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【超ショートショート】(282)~いつまでも、またねのお約束~☆CHAGE&ASKA『SAY YES』☆

硝子ケースに並んだ
木の葉のモチーフがあしらわれた
アンティークの香水びん。

ふらっとアンティークショップに
入ってきた修学旅行中の少女。

「うわぁ~きれ~い」
と、香水びんを見つけてつぶやく。

「お嬢ちゃん?ほしいのかい?
その香水びんを」
「香水?びん??」

少女はまだ香水の意味を知らなかったようだ。
アンティークショップの女店主は、
香水について教えてあげた。

「私もいつか付けてみたい!」
「好きな人ができたらかい?」
「好きな人?」
「そう、好きな人」

少女はまだ恋愛も知らない、
そんな素振りで、
女店主の話に首を傾げた。

「お嬢ちゃん、初恋は?」
「うふふ(笑)」
「うん?」
「おばさん、
私にまだ好きな人居ないって思ったでしょう?」
「うん」
「うふふ(笑)」
「居るのかい?」
「うん!」

少女は、
ある日現れたとってもカッコいい人を
すぐに好きになったと言う。
だが、
その好きな人は歳上で、
まだ会ったこともない、
もしくは一生会えない人かもしれないと、
少女は話す。

「いつか大人になってね、
今よりももっともっと、もっ~と、
きれいな女の人になって会いに行くんだ!
それが私の夢」
「会うだけでいいのかい?」
「・・・そこは聞かないで・・・」

女店主がこのアンティークショップを始めたのは、
もう昔のこと。

昔と言っても、何、
ほんの数年、数十年・・・
数千年前になるだろうか。

アンティークには、
その時代に生きた人たちの想い出や
痕跡が残されている。

その残された過去の人々の想いを聞きく。
過去に成し遂げられなかったその願いを。
そのため、
未来に必ず訪れるだろう過去の人々を
女店主はずっと待っていた。

「お嬢ちゃん?こんなお話を知らないかい?」
「何?」
「この香水びんのお話さ」
「香水びんにお話があるの?」
「そうさ」

約500年前、
とっても仲のいい恋人のふたりがいた。
ふたりは子供の頃に出会い、
その出会いの瞬間、両思いとなった。
それからずっと一生一緒に過ごした。

ある日恋人の彼女が病気になり、
余命宣告をされた。
あと何日と。

恋人の彼氏は、
彼女のために彼女がずっとほしいと話していた
香水びんを思い出す。

彼女が話していた高級店に急ぎ、
その香水びんを買おうとした。
だが、お金が足りず、
出直すことにして店を出た。

その翌日、
彼氏は彼女を見舞いに行くと、
彼女は嬉しそうに香水びんの話をした。

「何でそんなに嬉しそうにするの?」
「だってきのうあなたが・・・」
「僕が?」
「お店に行ってくれたんでしょう?」
「あー」

彼女の話を聞いた彼氏は、
怒って部屋を出て、
急いで高級店に向かった。

なぜ彼氏はそんなに怒ったのか?

きのう高級店で、
彼女が病気であることを話し、
今あるお金全部出すから、
香水びんを売ってくれとお願いした。
それをお金が足りないと断られていた。
だが、
お金は足りており、
彼氏はお店に嘘を付かれていた。

嘘を付いた理由は、
うちの店のお客さんには相応しくない
ということだった。
が、しかし、
彼氏は店に入ると、
高級店の社長が謝罪をしてきた。

「お客様、きのうは大変失礼なことを
うちの従業員がいたしました。
誠に申し訳ありません。」
「いや、別にいい」
「いえいえ、それでは困ります」
「困るとは?」
「はい、こちらにお客様用の香水びんを
ご用意しております。」
「いや、今日彼女の部屋に、
香水びんは届けられているが」
「届けられた?」
「そうだ!」
「いえ、お客様、うちの店では、
商品をお届けするサービスは
やっておりません。」
「やってない?」
「はい、何かのお間違えでは?」
「間違い?」
「はい」

彼氏は社長が持つ香水びんに
顔を近づけてよく見た。

「この香水びんには水が入っているのか?」
「はい、本物の香水が入っております」
「どんな香りだ?」
「はい、女性が大好きなお花の香りでございます」
「花か・・・」

彼氏は香水びんの香水の香りを嗅いで、
思い出した。

「彼女の部屋の香りと同じだ!」

彼氏は社長から香水びんを受け取ると
急いで彼女の部屋へ戻った。

彼女の部屋のドアが開いて、
たくさんの人が彼女の前で泣いていた。

「遅かったようですね」
「えっ?」
「彼女は先ほど息を引き取りました」
「そんな、まさか」


アンティークショップに場面を戻す。

「何で彼女は死んだの?」
「香水のせいさ」
「香水びんのこと?」
「彼女の香水びんの香水には、
ふたりの仲を嫉妬した高級店に勤めていた
彼女の同級生の男がいた。その男が、
本物そっくりの香水びんを作り、
彼女の部屋に届けていた」
「でも同じ香りって彼氏が」
「香りは一緒さ。、
香水びんのふたに毒を仕込んだのことだけが違うのさ」
「香水びんに?」
「香水びんのふたを開けるのは、
香りを嗅ぐ彼女だけだからさ。
香水のふたに付けられた小さな傷に毒を塗り込み、
彼女の肌につけば数時間で
亡くなられよう細工されていた」
「でも彼女の病気は?」
「ただの風邪で
亡くなるほどひどいものではなかったんだ」
「なんか彼女かわいそう」

