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【超ショートショート】(116)~好きな人ランキング~☆CHAGE&ASKA『好きになる』☆

朝、鏡の前で、
前髪を入念にドライヤーでセットする女子高生。

きのうテレビドラマで流れた曲の影響を受けて、
なにやらニヤニヤして楽しそう。

(男子高校生)
「おはよう!ちょっとお前、前髪、変じゃねぇ?」

(女子高生)
「いいの、いいの(笑)」

教室でも、男子高校生のような反応が、
女子高生の前髪にあるのに、
彼女は、とにかく、からかわれる度に、
とても嬉しそうにするのである。

(男子高校生)
「お前、何でそんなに嬉しそうにするんだ?」

すると、その質問が嬉しかったのか、
満面の笑顔でこう話した。

(女子高生)
「だって、切りすぎた前髪をね、
好きになってくれるんだって。(笑)」

(男子高校生)
「どういう意味だ?」

(女子高生)
「きのうのドラマ見てないの?
あのドラマの主題歌よ!」

(男子高校生)
「主題歌?」

(女子高生)
「そう主題歌!あの歌、歌う人が好きなの。」

(男子高校生)
「そうか!」

女子高生は、初めて人に
好きな人を紹介したので、
とっても恥ずかしくなり、
肩先を少しすくめた。

そんな姿を見た男子高校生は、
身体の中からマグマが沸くのを感じた。

学校が休みの日。
女子高生と男子高校生は、
偶然商店街で会った。

ちょうど電気屋さんの前だった。

女子高生の肩越しに、
彼女が好きな歌手の歌が主題歌のドラマが
流れていた。

(男子高校生)
「あのさ、お前の好きな歌手が主題歌のドラマさ、
専業主婦が不倫するドラマじゃないか?」

(女子高生)
「そうなの?」

(男子高校生)
「お前、知らないのか?」

(女子高生)
「知らない!
だって曲を聴くために見てるだけだから。」

(男子高校生)
「それにしても、不倫のドラマになる歌だぞ。」

(女子高生)
「だから何?」

(男子高校生)
「だから、
お前が思ってる歌詞と違うんじゃないか?
お前、まだお子ちゃまなんだな!(笑)」

(女子高生)
「何よ!人のことバカにして!
もう絶対、許さないから!
それに好きな人の悪口も言わないで!
もう絶対、許さないんだから!(涙)」


翌日、
学校でふたりは顔を合わせたが、
女子高生は男子高校生と、
口をきいてくれなくなった。

それから数ヵ月後、
ドラマもすっかり終わっていた頃、
男子高校生が、ヘアスタイルを変えて来た。

「どうしたの?◯◯君!」

というふうに、みんなにからかわれたり、
カッコいいとほめられたり、
ちょっとした騒ぎになった。

そんな時、
女子高生が登校してきて、
男子高校生と目があった。

(女子高生)
「どうしたの?髪型。」

(男子高校生)
「いや、ちょっと・・・変えてみたんだ!」

(女子高生)
「前髪、それ、切りすぎじゃない?(笑)」

(男子高校生)
「なんだよ!変っていうのかよ!(怒)」

(女子高生)
「いや、変じゃないけど、ちょっとね(笑)」

(男子高校生)
「ちょっとねってなんだよ!
これでもな、原宿のカリスマ美容師に
切ってもらったんだぞ!」

(女子高生)
「そう、それは良かったね(笑)」

(男子高校生)
「あぁ~。(照笑)」

(女子高生)
「でもさ、その髪、誰かのまね?」

(男子高校生)
「誰のだよ!」

(女子高生)
「いや、言っていいの?」

(男子高校生)
「いいよ!早く言えよ!」

(女子高生)
「あの人の?」

(男子高校生)
「あの人って?」

(女子高生)
「だから、あの人!私が好きな歌手よ!」

(男子高校生)
「・・・・・(照笑)」

(女子高生)
「全然、顔、似てないのにね!(笑)」

(男子高校生)
「うっせ~よ!(恥)」

(女子高生)
「でも、前より今のほうがいいんじゃない!(笑)」

(男子高校生)
「だから、うっせ~よ!(笑)」

(女子高生)
「今度のお休みさ、都民の日じゃない?」

(男子高校生)
「そうだな!」

(女子高生)
「平日だし、
一緒にディズニーランド行かない?(笑)」

男子高校生は、
いきなりのデートのお誘いに一瞬硬直。
困った表情をしていると、

(女子高生)
「じゃあいいや!ほかの人と行くね!」

(男子高校生)
「ちょっと待てよ!まだ返事してねぇだろう!」

(女子高生)
「じゃあどうするの?行くの?行かないの?」

(男子高校生)
「しょうがないな、一緒に行くヤツがいないなら、
俺が一緒に行ってやるよ!」

(女子高生)
「別に一緒に行く人ならいるけど・・・」

(男子高校生)
「それ、どういう意味だよ!男か?(怒)」

(女子高生)
「一緒に行くはずだった娘(こ)がね、
きのうおじいちゃんが倒れて、
お休みの日にお見舞いに行くことになって、
せっかくチケット取ったのに余っちゃうから、
とりあえず、聞いてみただけ。
私と行くのが嫌なら、ダメって言っていいんだよ!
無理しないでね。」


