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長壁姫(おさかべひめ)

 姫路城の天守閣に棲みつく妖怪。お城の一隅を占有する家賃代わりに、年に一度城主と面会して城の運命を教えていたそうです。
 その正体は妖狐の類と言われていて、猪苗代城の妖怪姫「亀姫」は長壁姫の妹であるという設定もあります。全国の各お城にきゃわいい妖怪姫が住んでいるなんて、最近の萌え系ソシャゲとかにありそうな設定ですよね。人類はまるで進歩していない。

 むかしお城のみんなで「妖怪のいる最上階までおしっこ漏らさずに行けるか」という趣意の肝試しをすることになり、齢十八歳の森田図書が小姓代表として選抜されました。森田くんは周囲にただよう妖気と破裂寸前の膀胱に注意を払いつつもなんとか最上階に到達。するとそこでは十二単をまとった貴人とおぼしき女子が書物を読んでいて、文机に目を落としたまま「お前は何をしにここまで来たのじゃ」と威圧的な声で訊いてくるわけ。それを聞いた森田くん、恐怖でパニック状態に陥ったのか、あるいは単に阿呆だったのか、馬鹿正直に「いやその、ここにバケモノがいるっつーので肝試しにやってきました」とずけずけと言い放ちました。おいおいおい。常識的にいって、レディーの部屋にずけずけと侵入したあげく「肝試しにやってきた」なんてこと言うのはめちゃくちゃ失礼ですよね。ホットドッグ・プレスの「彼女の部屋で絶対言ってはいけないこと」特集のなかにもたしかそんなことが書いてあった気がする。ホットドッグ・プレスが言うからには、もはやこれ三千世界の真理である。ここへきて森田くんの命運もついに尽きたかと思われた。

 しかし森田くんにとって幸いなことに、長壁姫さまは今でいうところの不思議ちゃんであったため、逆に森田くんの馬鹿正直ぶりをたいそうよろこび、肝試し達成の記念品として激レアアイテム「兜の錣(しころ)」をプレゼントしたのであった。なんだお前らお似合いじゃん。もう付き合っちゃえよ〜。

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