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【超ショートショート】(57)~井戸のヒミツ~☆愛すべきばかちんたちへ☆THE LIVE(コンサートツアー02-03)☆

地球を周回する物体。

「あったぞ!(笑)」

右側の口角をあげ、

「うふっ!(笑)」

と、不敵な笑みのマスクのまま、
日本は、九州のある街に降下する。

「よし!あったぞ!これがウワサの・・・(笑)」

一軒の家にある井戸の前。
地球外から来た物体は、
その井戸を調査し、
目的の井戸であることを確認すると、

「さぁ!スーツに着替えてスタンバイだ!(笑)」

井戸の脇にある、
桃の木の影に身を隠し、
物体の惑星では定番の
スーツとやらに着替えをする。

着替え終わると、
井戸のふちに隠れ、
この井戸を利用する者を待った。


「今年は大変ね!
どこの家の井戸が枯れてしまって。
家(うち)も
一昨日(おととい)から水が出なくなったのよ!
だから、
少しだけ水を分けてもらえるかしら?」

物体が隠れる井戸を、
ご近所のご婦人が水をくもうと、
ハンドルに手を掛けると、

「山?」

(ご近所のご婦人)
「えっ?何かしら?」

もう一度、井戸のハンドルに手を掛けると、

「山?」

(ご近所のご婦人)
「はぁ?えっ?あの~奥さ~ん!
ちょっと来てくださる~!」

井戸の持ち主の家の奥さんが、
ご婦人の声に駆けつけると、
ご婦人は、
また井戸のハンドルに手を掛けて見せた。

「山?」

(ご婦人と奥さん)
「・・・・・?」

(奥さん)
「今のは?」

(ご婦人)
「さっきから、水を出そうとすると、
今の声聞こえるの。〈山?〉って。
いつもこの声するの?」

(奥さん)
「いいえ。初めて聞きました。
今、主人を呼びますから、
お水くむの、少し待って頂けます?」

(ご婦人)
「でも、今日は止めておく。
まだくんであるお水があるから、
そんなに急がなくても大丈夫だし。」

(奥さん)
「そうですか。ごめんなさいね。」

ご婦人が帰宅すると、
井戸の持ち主の主人が帰宅。
事の詳細を奥さんから聞くと、
さっそく、「調査開始!」と、
凝り性の本領発揮とばかりに、
何故か?
カムフラージュ・パンツと
迷彩柄のヤッケを、
戦闘服として着こむのである。

奥さんから聞いた通りに、
主人が井戸のハンドルに手を掛けると、

「山?」

(主人)
「・・・・・合言葉か?」

もう一度、ハンドルに手を掛けると、

「山?」

(主人)
「川!」

「面?」

(主人)
「めん?・・・麺!ならば、コレか!
とんこつラーメン?!」

「面?」

(主人)
「違うのか?めん?・・・!
面?ならば・・・コレか!
胴!」

「小手?」

(主人)
「突き!」

「月影?」

(主人)
「うん?兵庫!?」

「花山?」

(主人)
「大吉?!」

「合格!」

主人が井戸のハンドルを下げると、
やっと水が出た。
また、ハンドルに手を掛けるが、
この日は、もうその声が聞こえなかった。

翌日、
きのうのご婦人とそのお友達数人が、
また水をくみにやって来た。

(井戸の持ち主の奥さん)
「きのうはごめんなさい。
夕べ主人が試したら、
水が出たの!
だから、今日は大丈夫だと思うわ。」

それを聞くと、
みんな井戸へ直行。
さっそく、ご婦人が井戸のハンドルに手を掛ける。

「山?」

(奥さん)
「川!」

「8時だよ?」

(奥さん)
「?全員集合!(笑)」

「西鉄?」

(ご婦人)
「ライオンズ?」

「♪鐘がなります♪?」

(奥さん)
「♪寒山寺♪(笑)」

「合格!」

(奥さん)
「さぁ、もう大丈夫!
水を出してみてください!」

ご婦人がハンドルを下げると、
水が出てきた。
ほかのお友達もやってみるが、
その声はこの日、もう聞こえなかった。


井戸の持ち主の家に、
待望の男児が誕生。

(男児の祖父)
「いや~!かわいいの~!
ワシがお前の名前ば付けてやる!
そうさなぁ~・・・・・!
博多の病院で生まれたんから、
〈博多っ子〉はどうだ?(笑)。」

