日本の原発はなぜ危ないのか…米国仕様設計と日本の現状
原子力発電所の安全性が議論されて久しい。
2011年には、東北大震災(正式には、東北地方太平洋沖地震)の津波によって未曾有の原発事故を起こしたのも記憶に新しい。
原子炉冷却のための非常用電源を失い、メルトダウンという事故に至ってしまった。
なぜこのようなメルトダウンに至る事故が生じたのかを冷静に分析する、しておく必要があるであろう。
以下は、福島原発が米国から導入された当時の状況を詳しく説明した記事である。
URL:asahi.com(朝日新聞社):「地下に非常電源」米設計裏目に ハリケーン対策だった - 東日本大震災
以下抜粋してみる。
【記事転載(抜粋)】
★★引用開始★★
東京電力福島第一原発が40年前、竜巻やハリケーンに備えて非常用発電機を地下に置く「米国式設計」をそのまま採用したため、事故の被害が大きくなったことが関係者の証言でわかった。原発は10メートル以上の津波に襲われて水につかり、あっけなく全電源を失った。
風速100メートルに達する暴風が原発に襲いかかる。周辺の大木が根こそぎ吹き飛ばされ、ミサイルのように建屋の壁を突き破り、非常用電源を破壊する――。1960年代初頭、米国ではこんな悪夢のシナリオを想定して原発の災害対策が練られた。非常用発電機は原子炉建屋ほど壁が厚くない隣のタービン建屋に置かれた。「木のミサイル」から守るためにより安全なのは地下だった、と東電関係者は解説する。米国ではハリケーンに男女の名前を交互に付ける。津波よりも身近な災害だ。
東京電力初の原発だった福島第一の1号機は、ゼネラル・エレクトリック(GE)など米国企業が工事を仕切った。「東電は運転開始のキーをひねるだけ」という「フル・ターン・キー」と呼ばれる契約で、技術的課題は丸投げだったという。
国産メーカーの役割が増した2号機以降の設計も、ほぼ1号機を踏襲。津波など日米の自然災害の違いをふまえて見直す余裕はなかった。旧通産省の元幹部は「米側の仕様書通りに造らないと安全を保証しないと言われ、言われるままに造った」と振り返る。
1号機の運転開始から40年。「非常用発電機は重く、振動も生じる。移すなら建物全体の抜本的な工事になる」(東電関係者)と、設計が見直されることはなかった。
★★以上で引用終了★★
それでは、米国の原発分布を見てみよう。
上の原発記号(▲)の分布図からおおよそ分かるように、ほぼ東部地域(東部と西部に分けた場合)に集中している。
では、地震を起こす要因の一つとなる大陸プレートを見てみよう。
下図は各プレートと境界(橙色)を示したものである。
日本や米国西海岸は非常にプレートの境界に位置していることが分かります。
地震は発生メカニズムから分類すると、①プレート境界型地震、②陸域の浅い地震、③海洋プレート内地震、④火山活動による地震に大別されます。
地震の震源と火山のほとんどは地球上の特定の場所に線状に細長く分布し、これらのほとんどにはプレートとプレートの境界があります。
日本は、海洋プレートと大陸プレートの境界に位置しているため、プレート境界型の巨大地震や地殻内地震などが発生しています。海岸線は入江等により長く複雑なため、地震の際の津波による大きな被害も発生しやすい特徴があります。
では日本付近で発生した地震(1960-2011)の分布を見てみると下図のようにプレートの境界で多発していることが分かります。
それでは最初に述べた米国のハリケーンについて見てみよう。
米国の最も被害の大きかったハリケーン10位まではすべて東部を通過しています。これは下記から見ることができます。
URL : The Ten Most Damaging Hurricanes in U.S. History (arcgis.com)
要するに、米国原発設計の思想は、
①地震の多い西海岸には設置しない
②ハリケーンの多い東海岸に設置したが、ハリケーン対策を施していた
といえるのである。
以上から見れば、現在の日本の現状は、
『米国仕様設計の原発を西海岸の地震多発地域に設置した』
と言い換えることができる。
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