見出し画像

【超ショートショート】(62)☆NATURAL☆~ふたりで作る自然な日常~第2話(全3話)

僕らは一度、別れを経験している。

映画館で出会った僕らは、
映画館でふたりを始めた。

それから、
しばらくして、
君が映画の仕事で、
海外に長期滞在を求められた。
僕らが離ればなれになることを、
僕よりも君が嫌がった。

君と僕のデートは、
いつも人目を避けて、
君の家ばかり。

君が仕事に向かう車から、
たまたま僕が女性と歩いているのを見た。
その夜の君は、
信じられないくらい怒っていた。

「何で浮気するの?(怒)」

「浮気じゃないよ!
あれは姉貴だよ!体調が悪いから、
身体を支えて病院に連れて行った所だよ!」


翌朝、
君は僕に何も言わず、
海外へ行ってしまった。

それから、5年、
音信不通から自然消滅した。

君の活躍は、テレビや雑誌で見ていた。
ただ元気そうなのが嬉しかった。


新聞に、
君の母親の訃報が載っていた。

君は、早くに父を病気で亡くし、
母親に育てられた。
少しでも、母親を助けるために、
君は女優の道を目指した。

僕は仕事帰りに、
あの映画館のシアター5に座った。

でも、君に会えなかった。
この頃、新恋人がいると報道されていたから、
今の哀しみを、
新恋人に癒してもらっている頃かもしれない。
僕は、何を期待して、ここに座るのか、
急に恥ずかしくなった。

そういえば、
僕らが外でデートをした時、

(君)
「ここなら見つからない!(笑)」

と、歩道橋で、夜空を見上げるのが、
君、好きだったね。

僕は、映画館からの帰り、
その歩道橋に行った。

階段を上がると、
空には8月の満月、スタージェンムーンがあった。

ちょうどお盆休み。
都会の夜の道路は、空いていた。

僕は月を見ながら、
こんなことを思い出していた。

君の部屋に、
僕の荷物が増えて、
君が休みの日。

まるで日曜日の母親のように、
洗濯、掃除に追われ、
いつまでもゴロゴロしている僕を、
怒ってみだり、ふざけて叩いてみたり。

そんなとき、
君は、なんだか嬉しそうに笑うんだね。
口では、
「忙しい。大変。手伝って!」
というわりには、
僕が手伝おうとすると、
「やっちゃダメ!」
っていうんだから、
僕はいつも困ってしまう。

家にいると邪魔だからと、
僕が外出すると、
「ごめん」
とメールをくれる。
「別に悪いことしたわけじゃないから、
謝らなくていいよ!
それより、何か買っていくものある?」

僕は君が頼んだトイレットペーパーと、
いつも1輪だけ君の好きな花を買って、
君の家に戻った。

「ねぇ!(怒)
何でシングルなの?
私、
ダブルのトイレットペーパーを頼んだでしょう?」

「ダブルって何?
トイレットペーパーはどれも同じだろう?」

せっかく仲直り仕掛けたのに、
トイレットペーパーで、
またケンカする僕と君。

ふたりして、
シングル&ダブル論争を繰り広げていると、
その馬鹿馬鹿しさに、
まず君が吹き出した!
僕もつられて吹き出した!

「まるで、
犬も食わない夫婦のケンカみたいね!(笑)」

そう話す君は、
またとても嬉しそうだった。

ケンカの仲直りに、
いつも1輪の花が活躍する。

どんなに君が怒っても、
その花だけは、大切に活けていた。


ハイビームで目をくらませた時、

「こんばんは。」

という声が、僕の後ろから聞こえた。
振り返ると、君がいて、
喪服を着ていた。

「今日、お葬式で、納骨も済ませたの。
また来週から海外だから。」

僕らは、しばらく近くの公園を、
会話もなく歩き、

「これからどうする?」

の僕の問いに、君は、

「今日は一人になりたくない」

と書いたメールの君のスマホを僕に見せた。
口で話せばいいものを、
わざわざスマホに書いて見せる、
パパラッチ対策の徹底ぶりに、
僕は感心と緊張で、
それからの僕の発言は、
他人行儀なロボットのように
冷たいものになった。

「無理しなくていいよ!(笑)」

あまりにも、
僕が緊張するから、
君が笑いながら慰めてくれた。

僕らは、
僕の家に帰ると、
君が自分の荷物を見つける。

「お気に入りのマグカップだから、
取って置いたんだよ!
いつか君に返すために。」

ふたりが付き合い始めて、
最初のクリスマスの日。
君がふたりのために買って来た
夫婦(めおと)マグカップ。

また、君は嬉しそうに、
僕の部屋のキッチンを、
始めて使う人に見えないくらい、
使いこなして、コーヒーを入れてくれた。


それから、
2年経った頃、
君から花が届いた。

「お誕生日、おめでとう!」

また玄関チャイムが鳴る。


日曜日の午後、
またトイレットペーパー論争が勃発?
いや、今日は、
台所洗剤の香りで論争が勃発!

「僕、爽やかなハーブの香りが好きだ!」

「いや!私は花の香りがいい!」

この香り論争は、
食洗機用と手洗い用と、
そもそも購入する洗剤が違うことに、
ふたりはまだ気づいていなかった。


(制作日 2021.8.4(水))
※この物語は、フィクションです。

今日は、
1994年8月3日発売、
CHAGE&ASKA
デビュー15周年記念シングル 三部作
『HEART』『NATURAL』『On Your Mark』

そのシングル2曲目の『NATURAL』を参考に、
お話を書いてみました。

きのうの第1話で、
僕と君が映画館で再会。
その後のふたりのお話です。

年齢によるものなのか、
わかりませんが、
夢や仕事に邁進しなきゃいけないとき、
今ある恋を、
愛を持って手放さなきゃいけないときも、
大人になればあるんじゃないかと。

芸能人の方で、
下積みから長いお付き合いをし、
やっと交際10年を越えてご結婚なさる、
そのような話題も参考にしてみました。


明日の第3話は、
三部作シングル3曲目『On Your Mark』を参考に、
お話を書いてみます。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~~

参考にした曲は
CHAGE&ASKA
『NATURAL』
作詞 ASKA
作曲 CHAGE・村上啓介
編曲 村上啓介
(1994.8.3シングル発売)
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『Code Name.1 ~Brother Sun』
(1995.6.28発売)
YouTuber
【CHAGEandASKA Official Channel】
『HEART』Music Video
https://m.youtube.com/watch?v=r585WXniqqI&pp=sAQA
『On Your Mark』Music Video
https://m.youtube.com/watch?v=3Obh9kg6o_U&pp=sAQA
『On Your Mark』ライブ映像
https://m.youtube.com/watch?v=58o1gIKYx-s&pp=sAQA

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?