば、そうでない人に手を差し伸べてあげることができると思う。

苦しんだり悩んだりしてる時こそ、自分の殻に閉じこもるのではなく、一歩外に出て、もっと広い視野を持ってみてほしい。
そうすると、意外と自分は恵まれていたんだということに気付けたりするし、生きる意味も見出せたりもすると思う。

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