現実は ドラマのようには ならなくて
「いいかげんにしてよ!」
バシッ!女が男の頬を打つ。ドラマではありがちなシーン。実際にやってみたら、、、。
大学生時代、私は自他と共に認めるバカップルだった。絆深く、認めあって、どんなカップルだって私達には敵わない。本気で思っていたが、、
彼は二股をかけていた。相手は友人の後輩で、私も顔は知っている。彼に告白して断られたのも知っている。それでも、諦められなそうに彼を見つめていたのも知っている。
なのに、その時、愚かな私は、安定した関係性に甘えきって、自分の世界を優先して、彼に寂しい思いをさせていた。(自分にも反省点はおおいにあるが)
自ら彼に二股のシチュエーションを与えてしまったのである。
見かねた友人のチクリで二股が発覚し、すったもんだの末、結局彼は彼女をとった。
選ばれないというのは本当につらい。気持ちのやり場がないのだ。彼をせめたところで状況は変わらないのだし。幕引きは私にかかっている。人生初の経験に、私は考えを巡らせた。
そうだ、こういう時、ドラマじゃ、絶対アレをやるよ、そうしたら、きっと吹っ切れるよ。
最後に一発殴らせて!
私が叫ぶと、彼はメガネをとっておとなしく頬を差し出した!その、決意表明に私は更に傷つく。打たれたって彼女をとるんだ!もう、何したって私には戻らないんだ!
「だったらたたいても意味ないんじゃないか?」
少し我にかえったが、引っ込みもつかず、私は彼の頬をたたいた。
バシッ。 で、??
ドラマだと、場面転換するけど、現実世界では、続きは自分で紡がなくてはならないのだった!
気まずい空気と共に、手には、ザラッとしたイヤな感触と、大好きだった彼をたたいてしまったことへの後悔がジワジワと沸いてきて、涙がとまらなくなった。
そんな私を彼はもう慰めない。
なんとかむりやり電車にのり、幕をおろした。
身を持って知ったドラマの続き。カッコわるいし、全然スッキリしない。むしろ、叩いた後悔が大きい。なんで、(いちおう)被害者がイヤな思いをするんだろう。
割り切れない思いと共に、手のひらのザラつきは、濁流のように全身に広がり、楽しかった思い出を飲み込んでいった。
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