6月下旬の新宿は、雨と埃と微かな夏の匂いがする。 地下鉄を降りて、地上への階段を上がったとき、そんな事を思ったので、隣を歩く彼女に話してみた。 新宿は香水と排ガスと酒の匂いしか感じないねえ。彼女は少し赤らんだ顔で陽気に言う。それほとんど自分の匂いじゃん。僕らは笑いながら夜の新宿を歩いていた。 僕らがこうして会うのはまだ数える程だが、周りから見れば、10年来の付き合いに見えてもおかしくない。初めて会ったのは、去年の12月、大学3年生向けの冬のインターンだった。同じ業界