約500年前の恋人のふたりは、
結婚が叶わなかった。
亡くなった彼女にプレゼントするために買った
香水びんを、彼氏は彼女のつもりで
一生大切にし独身を貫いた。

彼氏が自身の最期の頃、
その香水びんをこのアンティークショップに
預けに来た。

「すみません。
この香水びんを預かってもらえませんか?」
「預かる?」
「はい」
「何だか訳ありそうだね?」
「はい、すみません」
「で、預かってどうすればいいんだい?私は」
「もし未来、この香水びんに一目惚れする
可愛い少女が現れたら、
その少女に香水びんをプレゼントしてほしいのです」
「プレゼントしてどうするんだい?」
「あっ、そうですよね。
突然過去からのプレゼントと言われても困りますよね」
「困りゃあしないけど、
何か、その~、言葉っていうか、あっそうだ!手紙!
手紙でも書いておくれよ!」
「あっはい」

アンティークショップの少女の目の前に、
その手紙を女店主が出した。

「ほら、読んでごらん」
「へぇッ!?」

少女は恐る恐る手紙を開き読んでみた。

「あの~読めません」
「読めない?さては500年も前のことだから、
紙がボロボロになったかね」
「あっいいえ。日本語じゃあないんですけど」
「ハッハッハ(笑)英語だったな」
「はい(苦笑)」

女店主が手紙を受けとると、
訳しながら手紙の文章を読み上げだ。

「未来の君へ
元気にしていますか?
僕は君から遅れて50年も長生きしてしまった。
君が亡くなるずっと前、生まれ変わりの話をしたね。
僕らがそれぞれに死んで、
また来世でも出会えるようにって、
合図と待ち合わせ方法を決めたの、
憶えてるかな?
僕は例え歳の差が50年あったとしても、
お婆ちゃんの君を必ず見つけて愛するからね。
だから君は、他の誰かのものにならないでね。

未来の君へ
君への香水びん、
君に50年前、プレゼントしてあげられなかった。
その香水びんをアンティークショップの
お姉さんに預けたから、
未来の君がこの店に来たら、
お姉さんから必ず受け取ってください。
そして、
その香水びんの香りをまとって、
僕に会ってくださいね。
僕はいつまでも君を探すから、
見つけるから、迎えに行くから、
待っててね。
その香水びんの香水の香りが、
僕らが出会う合図。

未来の君と未来の僕の待ち合わせ場所は」

「待ち合わせ場所は?」
「それはお嬢ちゃんが自分で訳してごらんよ」
「今はまだ英語できないもん」
「もうすぐ読めるようになるよ!」
「本当?」
「あー本当さ」
「わぁー楽しみ~(笑)」

それから30年後、
中年過ぎの仲のよい夫婦が
アンティークショップへやって来た。

「こんにちは。
その節はありがとうございました」
「その節?」
「はい、香水びんですよ!
ほら僕のことわかりませんか?」
「私のことも(笑)」
「あーあーあーぁ、香水びんの」
「はい!あのあと彼に再会して」
「それから僕らはずっと一緒にいます」
「そうか!結婚も?」
「はい!しました(笑)」
「それで今日は?」
「今日はまたお願いを」
「お願い?」
「はい」
「ちょっと待て!またどちらかが死ぬのか?」
「いえいえ、違います。僕らは至って健康です」
「じゃあ何?」

未来に再会できた過去の恋人のふたりは、
次の未来のために、
またアンティークショップに預け物を
お願いしてきたのだ。

「僕らはまた次の来世でも
一緒になる約束をしたんです」
「その時の合図として、
またこのお店にこの香水びんを預けて、
硝子ケースに並べてほしいのです」

アンティークショップの女店主は、
ふたりの希望を聞き入れ、
同じ硝子ケースに、
過去の香水びんと
今の香水びんの2つを並べて、
次の未来のふたりを来店を待つことにした。


それから100年が過ぎた頃、
アンティークショップの硝子ケースに並ぶ
2つを香水びんは、
お店を訪れる恋に迷う彼女彼氏たちに、
香りの魔法をかけるがごとく、
ふたりの幸せをお裾分けするのだった。


また500年が過ぎた未来、
修学旅行中の今度は少年が
アンティークショップに
ふらっと入って来るのだった。


(制作日 2022.7.24(日))
※この物語はフィクションです。

今日は、
1991年7月24日発売のシングル
CHAGE&ASKA『SAY YES』
発売31周年記念日。

そのお祝いのつもりで、
『SAY YES』を参考にお話を書いてみました。

ちょっとだけ、
お話には韓流ドラマの「トッケビ」が
影響していますが(笑)

何度生まれ変わっても、
または、
この一度きりの人生で出会った
同じ大切な人と、
ずっと一緒に幸せでいたいものですね。

そんな想いで書いて見た不思議なお話でした。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~


選曲した曲
CHAGE&ASKA
『SAY YES』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 十川知司
(1991.7.24発売)
☆お祝い動画を制作しました☆
https://youtube.com/shorts/HvwHmvCqG_g?feature=share

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