女子高生は、
よい返事がもらえなかったと、
肩を落とし、自分の机に着席した。

男子高校生も、
素直になれず、
デートのお誘いが嬉しかったくせに、
ちゃんと答えてあげることができなかったと、
大反省。

放課後、
教室にふたりが残っていた。

(男子高校生)
「あのさ、俺、行くよ!」

(女子高生)
「もう、いいよ!
どうせお天気も悪いみたいだし。」

(男子高校生)
「それでも、俺、行くよ!」

(女子高生)
「ひとりで?」

(男子高校生)
「お前と一緒に!カッパ着ていけばいいだろう。」

(女子高生)
「カッパはちょっと、ね。」

(男子高校生)
「カッパはちゃんと、ねって何がねなんだよ!」

(女子高生)
「もうちょっとカッコいい格好がいい!(笑)」

(男子高校生)
「・・・・・(照笑)」

(女子高生)
「あっ!今、照れたでしょ?(笑)」

(男子高校生)
「照れてねぇ~よ!バカ!(笑)」

教室の窓から、
校庭で野球部の練習する声が響く。

(女子高生)
「あのね、この前はごめんね。」

(男子高校生)
「何のこと?」

(女子高生)
「口もきかなくなったこと。」

(男子高校生)
「別に気にしてないけど、
あんなヤツ好きになっても・・・」

(女子高生)
「また悪口言うの?(怒)」

(男子高校生)
「違うよ!あんなに凄い人を好きになっても、
実際会えるわけでもないし、
お前・・・辛くならないか?」

(女子高生)
「誰を好きになるのも私の勝手でしょ?」

(男子高校生)
「まぁ勝手だけどね。お前がそれでいいなら。」

(女子高生)
「どういう意味?」

(男子高校生)
「よく言うじゃないか、一番好きな人とより、
二番目の好きな人と一緒のほうが
幸せになれるってさ。」

(女子高生)
「うん。でも、それはムリ!」

(男子高校生)
「何でだよ!」

(女子高生)
「だって、
ちゃんと告白もできない人とは付き合えないよ!」

(男子高校生)
「・・・・・」


お休みのデートの日。
女子高生の話していた通りのどしゃ降り。

ふたりはずぶ濡れになりながら、
アトラクションを楽しんだ。

ふたりの間に流れる沈黙の時間を、
ふたりは怖かった。

だから、くだらない話で間をつなぎ続けた。

まだまだ、
女子高生の好きな歌手の歌のような
大人な恋愛には踏み込めない様子。

(女子高生の心の声)
「沈黙をキスで埋めるなんて、
いつから?どうしたらいいの?」

(男子高校生の心の声)
「彼女はキスを待っているのだろうか?
何なんだ?この沈黙は?
やっぱりキス待ちなのか?」

ふたりの頭の中は、
〈キス〉のことでいっぱいになっていた。

そんなことだから、
ただ瞳が合うだけでも、
キスをしたように恥ずかしく、
ただ手が触れただけでも、
キスよりも、
もっとスゴいことしたように恥ずかしく、
ただ・・・・・。

こうして一歩一歩、
本来なら大人な恋愛の階段を上がって行くのだろう。

さて、女子高生は、
二番目の好きな人で納得するのかは、
今のところ不明である。

(女子高生の心の声)
「やっぱり一番がいい!」


(制作日 2021.9.27(月))
※この物語はフィクションです。

今日のお話は、
1995年9月25日から放送スタートした
ドラマ『妻の恋』、その主題歌になりました
CHAGE&ASKA『好きになる』を参考に書いてみました。

歌詞は、大人な部分もありますが、
お話のように女子高生が喜んでしまうような、
可愛らしい部分もあります。

今回参考にした歌詞を少し書いてみます。 

~~~~~
好きになる そんな旅をはじめた
切り過ぎた前髪を悔やむ 君を好きになる
~~~~~
言葉を持て余す 沈黙がいやで
ふたりの時間をキスで渡った
水の底 歩くように

今 何を考えてるのって
君はよく聞くけれど・・・

好きになる そんな旅をはじめた
肩先を少しすくめた君を 君を好きになる

現在(いま)がすべてと思いたい
過去は嘘でもかまわない
~~~~~

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
CHAGE&ASKA
『好きになる』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 清水信之
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『CODE NAME.2 SISTER MOON』
(1996.4.22発売)
★ドラマ主題歌
1995.9.25(月)~1995.10.19(木)
毎日午後8時40分~9時放送
NHKドラマ新銀河『妻の恋』
脚本 内館牧子
主演 古手川裕子・竹脇無我

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