看護師は縛るのがお好き? ~拘束道具紹介~
「ちょっと危ないから縛っちゃおっかなー?」
看護師は患者様の安全のために、身体抑制をすることがあります。
身体抑制とは要は縛ること
なぜ守り、癒やす対象となる患者さんを縛るのか。
そして、縛るときにはどういった方法があるのか
今日はそんなお話
①入院に関連する混乱『不穏』
患者さんの中には、「なぜ入院しているのか?」と言うことを忘れて混乱してしまう方がいます。俗に言う不穏(せん妄)、と言う状態です。先代の(故)中村勘九郎さんもこの状態になってしまっていたようです
不穏になってしまうと「ここはどこなのか」「なぜここにいるのか」がわからなくなります。なのでどんなに入院が必要な病状でも、帰ろうとしてしまいます。
点滴が入っていれば出血することをおかまいなく引き抜きます。
足が折れていても、歩こうとします
一度不穏になると看護師や医師がいくら説明しても現状認識ができず「お前が言っているのは嘘だ。帰る!」と叫びます。暴力をふるうこともあります。ご自身で入院希望したのにも関わらず。混乱してそのことも忘れてしまうのです。
「不穏って認知症とか高齢の人だけが起きるんじゃないの?」
と思う方もいるかもしれません。
確かに認知症の人の方が不穏になりやすい。そして認知症でなくても高齢の患者さんは不穏になりやすいと思います
私自身の経験から言うと、高齢者の緊急入院の半分は不穏になります。それだけ高齢になればなればなるほど不穏になるリスクは高いと感じています
しかし若くても不穏になる可能性はあります。
若くても病状が重かったり、大きな手術後だとせん妄になるリスクは高くなります。
だから他人事ではないのです。
この記事を書いている私ももちろん、不穏になる可能性があります。
②不穏の実際、対処
不穏は夕方から夜にかけて起きることが多いです。
「夜になると狂う」
夜勤をしていると実感します。昼間は穏やかな人が、日が沈みかかる時から豹変するのです。
私の経験上、不穏になった患者さんは一度寝て朝を迎えるまで治りません。
そして不穏は興奮状態なので、寝ないんですよこれがまた……
臨時の安定剤を飲んでもらってもすぐには効きませんし、効くとは限らない。でも暴れているままでは安全が守れない
じゃあどうするか……?
身体抑制するしかないんです。不穏になった患者さんのためにも、その他の患者さんなためにも。
不穏の患者さん「だけ」を担当するなら、抑制しなくても看れるかもしれません。でも他にも十数人〜数十人の患者さんも看護師は看なくてはなりません。マンパワーが足りないんです
仕方なく、抑制をさせてもらっています
では具体的に抑制はどういった道具で行われるか一挙ご紹介します!
③拘束具あれこれ
・拘束のファーストステップ ミトン
一番使いやすい拘束具。自分でははずせない鍋つかみ、みたいなものです。
不穏になると往々にして異物を抜きたくなります。点滴や胃への栄誉チューブ、膀胱カテーテル等々。治療に必要なものですが、「不穏」となっている状態の方には関係ありません。気になったら抜いてしまうのです。ですがこのミトンを使えば、大抵の指先の動きは使えません。ただつけたままだと臭いがすごいのと、皮膚トラブルを起こすのがたまに傷。
・ヒモ抑制
ヒモ、というより細めの帯です。ヒモだと縛った際に皮膚トラブルや血行障害のリスクが高まってしまいます。ただなるべく面が広い両手を柵にしばりつけて、手の自由を奪う方法。ミトンだけでは点滴等抜くのを防げないときに使用します。かなり自由を奪います。縛られている姿はちょっとしたホラー映画みたい。
・胴体抑制
ベットにつけて、体をくくりつけます。起き上がりができなくなるどころか、寝返りもしづらくなるので不快感はあります。寝返りがしづらくなることは褥そう(床ずれ)が発生しやすくもなります。歩けないのに、ベットから降りようとしてしまう方に使用。
・くるま椅子ベルト
車イスから立ち上がろうとする方に使用。力が強い人だと、無理に立ち上がろうとしてそのまま倒れてしまうので注意が必要です。
・抑制着(つなぎ)
オムツいじりをしてしまう方に使用。チャックに鍵がついており、患者様自身が脱ぐことは困難です。ただ鍵が大変小さいので、時々無くして大捜索になります。
といったように様々な拘束手段があります。大きく暴れてしまう患者様には複数の抑制をすることもあります。
世の中では「患者さんの体を縛ったりする身体抑制はいけない!」とされています。確かに抑制は人権侵害になりかねないですし、抑制により寝たきりになる可能性は少なくありません。
でも
現場にいる身からすると「じゃあどうしたらいいの?」というのが正直なところ。
不穏が置きやすい夕方〜夜中は夜勤帯のため看護師は少なくなります。
繰り返しになりますが下手したら25人~50人以上を一人の看護師でみなければならないのです。抑制をせずに見守ることができたらそうします。
でもできないのです。
「抑制をしたくないのならば、ずっとご家族に付き添って欲しい」
そういう声も現場からは聞こえてきます。
④最後に 不穏に対してできること
繰り返しになりますが、高齢の方の入院は不穏になる可能性が高くなります
そのことを頭の片隅にまず置いといて下さい。普段しっかりしている人ほど不穏になる印象なので、「私は大丈夫」とか「父は大丈夫だろう」と油断は禁物です
そして高齢のご家族が入院となってしまったら、カレンダーや時計、テレビなど時間がわかる物を差し入れて下さい。
これ、けっこう重要です。入院生活は単調なのですぐに時間把握がしづらくなり、不穏になりやすくなってしまいます。そこで時計などがあると不穏予防になります
あとご家族の写真も差し入れて欲しいです。不穏になった時に看護師がその写真を使って現状把握を促すことができます。また入院しているとただでさえ孤独感を感じるので、その癒やしになります。
私は
「入院は病気を治せるかもしれないけど、人を壊してしまう可能性がある」
と思っています。
「病気は治ったけど、不穏になり抑制をされて認知機能・身体機能が落ちて家に帰れなくなった」
よくある話、なんです。
だから入院しないように普段から健康を意識していきましょう!
そしてもし高齢のご家族が入院してしまったら、病院任せはオススメしません。
コロナ禍ではありますが、前述の差し入れや手紙などを送ってあげてください
そのちょっとした気配りが不穏を防ぎ、貴方も含めたご家族を守ることにつながります
以上、看護師からのお願いです
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