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重いものを持たなくなった
3日連続で紅茶花伝の缶の方を飲んだ。
あれはプルトップ式ではなく、蓋がついているタイプの缶だ。
生理で心身ともに不調な上、仕事もばたついておりとにかく全てが泥のような一週間のことだった。
1日目と2日目、異様に缶の蓋が硬かった。
もともと握力がめちゃくちゃ弱いので、瓶の蓋などは開けられなくて困ることはあるが、缶が開けられなかったことはない。「自分、そんなに具合悪いんだ」と思ったと同時に、そういえば重いものを持たなくなったな、と思った。
小学校4年生から中学3年まで、金管バンドから吹奏楽をやっていた(以下まとめて吹奏楽とします)
吹奏楽部が「体育会系だ」といわれる所以は上下関係や練習の厳しさがあるが、もっと「フィジ」な側面がある。楽器の運搬だ。
私立ならわからないが、ゴリゴリの公立小中にエレベーターはない。なので、すべてを子供の手で運ぶ。
新しい曲の初合奏にチャイム(チューブラーベル)が置いてあった時の感情はそれでしか説明ができない。
「終わった・・・・・」
その後その曲で使われるのが1音だとわかった時の安心感ったらない。
(のど自慢のテーマ曲で使われるあの楽器の話をしています。分解できるので、移動がある時は使う音以外のチューブを抜いて運搬することがあります。フルで装備されていると、本当におもい)
コンクールという大事なイベントの最初に待っているのは楽器の積み下ろし。あれはほんとうに人が死んでもおかしくない行事だと思っている。
コンクールが終わり、心身疲れた状態で最初に待っているのは楽器を音楽室に戻すことだ。最悪当日の夜、よくても翌日の朝練。
そして音楽室はだいたい学校の最上階にある。まじで今考えるだけでもゾッとする。あれほんとにすごい。
高校は小さな楽器を扱う部活にいたのでその苦労はなかった。
大学に入って演劇を始めた。
公演につきものなのがそう!搬入だ。
また重いものを運ぶ人生が始まった。
吹奏楽とはまたちがう「薄くてでかい」とか「持ちにくいのに重い」とか「長い」を運ぶのが演劇だ。足場に使う単管を発注して、学校の施設に搬入したあのスリルは、もう一生味わえないかもしれない。
(申請したけど多分学校の想像を超えていてちょっと怒られた)(制作が)
就職先は花に関係する仕事になった。
切り花はどんな形でも、いっぱいあると重い。水分が多いか、水に浸かっているからだ。
なんか重いなあと思っていた、オアシス5本分が入る容器(花挿し済み)が一つ10キロ以上あると聞いた時には驚いた。やけに「大丈夫?」って男性の先輩が心配してくれるなあとは思ってたけど、そんなに重かったのか。割と平気だった。(流石に肩より上にはあげられなかったし、一回ぎっくり腰をやった)
指を切って3針縫った状態でも持ってた気がする。マッチョだなあ。
背は高いけど体が細めなので結構心配されるし「無理しないでいいよ!」とすぐ言われる。怪我が怖いからおれはむりはしねえよ・・・・
そんな人生が突然終わって、四色ボールペンより重いものを持たない人生になった。同じ会社でオフィスワークになった。仕事の内容は面白いけど、現場で起きている事件を涼しい部屋で眺めているだけなのはやっぱりあんまり面白くない。
そして、缶が開けられなくなるほどに力がなくなった。
なんてつまらねえ人生なんだ、とふと思ってしまった。
重いものを持つのは辛い。重いからだ。
でもやっぱり体を動かすのは楽しいし気持ちがいい。それに、自分の手で、何かが作られているのはとてもおもしろい。
毎年夏休みに行っていたでかい現場に今年は行かないことになった。
また十間分のリノリウムを敷いてお尻パンパンの状態で5日現場行くやつ、やりたいな。
そして紅茶花伝3日目。
少し体調が回復したのか、缶を普通に開けられた。
なぁんだ。
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