departure-Ep5
ep紹介:4話の続き。課題をやって、フラットメイト達とお喋り、本当は早く、部屋に戻りたいけど、新しい住人が来たからそうは行かない。
イギリスの鍵についてについて話そうと思います。
イギリスにいて、3タイプの鍵を使ったのですが、
金属の鍵、カード式の鍵、500円玉くらいの大きさの青色のプラスチックでできた丸いキーホルダーのような鍵、の3種類使いました。
キーホルダー型の鍵は、“Electoronic key fob for flat”とか検索をかけると画像が出てくるのですが、
カード式とキールホルダー式は、使用している側のシステムが同じで、ドアノブの機械にピッてやると鍵が開きます。
金属の鍵は普通の金属の鍵で、家を一軒、学生数人で借りている時に使っていました。
友達が借りてた家はだいぶ古かったのか、mortise lockって言うほぞ穴用の鍵がついていて、普通の鍵の二倍くらいの大きさの鍵を持っていて、
勝手口の鍵と、ほぞ穴の鍵と、家のドアの鍵、の3つの鍵を持ち歩いていて、大変そうだなと思ってました。
キーホールダー型の鍵は初めて見たときは、なんだこれ?ってなりました。
寮とかでこのタイプの鍵をよく見るのですが、
建物とかは古いのに、鍵だけ新しいみたいな感じで、
アンバランスな不思議な感じですね。
第5話 運休レッドベルベットケーキ2
オレンジ色のレンガ造りのアパートメント、イギリスではアパートのことをフラットという、
この二階に私の部屋がある。
エレベーター無しの3階建。建物は古いけど、中はもちろんリノベーションされている。
キッチン共同。シャワーとトイレが個室についている。
500円玉くらいの大きさの青色のプラスチックでできた丸いキーホルダーのようなものが、
鍵になっていて、自分のフラットと部屋に入るために必要だ。
戻ってくると、部屋が片付いていて、嬉しくなった。二時間前の自分に感謝する。
コートを放り投げ、机の上のパソコンから音楽を流し、電気ケトルに水を入れてお湯を沸かし、お茶を作る。
線形計画法の課題のプリントと、ノートと計算用紙と、先生や友人に質問したメモが書かれている紙切れを出して、A4の紙に課題の答えを清書していく、
清書し終わると、6題目と7題目が全く手がつけれていないことが分かった。
考えても何も思い浮かばないので、お茶を飲み終わったマグカップを持って、部屋を出てキッチンに向かった。
キッチンには誰もいなかった。
カウンターにはトースターと電気ケトルのみ置かれていて、綺麗に片付けられている。
壁にかかったテレビも消えているし、窓際の合皮の黒いソファーも真ん中が窪んだまま鎮座している。
私はほっとして、自分の戸棚から寿司ライスの箱を取り出して、ボウルに移し、水で洗って、小鍋に移し、水で浸してコンロの横に置いておいた。
冷蔵庫の中を覗くと買い物に行っていないから、まともなものがない。
あるのは卵とキャベツ、あとはヨーグルトくらい。
ひとまず、冷蔵庫を閉じて、自室に戻った。
自室であぐらをかきながら、教科書をパラパラめくっていると、フラットの重たいドアが開いて、何人かワラワラと話しながら、廊下を通ってキッチンへ消えていく音が聞こえた。
私は自分の体がさらに10kgくらい重くなった気がしたが、お腹が空いてきたのと、水に浸した米をそのままにするわけにはいかなかったため、
先ほど買った、紙パックのアイスコーヒーを持ってキッチンに向かった。
キッチンの扉を開けると、案の定、ディオンとエルイーズと、オリビア、イラが騒いでいた。
私はできるだけ自然に挨拶をして、アイスコーヒーを冷蔵庫にしまうと、
できるだけ、控えめに料理を始めた。
ディオンは合皮のソファーの窪みに体を沈めて、長い足を投げ出して、テレビのスイッチをつけた。
エルイーズとイラはカウンターに腰掛けてパソコンを開いて音楽を流し始める。
