そして私の番?〜私がドイツに導かれるまで
くみちゃんが東京の大学に行くまで我々の文通は続いた。
彼女は相変わらず優秀で地元で一番優秀な高校に進学し
高校一年生になったばかりの夏、宣言した通りに
アメリカ高校生留学試験に合格した。ただし親御さんが
反対したため渡米は叶わなかった。
東大にも医学部にも行かず、早々と語学で有名な東京の私大に
推薦入学を決めそして東京に行ってしまった。
私はというと、中学生の頃からくみちゃんに感化され続け
ドイツという国が頭の中ですっかり親しみ深い場所になってしまっていた。
けれど地味な私には外交官も通訳も考えられない。興味があるのは小説や詩。
文学は大好き。ドイツにはどんな文学作品があるのだろうと片っ端から
ドイツの文学作品を探してきては読み漁るようになっていた。
進路を決めなければならなくなった時、迷わずドイツ文学科のある
大学を受験した。
まだその時の私に何が出来るかは分からなかった。
けれど18歳に成長した私の胸の奥には小さな火が灯っていた。
何となく、だったけどくみちゃんに続いて
「次は私の番」だと思っていた。