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2024年2月29日〜3月6日 こんにちは金太
2024年2月29日
久しぶりにゴールデン街で飲んでいたら、とっくのとうに朝になっていて、靖国通りからタクシーに乗って閏年の日を阿佐ヶ谷へ向かって走る。眠らないで迎えた朝はぴかぴか光って見える。
気絶するように眠って、起床した時点でまだ酔っ払っていて、二日酔いですらないという有り様。昼過ぎに嘔吐して、二日酔いが始まったので、高野政所さんたちと斧をぶん投げる予定をキャンセルする。原稿も諦める。友人から言われた「二日酔いでやりたいことができなくなったらアルコール依存症」という言葉が脳を過ぎる。いや、そんなことはない、まだ大丈夫。そう思った瞬間、脳の中で友人が「アルコール依存症は否認の病」と言った。
最近紙で買い直した『A子さんの恋人』を再読しながら寝落ちするのを繰り返す。二日酔いの時や高熱がある時は、漫画の再読が良いと思う。
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2024年3月1日
イエティのぬいぐるみが家に届いた。黒い不織布の大きな巾着にラッピングされていて、取り出すと窓からの日差しを受けて毛先がきらきらと光った。金太(きんた)と名付けた。
目には数体ずつ異なるアンティークボタンが縫い付けられているという。金太はブラックとシルバーの上品な瞳をしていた。胴体と頭は軽く、長い手脚の先に少しずつ重りが入っていて、座ったり、肩に乗せたりすると、抜群のバランス能力を発揮してくれる。ソファに座らせ、仕事机の椅子に座らせ、膝の上に乗せてみた。
夕方になり、日が暮れてから、金太を連れて近所の公園を散歩した。薄暗いし、というかそもそも東京では、そこそこ大きなぬいぐるみを連れて歩いている人のことなど、誰も気に留めない。散歩中の犬が通りすがって、金太が噛まれないか心配になったので、ダウンの首元に入れて歩いた。長い両手が胸の前でぷらぷらする。家に帰る頃には胸元に軽く汗をかいていて、ダウンから取り出した金太の背中は温まっていた。室内も暖まりすぎているように感じて暖房を消す。もう春だ。
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