タラスク
二千年前までフランスのローヌ河沿いの森に棲んでいた怪物で、上半身はヤマネコ、下半身は魚、カメの甲羅に六本の脚、ドラゴンの体を持ち、毒息を吐き、燃えるうんこを脱糞し、いつも静かに笑っている。そんな怪物です。とにかくわやくちゃな造形なんです。
ジェノヴァ大司教の著した殉教者列伝『黄金伝説』やWikipediaには次のような伝説が伝わっておるよ。
ネルリュク(黒い森)付近に現れる怪物タラスクはそのヤンチャぶりがつとに有名で、子どもを食い殺す、女はおかす、毒息を吐く、燃えるうんこをまき散らす、などといったキングオブDQN怪獣として近隣住民に大変疎まれておりました。
そんな怪物タラスク退治を買って出たのはある一人の勇ましい女子。彼女はイエス・キリストの奇跡によって蘇生したラザロの姉妹、聖マルタその人でありました。彼女は怪物と対峙するや、イエス・キリストの御名を三度叫びます。すると見よ、これは一体どうしたことだ。あの獰猛なタラスクが借りてきた猫のようにおとなしくなってしまったではないか!
しかしまあ思うに、女子がとつぜん「イエス! イエス! イエス!」などと、XVIDEOSのおたから映像みたいに叫び始めたら誰だってびっくりします よね。タラスクはそれまで日本のゆるい企画物とかしか観たことがなかったので、ワイルドな洋物初体験にしゅんとしてしまったのでしょう。わかるわかる。そういうのわかるよ。
聖マルタは仲魔にしたタラスクを街に連れ帰り、怪物の首を鎖でつないで足元にひれ伏させて踏みつけるなどのプレイを公衆の面前で披露。怪物がもう危害を加える存在ではないということをアピールしたかったらしいのですが、今までの恨みが爆発し暴徒化した住民のリンチによって怪物は叩き殺されてしまうのでした。いつしかその街は怪物の名をとってタラスコンと呼ばれるようになり、今でもこの土地では毎年6月にタラスクまつりが催され往時のリンチの様子がにきにぎしく再現されるのだそうな。なんと業の深い街だろうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?