Hanged-Men ハンドマン
銃声がして、振り向くとカウンターの男が死んでいた。
「ウイスキーを一杯。何も混ぜないでいい」
死んだ男は、自分の脳漿が混ざったグラスを、痙攣する手で握りしめている。煙を上げるスミス&ウエッスンを持った男が、それを死体から奪い鼻元へ運んだ。
「バーボンを脳漿で割ったカクテル。"ペヨーテ"の好物として有名だな」
私は男に注文通りの一杯を差し出す。だが男は受け取らない。
「"ハンドマン"…。絞首刑で一度は死に、悪魔に魂を売って蘇った11人の手配犯。そのうちの1人が、ここにいると聞いた」
そして男はその手の赤いカクテルを私に差し出す。
「これはあんたの好物だろ?"ペヨーテ"」
2発目の銃声がサルーンに響く。
「違うね。ブレインイーターはこう作るのさ」
初めに死んだはずの男が、次に死んだ男のウイスキーを手に取った。それを死体の頭の穴へと注ぎながら、男は笑った。
「"バーテン"、代わりを一杯。今度こそ何も混ぜないでいい」
-[続く]-
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