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『氷菓』の最初の話を読んでいて思い出した、実際に起きたできの悪いミステリ

米澤穂信先生の氷菓、めっちゃ面白いよね。そして読み返すたびに思い返す事がある。それは高校生の頃、放課後に部室に向かったときの話だ。

僕らの部室、航空実習室は学校の最奥にあると言ってもいい。工業棟の4階は放課後に来る人はほぼいない、来るとしても同じ部活のメンバーだけだ。閑散とした廊下から窓越しに教室の中を伺う。静かだ、誰も居ないだろう、もっともそれはドアの鍵が掛かっていたことからも確認できる。横開きのドアは固く閉じたままだ。

部室の鍵は早く来た人が取りに行くことになっている、不文律だが。
そこで2階にある工学科研究室へ向かった、工業棟の鍵はそこにある。
ときに、この学校で鍵は二種類ある。それぞれの教室に対応する鍵と、先生たちが持っている万能キーだ。前者は各教室に一つ、木のストラップがついていて、生徒が取って使うこともよくある。後者は全員の先生が持っていて、どの教室も開けることができる。

僕は名乗って研究室に入る。奥の柱には鍵がかかっている場所があり、4階の段を確認する。そこには部室代わりの、航空実習室の鍵が合った。僕はそれを掴んで研究室を出た。また4階まで行って教室の扉の前に立つ。違和感があった、少し隙間が空いていたのだ。
ガラガラっと扉が開いた。

中には誰も居ない、顧問の先生が来ているのかと思ったが違ったようだ。
では一体だれが部室の鍵を開けたのか?
航空実習室の鍵は僕が持っている。顧問じゃない先生が開けたとしても、誰も居ないのにどんな用事が合ったというのだ。
僕はドアを開ける力が弱かったのではないかと、開け閉めしてみたが、普通に動く。
一体誰が部室の鍵を開けて、立ち去ったのか、その謎は解けなかった。
続々と部員や顧問の先生が集まってくる。明るい、いつもの部活がはじまった。


申し訳ないけど、この話にあっと驚くようなトリックは存在しない。思うに、最もありそうなのは、顧問が開けて用事でもあって移動したのだろう。
そう考えるのが無難なところだ。
後日、僕は氷菓の、なぜエルがいるのに鍵が閉まっているのか、と言う話を読んだ。この話を読んだときに、そういえばこんなことがあったな~と思っていた。
それを4年後の今、氷菓を再読していて、簡単に書き残して置こうと思い立った。現実は小説ほど面白くないし、きれいに終わらない。けれど、それに接近した事象を体験することはあるのだなと改めて思った。

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