無痛分娩を選ぶか選ばないか~あと100日~

妊娠前は病院に通い、今月もだめだった、今月もだめだったと結果の出ないことを延々繰り返しているようだったのに、いざ始まってしまえば止まらない。
子は順調に大きくなっているようで、お腹の中でぐるぐると運動をしているし、わたし自身にも大きなトラブルはない(小さいのは、色々ある)。

そこでだんだん気になってくるのが、およそ100日後と迫った出産である。

わたしの姉が第一子を産んだのは十五年ほど前のことだが、無痛分娩だった。
当時姉が住んでいた市内に一軒しかなかった産院で、無痛分娩を推奨していたらしい。
その数年後に第二子を出産した時にはすでに引っ越しており、別の産院だったため方針が違っていて、普通分娩になった。
「やばかった、痛すぎた」
というようなことを当時姉がもらしたのを聞いた記憶がある。
姉は三人目を産んでいないが、もしその機会があったならどちらを選ぶだろう?

わたしは産院選びの際、近くの個人病院とNICUのある総合病院とで迷った。
コロナ禍であること(面会や立ち会いの制限が大きく違う)と、やはり家からの近さが重要だと考えて個人病院に決めた。
その個人病院は、ごはんが美味しいらしいことと、全室個室であること、無痛分娩を実施していることが特徴である。
ごはんの美味しさや個室かどうかはどっちでもよいと考えていたが、つわりで1か月以上入院した結果、食事はやっぱり美味しい方がいいし個室は素晴らしいと考えるようになった。
そして、無痛分娩である。
無痛分娩を選択するには説明会に出ないといけないとホームページに書いてあるのを見たので、検診の時に医師に聞いてみると、
「今はコロナで説明会をしていないので」
と、その場でたっぷり時間を使って丁寧な説明をしてくれた。
麻酔の種類ややり方とか、分娩の流れ、そして考えられるリスクの話。
無痛分娩の場合は計画出産が基本のようで、予定日が近くなると診察で子宮頸管の様子などをみて入院日を決めるということらしい。
料金は、プラス8万円。

正直いって、痛いのはこわい。
生理痛でも薬が効かずに唸っていることがあるし、下痢の腹痛なんかでも死ぬのかもしれないと思うこともある。
英国のキャサリン妃だってつわりでは苦しんだらしいが、出産は無痛分娩だったという噂である。
とれる苦痛はどんどんとっていく方が合理的。虫歯を削る時だって、無麻酔にしたがる人は少数派だろう。
ひとさまの出産レポを検索して読んでは頭でっかちになってぶるぶる震えるようなわたしは、選べるなら無痛分娩にするべきかもしれない。

でも、それとまったく別次元の視点を持つわたしは、出産の痛みという女が脈々と味わってきた「伝説の苦痛」に対する好奇心に目をギラつかせてもいる。
出産は生命の危険と隣り合わせではあるが、現代の医療機関で産むことにおいては、「痛みで」死ぬことはなかろう。
経産婦が「今までで一番痛かった」と語るそれを、経験する機会があるならば経験してみたい……ような。
不妊治療にかなりのお金を使ってしまったので、払わなくていい8万円は払いたくないという気持ちもあるし、いや8万円で苦痛を軽減できるなら払っちゃいたいよという気もしてくる。
体外受精という高度技術を使っての妊娠だったので、出産は野性的に行ってみたいという気もするような、もうこの際どこまででも医療のお世話になりたいような。そして計画出産のメリットとデメリット。
考えることはいくつもあるが、選べる結論はひとつである。そしてわたしは26週現在、決めかねている。
まったくもって、優柔不断なことだ。

出産というのは恐ろしい。
無痛分娩だって、完全に痛みがないわけではないというし、帝王切開だったら産後がつらそうだ。お腹を刃物で切るのに痛みがないわけがない。そして、膣から赤ん坊が出てくるというのもかなりやばい。ふつうに、無理じゃない?
でも動物のメスというのは、人間にかぎらずみんな、発情を経て出産を経て生命をつないできている。
すごいことだ。
メスとしてわたしにもそれができるのかどうか。
まあ、しないという選択肢はもう今更ないのだけど、あと3か月である。

自由に外食できるのもあとわずか、と、夫と焼肉へ。

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