【超ショートショート】(102)~夢へ誘う、懲りない無類の◯好きよ~☆ASKA『夢でいてくれるでしょうか』☆
僕は、地面に転がる
綺麗な果実を見つけた。
ブドウでもリンゴでもスイカでもない、
初めて見るその果実は、
甘い桃のような香りがした。
僕は無類のフルーツ好きだ。
食べずにはいられなくなった。
一口食べようとした時だった。
「冴場(さえば)さん、
お口を大きく開けてくださ~い!」
そう言われた僕は、
素直に口を大きく開けた。
すると、
甘い桃のような香りは1つもしないものが、
身体の中に入るのを感じた。
「うっ!」
と叫んだ瞬間、
目の前の景色が桜吹雪の中。
散った桜の花びらは、
元の花の場所に戻りたいと、
花びらたちは泣きながら、
風の中を飛んでいた。
「どうして、そんなに戻りたいの?」
と僕が尋ねると、
「花びらは散れば、人に踏まれ、
美しさを失い、その上ほうきではかれて、
捨てられてしまう。
あんなに花の時には、人々が笑顔を見せたのに、
散ってしまえば人は冷たいものよ」
僕は、
その花びらたちの涙ながらの訴えに共感した。
「僕も同じだ!」
「どうして?
人は花びらのように散ることはないでしょう? 」
「でも人も散るんだよ!」
僕自身のある戦いに
何度も負けたことを花びらたちに話した。
「どうしても勝てないんだよ!
ヤツは絶対にズルをしていると思うんだ!
だが、その証拠は掴めずじまい。
一体、
僕はどうしたら勝てるのだろうか。」
花びらたちには、
どうにも理解できる話ではなかったようで、
僕の話は右から左へと
花びらたちの風舞のように、
空(くう)を舞続けるだけだった。
「冴場さん、ではお腹の中を見てみますね。
苦しかったら手をあげてくださいね!」
そう言われた僕は、素直に手を上げた。
「は~い!」
と声を出した瞬間、
目の前にテーブルが現れた。
「お客さん!とっておきの飲み物だよ!
どうぞ召し上がれ!」
テーブルに置かれた、
ガラスコップにたくさんの氷。
その中に、
小さなラムネのようなグミのような
何かがプカプカと浮かんでいる。
「あの~すみません!
この浮かんでいる小さなモノは何ですか?」
「あっ!それかい?!(笑)
それは犬だよ!」
「犬!犬ってあの犬?」
「そうだ!犬は犬だよお客さん!
あんたも犬好きだろう?(笑)」
僕は無類の犬好きだ!
だが、犬を食べるわけにはいかなかった。
「すみません!僕、犬は食べられません。
可哀想で。」
「そうかい!そりゃ残念だ!(笑)」
ルパン三世の次元大介のような店員が、
不敵な笑みを浮かべ、その飲み物を下げると、
テーブルに残された水滴が、
突如時計となり、時を刻み始めた。
「今の時間は?14:12か。」
僕が時刻を読んだ時だった。
「冴場さん、終わりましたよ!
じゃあ、あちらのベッドに移りますね!
歩けますか?(笑)」
そう言われた僕は、
素直にベッドを探した。
横になろうとした時、
フラフラっと倒れ落ちてしまった。
「痛っ!」
と叫んだ瞬間、
僕は星の砂浜にいた。
素肌に刺さる星形の砂を見ていると、
「お前さん、ここは初めてかい?」
「はい。」
「でも、以前にも見た顔のようだが?」
「いや、初めてです。」
「まぁどちらでもよい!(笑)」
話しかけてきた、
浜の仙人のような長い口ひげの老人。
僕はここに来るのは初めてだというのに、
こんな話をしてきた。
「以前、そうさな、1年前だったか?
お前さんにそっくりの男がここに来てな、
星形の砂をたんまりと集めていたよ!
ワシが、〈その砂をどうするか?〉と尋ねると、
その男は、
〈ここに来た証を持って帰りたいのです。〉と。
だが、この砂は門外不出!
決してここから出してはいけないのだ!」
僕はなぜ門外不出なのかを尋ねると、
「それはな・・・・・」
老人が話をするが、
突如、僕には聞こえなくなった。
まるでテレビの砂嵐が、
老人と僕の間に黒い砂の壁を作るように。
「冴場さ~ん!起きれますか?」
そう言われた僕は、
「いや、僕はずっと起きているじゃないか!」
と言ったつもりが、全く通じていないようだった。
「冴場さ~ん!
少しだけ身体を起こしてみますね!」
そう言われた瞬間、
僕の了解も取らずに、僕の肩を気安く抱いた。
「僕は男だ!気安く肩を抱くな!無礼者!」
そう叫んだつもりだが、またもや
全く通じていないようだった。
結局、僕はなす統(す)べなく、
肩を抱かれ放題で、こう言われた。
「冴場さ~ん!(笑)
もう起きているでしょう?(笑)」
そう言われた僕は、
「はい。起きています!」
と言ったつもりだったが、
別の人物にこう言われた。
「龍馬!あんた何してるのよ!」
と、ものすごい美声で怒る女(ひと)。
「何もしてません!」
と叫んだ僕だったが、
突如手の甲をつねられた。
「じゃあ、この手は一体何?(怒)」
僕はやっと重たかったまぶたを
ゆっくり開くと、
「龍馬!よく見なさい!
あなたの手は今どこにありますか?(怒)」
そう言われた僕は、
自分の手のありかを探して、
床の方を見た。
「キャッ!」
と叫ぶ僕。
「何がキャッ!だよ!」
「だっ、だっ、だって、
手が勝手に・・・」
「手が勝手に何?(怒)」
僕は、目の前で怒る女(ひと)が怖くなり、
もじもじしていると、
「龍馬!ハッキリ言わんかい!!!(怒)」
「あっ、はい!
看護婦さんのおしりです。(笑)」
僕は忘れていたが(←嘘をついてみた)
無類の女好きだった。
もちろん、
僕はこのあと、
10トンのハンマーで殴られるのだった。
だが、懲りずにこんなことを言うと、
「やっぱり、胃カメラの麻酔には勝てないが、
負けるからこそ得られるものは、
僕にとっては天国だ!(笑)」
「龍馬!まだ言うか~!!!(怒)」
(ナレーション)
~冴場は再び10トンのハンマーで殴れるのだった~
(制作日 2021.9.13(月))
※この物語はフィクションです。
今日は、
胃カメラで麻酔をかけられた体験と、
ASKAさんの曲『夢でいてくれるでしょうか』を
参考に、麻酔でうつらうつらする中で見る、
夢のような世界を書いてみました。
最後の落ちはお遊びです。(笑)
(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/
~~~~~~
参考にした曲
ASKA
『夢でいてくれるでしょうか』
作詞作曲 ASKA
☆収録アルバム
『Black & White』
(2017.10.25発売)
YouTube
【ASKA Official Channel】
『夢でいてくれるでしょうか』Music Video
https://m.youtube.com/watch?v=yfolOVrxw-c