オリビアは耐熱容器にじゃがいもを放り込んで、ホークで小さな穴をいくつも開けている。どうやらジャケットポテトを作るらしい。
私は、米の小鍋を火にかけて、さらに別の鍋に水を注いでカツオだしの粉を入れて火にかけた。
オリビアが私が日本から持ってきたクレラップを指して、使っていいか尋ねるので、私はもちろんどうぞ、と答えた。
彼女は少し手首を捻るだけで切れるラップをつかって、あらと驚いた。
エルイーズは、トポローダーのDancing in the moon light を流して、
「ねえ、これ私たちの曲だよ。」とイラとディオンに行って、流れる曲と一緒に歌い始めた。
イラが今日は何してたの?聞いてきたので、
簡潔に、講義が休みで、主に寝ていたことと、散歩にいったこと、課題を少しやったことを話た。
「jaunty goat ってNando’sの隣のところでしょ?」
イラが聞く。
「うん、そうだよ。」
「Nando’sのさらにとなりにジェラートとワッフル屋さんができたのしてっる?」
エルイーズが口を挟む。
「ううん、知らない。」
「デリバリーもできるよ、ほら、Deliverooで頼める。」
「でもワッフルなら off the waffle じゃない?」
私がいうと、
「ジェラートも別の新しいお店があるよ、Gino’s gelato ていうお店。」
とディオンが口を挟んできた。
「でも今一番私が食べたいのは、hanky panckyのパンケーキ。今から行く?」
イラが髪を束ねながら言った。
「hanky pankyは5時まで、もう閉まってるよ、でも今度みんなで行こうよ、ひなは行った事ある?」
エルイーズが牽制する。
私は、首を振りながら行ったことないと伝えた。
イラは髪の長いインド系の法学専攻の3年生だ。
エルイーズはブルネット混じりのブロンドでイラと同じ法学の3年生だ。明るく気さくで、クラブに行くのが好き。
ディオンとオリビアはどちらも赤毛で、オリビアは髪を腰まで伸ばしている。二人はウェールズ出身だ。
Little mixというウェールズ出身のガールズボーカルグループがあるが、オリビアはlittle mixのジェイドやジェシーに似ている。
二人とも看護科の3年生。
「このキッチンの隣の部屋って、誰もいなかったじゃん、」
ディオンが話題を変え始めた。
私は味噌汁にキャベツと卵を二つ落としたものと白米の夕飯を完成させたが、
話の続きが気になったため、部屋には戻らず、カウンターに座って食べ始めた。
「でも、男の子が一人、先週末入居してきたの。development week が終わってからだよ。」
Development weekは学期の半ばに与えられる、課題をこなしたり、テスト勉強をしたり、論文を読んだりする、講義のない一週間の休みのことだ。私たちは先週、development week だった。
「みんなもう会った?」
オリビアはじゃがいもの入った容器から、エルイーズとイラはラップトップから目線を上げて、ディオンを見た。
私もdionの顔を見た。
「えーっと、まだ見たことないかも。」
私がテレビの音量に負けそうなぐらいの声でそう言いかけたとき、
キッチンの扉が開いて、黒縁メガネをかけている背の高いのナイジェリア系の男の子がゆっくりと、鍵のついた入館証のストラップを片手に持って、入ってきた。
ああ、そうだこのこ、いつも図書館で見る、
タリファがかっこいいって言っていた子じゃないかな。
みんな、それぞれ挨拶をし、自己紹介を始めた。
私も自分の名前と出身と学年と専攻を伝えた。
それからしばらくみんな、キッチンで立ったままおしゃべりを楽しんだ。
私は自室に戻るタイミングを失ってしまい、心底後悔した。
第5話を読んでいただきありがとうございます。PodcastとSpotifyでは音声でお楽しみいただけます。次回、第6話でお会いしましょう。
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