戯言18 フルーツ摂りすぎ注意!? カリウムの甘い罠!
「カリウムって不整脈の原因になり得るの知ってる?」
果物がおいしい季節になりました。柿やら梨が並び、みかんもスーパーでよくみかけるようになりました。私も体質改善のためにバナナなど果物を食べない日はない……というくらい食べています。
果物いいですね!良質な糖分、豊富なミネラル、そしてなによりおいしい! 果物に囲まれていると想像しただけで幸せな気分になります。
ですが……そんな果物もある人達にとっては危険性を帯びてくるのです。
私は新人の頃を心臓系の集中治療室で過ごしました。そこで先輩から教わったことのひとつに「投与ミスで致死的になりやすい薬剤は3つある」と教わりました。ひとつは『インシュリン』、もうひとつは『カテコラミン』、そして『カリウム製剤』です。果物には『カリウム』が多く含まれます。
そもそもみなさんは『カリウム』のことはどれくらい知っていますか?健康番組等で断片的に「カリウムはむくみに効く! 血圧を下げる!」といううたい文句を聞いたことがあるかもしれません。それは間違いありません。ざっくり言うとカリウムは体の水分の調節に一役買っているので、むくみが減ったり血圧が下がります。ただ心臓系(循環器)病棟で働いていた私としては「心臓の動きに作用する」……この働きを重要視しています。
心臓は全身に血液を送る大事な臓器。そしてその動きは奇跡とも呼べる体中の仕組みによって支えられています。カリウムもそのひとつ。そして体内のカリウムが低くても、高くても心臓は不整脈を起こしやすいのです。
正常な心臓は規則正しく一定のリズムで動いています。それがなんらかの原因でリズムが狂った状態を不整脈といいます。不整脈にも千差万別あるのですが、基本不整脈があると心臓の動きが悪くなるため体に悪影響が起きます。致死的不整脈、というのもあります。ほっておくと分単位で死を迎えてしまう不整脈。よく医療ドラマでみかける電気ショックは致死的不整脈に対しての治療ですね。
そしてカリウムの過不足は致死的不整脈につながりえるのです!
こう書いてしまうと果物が毒に見えてきてしまいますね。でも安心してください。健康な方が果物の摂りすぎで不整脈を起こすことはないかと思います。果物(カリウム)をいっぱいとっても体内でうまく処理して余分なカリウムは排泄をしてくれます。テレビでも8年間果物しか食べないという男性がいると放送していましたけどお元気そうでした。
ただ注意したいのは病気の方です。特に心臓や腎臓で入院している患者様。心臓が悪い方はただでさえ不整脈を起こしやすいですし、腎臓が悪い方はカリウムの排泄が悪く体内にたまりやすいのです。入院中の食事でも果物等のカリウムを制限したメニューを食べて頂くことがあります。ちなみに体内のカリウムは採血でないとわからないので、病状によっては2~3日に一回は採血をしたりします(もちろんカリウムだけでなく、様々なデータもみます)。
看護師一個人の意見なのですが、けっこう大事なんですよ、カリウム。
果物は栄養豊富なイメージがあるのか、ご面会の方がお見舞いの品として持ってくることがあります。しかしそのお見舞いも場合によってはお断りをしています。と言いますか、『基本はお見舞いは医師に確認して許可が出てから』としてもらえると看護師は助かります。カリウムの他にもカロリーや患者様の飲み込みの問題などがあるので、ご自身の判断だけでで決して患者様にあげないようにしてください。折角患者様のために持ってきた果物が逆に患者様に悪影響を与えてしまうかもしれませんから……。
というところで今日の黒い戯言は
「自分が入院したときにやたらと果物を持ってくる家族と友人がいたら、ちょっと疑ったほうがいいよ」という感じで。
今日もありがとうございました!