凸版扉突破故選考突破不可事件
5月某日 都内某所
初めての最終面接。しかも初めての対面。
人生の分岐点となるかもしれない場面に、緊張していた。
面接に来たのは「凸版印刷」
「TOPPA !! TOPPAN」を掲げて、本業の印刷業からデジタルまで多分野に進出している企業だ。一言で表すとすごい面白そうな企業。
今は本社の地下にあるギャラリスペースのようなところで一人椅子に座り待機している。
何やら凸版の取り組みについて紹介した展示物がある。
これって、それを自分から見に行けば意欲の高い学生だと思われるやつなのでは?
初めての対面面接でよくわからん思考になっていた。
「その展示物興味があるので、席を離れて見てもよろしいでしょうか?」
「どうぞ〜」
展示物を見る。
全くわからん。
一応「ふ〜ん、やるじゃん」みたいな顔をしておく。
余計なことはやめて大人しく席に戻って待っておくことにした。
前に部屋に入って行った女性の学生が部屋から出てきた。
そろそろ来るなぁ。
結構自信があった。たぶん受かるだろう。
友達との面接練習でもうまく行っていたし。
思い返せば、長い就職活動だった。
休学前の2020年4月から就活に関わり始めて、インターンなんかも行ったりした。
1年間の休学中、就職するかどうか本気で迷った時期もあった。
それでも、色んな大人をみて「この人達に勉強させてもらうだけではなく、自分の分野を持って支え合って新しいものを作れる力を身につけたい」と思って、就職活動に戻ることに決めた。
そして、今日就活を終えるのだ。この日はゴールではなく、スタートになる日だ。
「次の順番です。階段を上がって右手のドアからお入りください。」
私はカバンを右手に持ち、はっきりした足取りで指さされた階段を上がる。
「……ん?」
少し戸惑った。それっぽいドアがないのだ。
左手には立ち入り禁止のドア、右手には防火扉みたいな鉄のドア。
左は確実にないから、多分右だろう。
(…何だろうこの扉は)
案内の人は「階段を上がって右手のドア」と言っていた。
しかし、目の前には防火扉みたいなやつしかない。
最終面接なのだから、当然役員クラスが扉の先では待機しているのだろう。
近年の流れに乗って凸版も上司部下関係なく意見ができるような社風になってきているとは聞いていた。でも流石に防火扉の中に役員を閉じ込めるような真似はしないのではないか。無礼だと思う。
3秒くらい迷った。
そして、出した結論が↓の通り。
これなら全ての納得がいく。
階段上がってすぐの右折は、他にいく先がないからノーカンなのだろう。
少し迷って、足取りが鈍ってしまった。自信を持っていかなければ。
再び確かな足取りで、目の前の防火扉を勢いよく開いて先に進んだ。
「・・・・・」
そこには3人、横に並んで座っている大人達がいた。
なんか偉いっぽい。何やら驚いた様子でこちらを見ている。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・どうぞ」
「・・・・はい、失礼します」
・・・・
それから先は覚えていない。
どんな質問をされたのか、なんて答えたのか。
気づけば私は、秋葉原の街中でゴーゴーカレーを食っていた。
そしてもう一度気づいた時、私は就職浪人生になっていた。
先月くらいの面接でこんな質問をされた。
「昨年の就活で何か成果や収穫はありましたか?」
「凸版印刷で扉を突破し、百戦錬磨の役員を一瞬フリーズさせました。」
間違いなくこれだろう。
しかし、デリカシーが流石に許さなかった。
もしかしたら最終面接なんてなかったのかもしれない。
そう思いながら、今日も私は凸版印刷のインターンESを書いている。