僕は教会で歌った

昨日の夜、僕は神様と約束をした。

明日雪が降らなかったら教会に行きます。

週末の天気予報では日曜日に雪が降ると言っていた。

僕はもう1年以上も教会に顔を出していなかったから今回も天気のせいにして行かないつもりだった。


それでももし雪が降らなかったら、礼拝の始まる時間に間に合うように起きられたら、教会に行こう。そう決めて教会に行けるように眠りについた。


果たして、雪は降らなかった。
雨がぱらついていたが雪ではない。

神様の勝ちだ。

僕は無駄な抵抗をやめて教会に行くことにした。

ベッドから起きてリビングに来ると前の夜、数ヶ月ぶりに実家に帰ってきた兄が母と何やら話していた。

でかい声だ。
まるで目覚まし代わりの会話を聞き流しながら僕は歯磨きを済ませ朝食を取った。

着替えて兄と一緒に家を出る。

父が兄と僕を駅まで車で送ってくれると言うのでお言葉に甘えさせてもらうことにした。

駅から地下鉄で30分くらい乗ると教会のある場所に着いた。

僕の目的は午後からの第二礼拝だけれど随分早く着いてしまったので終わりかけている第一礼拝に参加した。

入室すると係の人が空いている席に案内してくれた。

着席して前を見るとスクリーンと牧師が目に入る。

今週の礼拝テーマは十字架。

正にど真ん中のテーマだった。

牧師のメッセージが終わると賛美チームの演奏が始まり聴衆は立って歌い始めた。

僕は長いこと教会に来れなかったので気後れしてしまい立ち上がることが出来なかった。

みんなの歌声を聴いてるうちに第一礼拝は終わった。

僕はトイレに行って気持ちを落ち着けてからコンビニで買った飲み物を飲んでハッピーターンを食べた。

大丈夫、さっきのは練習。
今日の目的は第二礼拝に出ること。

礼拝開始の5分前に僕はまたさっき居た部屋に戻ってきた。

第一礼拝とは違う顔ぶれがそこに並んでいた。

久しぶり、元気?

元気だよ。

何人かの知り合いと同じやりとりをする。

友人が一番前の席に座っているので僕はその隣に座る。

やあ。

やあ。

馴染みのやりとりをする。

賛美チームが前に出てきて、牧師のメッセージが始まる前の歌を三曲ほど演奏する。

電子ピアノ、エレキギター、ベース、電子ドラム、ボーカル。

賛美チームの演奏に合わせて聴衆も歌う。

100人ほど集まって歌うその場所はまるでそこそこのライブ会場みたいだ。

両手を叩く人、右手を上げる人、みんな思い思いの姿勢で神を賛美する。

右隣の友人は両手を上げている。

左隣の友人は低い声で歌っている。

僕は久しぶりの賛美なので少しづつ慣らしていく。

誰にも流されないように。

喉をやられないように。

慎重に歩き方を確かめるように。

最初は歌詞を目で追う。

次に歌詞を口ずさむ。

目をつぶって歌う。

少しづつ少しづつ。

心の底に沈んだキラキラを拾い集めるように。

三曲目の最後でやっと歌えるようになってきた。

うん、大丈夫。

ここからまた始められる。

賛美チームが演奏を終えると牧師がメッセージを始める。

第一礼拝と同じ牧師が第二礼拝で同じテーマのメッセージをする。

テーマは同じだけど、違うのは聴衆の顔ぶれだ。

第一礼拝では父母や年配者に向けて。

第二礼拝では学生や独身の人達に向けて。

午前中にやった内容を少し砕けた表現にしてもう一度伝える。

「本気で」を「ガチで」と置き換えたりしてるのが面白い。

礼拝が始まると僕はノートとペンを出して要点をメモした。

テストがある訳じゃないので暗記しないけど覚えておきたいことや、スクリーンに写ってないけど印象に残ったポイントをメモした。

なんか大学の授業みたいで面白いなと思う。

礼拝が終わった後は久しぶりに会った友人たちと挨拶をした。

数年前に結婚した友人に子どもがいたり嬉しい驚きがあった。

また行きたいな。

きっと行く。


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