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『ファーストキス 1ST KISS』感想(ネタバレないはず)
予告編を見るだにデートムービーって感じだけども、坂元裕二脚本×松たか子主演の『大豆田とわ子と三人の元夫』タッグとなればそりゃあ見に行きますとも。しかも『ラストマイル』塚原あゆ子監督ですからね。盤石の体制だ。
夫婦関係が冷め切って離婚しようとしていた矢先、夫の駈(松村北斗)が線路に落ちたベビーカーを助けて死亡。その後、ふとしたことから過去にタイムスリップしたカンナ(松たか子)は、駈の死を回避できないかと奮闘する……みたいなあらすじ。
うーむ、やはり予告がストレートなラブストーリーすぎるな。
劇場もカップルで埋め尽くされてて、そんな中ひとりでド真ん中の席を確保しちゃったもんだからいたたまれない気分でしたよ。まあね、『花束みたいな恋をした』なんて公開日が俺の誕生日で、誕生日にひとりぼっちでカップルに囲まれて恋愛映画見る人になったからね。あれ経験したらもう無敵よ。
恋愛・夫婦とはなにか?というテーマ、倦怠期をじっとりリアルに描く作風は相変わらずで、『最高の離婚』とかも連想した。今作の松村北斗は『最高の離婚』の瑛太に似てるかも。
今作はタイムスリップものなのが最大の特徴だけど、やっぱり倦怠期夫婦ものでもあるんですね。
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セリフのリアルさやギャグのあれこれがいちいち面白いのはいつもの坂元脚本って感じで、あの感じが好きな人なら確実に楽しめるから迷わず見に行って!という映画。和製『バタフライ・エフェクト』といわれてるけど、どちらかというと『恋はデジャ・ブ』っぽさを感じた。予告編の甘々泣き映画な雰囲気に惑わされ過ぎないように!
予告にもあるように、夫の命を救うため、夫婦が結ばれないように過去改変するわけですけど、そのことに関しての葛藤はあるっちゃあるけどそんなにガッツリ悩むことでもないんすよね。なにしろとっくに冷え切ってた関係なわけで、命と天秤にかけることじゃない(少なくともカンナにとっては)と思う。過去の駈に会って心境に変化があったとはいえ。
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終盤、ついに自分の運命を知った駈が何を言うか。最終的にそういう話になるのか!というのは、それこそ『最高の離婚』や『花束みたいな恋をした』を経て変化があったのかな?なんて考えさせられた。これは「やり直すことができる」という今作ならではの考え方かもしれんけど。
とはいえ個人的には過去作で描かれたような、やり直すことができないからこそ倦怠期すら肯定するようなオチが好きだったのもあって、今作の終盤には実はそこまで乗れてはないかも。
とか言いながら、駈が勝手に買ってたものが何から何に変わったかというのはクゥ~!ニクイ!と思っちゃったのでちょっと注目してみてね。
15年前のカンナは、おそらくCGで松たか子の顔を若く見せてるんだと思うけど、これがめちゃくちゃすごかった。だって15年前の松たか子がいるんだもの!
洋画でたまに見る、往年のスターの若かりし頃をVFXで再現するやつ、邦画でやられると驚きが10倍増しになる。よく知ってる俳優がいつの間にか老けてるなぁなんて思うことが増えた今日この頃(自分も老けたわけだからね)、自分の知ってる若い顔の松たか子が新作にいるという不思議さ。15年前といったら『告白』の頃ですからね。『告白』が15年前!?!?!?!?