思わぬ名前候補に、
家族親戚一同の総却下を受けた祖父は、
あの井戸へ、孫となる男児を連れて逃げる。

(祖父)
「ワシはそんなに怒られることば言ったか?
なぁ〈博多っ子〉!」

男児は、
〈博多っ子〉と呼ばれる度に、
祖父を見つめて笑うので、
嬉しさ余って、
〈博多っ子〉と名付けたかったのである。

男児が祖父を見て笑っていると、
男児の手が井戸のハンドルに触れる。

「山?」

(祖父)
「?なんじゃ?」

「山?」

(男児)
「ジィジ~!(笑)」

(祖父)
「ジィジ?今、ジィジって言ったか?
〈博多っ子〉よ!(涙)」

「ジィジ?」

(男児)
「ババァ~!(笑)」

(祖父)
「はぁはぁはぁ、それはひどいぞ!
〈博多っ子〉!
バァバって言わんと(笑)。」

「マイケル?」

(祖父)
「マイケル?なんのことじゃ?」

(男児)
「ジャッ!クシュン!(笑)」

(祖父)
「それは加トちゃんじゃよ!
〈博多っ子〉よ!(笑)」

「合格!」

(祖父)
「それにしても、この井戸の声はなんじゃ?
男でも女でもない不思議な声色。
どこかに住んでいるんかね?」


男児が、
両親から立派な名前を付けられ、
ヤンチャっ子として、
近所では有名だった。

ある日、男児が、探検隊を率いて、
林の茂みに潜入。

「痛っ!」

頭に何かをぶつけ、たんこぶを作る。

(祖父)
「男児たる者、決して人の前で泣いてはいかんぞ!
〈博多っ子〉!」

と、祖父の教えを思い出し、
痛みをこらえて、
ぶつかった物を探す。

銀色に光るジュラルミンのカバンを見つける。

(探検隊の仲間・男児①)
「止めなよ!危ないよ!」

(探検隊の仲間・男児②)
「僕、こわいよ!」

(探検隊の仲間・女児①)
「ねぇ、それな~に?(笑)」

(探検隊の仲間・女児②)
「勝手に開けたら、泥棒になるわよ!(怒)」

〈博多っ子〉はみんなの意見を聞き、

「これは、警察に持って行こう!」

(探検隊の仲間・男児③)
「ちょっと待って!この前テレビで、
その銀色のカバン見たんだよ!
それを動かしたら爆発したんだ!
だから、お母さんが、
〈この銀色のカバンのように、
カバンが落ちていたら、
絶対開けちゃダメよ!〉って、
言われたよ! 」

(探検隊の仲間・女児②)
「じゃ、私のお父さん呼んで来るね! 」

(探検隊の仲間・女児①)
「メグちゃんのお父さんって警察官なの?」

(探検隊の仲間・女児②)
「そうよ!三笠交番で働いているわ。
おうちもそこなの。」

そう話すと、
本当に警察官のお父さんをたくさん連れてきた。

(メグちゃんのお父さん)
「君たち、さぁ危ないから、
林から離れるんだ!」

そう話すと、
遠くの小学校へ避難するように言われ、
〈博多っ子〉は、お母さんと避難した。

翌日、日曜日の朝。
お父さんが朝食を食べていると、

「きのうの銀色のカバンを見つけたのは、
〈博多っ子〉か?」

「うん!おでこにぶつけて、
ほら!たんこぶが出来たんだ!」

「そうか、それは痛かったな。(笑)。
でも、そのたんこぶのお陰でな、
この街を守ることが出来たんだぞ!(笑)」

あの銀色のカバンは、
本当に爆弾だったのだ!
ある逃亡者が、
この街に迷い込み、
警察官に捕まる直前、
林の茂みに隠した物だった。

次の月曜日、
保育園には、
カメラを持つ多くの人が、
〈博多っ子〉の写真を撮る。

〈博多っ子〉は、
カメラマンのあまりのしつこさに、
こっそり家に帰ってしまう。

そして、
あの井戸へ来ると、

「〈博多っ子〉!」

「えっ?だぁ~れ?」

「ここだよ!ここ!」

「え~、どこ?」

「井戸の中をみてごらんよ!」

「うん!」

井戸をのぞくと、
とても小さい人形が動いている。
〈博多っ子〉と目が合うと、

「こんにちは!やっと見つけてくれたね!(笑)」

「君は?だぁ~れ?」

「ワタシかい?(笑)
ワタシは、〈ラブちゃん〉って言うんだよ!」

「もう一人は?」

「コレかい?
これは〈インド・ジィンカレー〉っていうんだ!」

「なんか変な名前だね!」

「君も〈博多っ子〉っていう
変な名前じゃないか!(笑)。」

「これはジィジが付けただけだ!
本当の名前じゃないよ!(怒)」

人間の女の人の格好をした〈ラブちゃん〉と
子犬の姿の〈インド・ジィンカレー〉が、
井戸の周りに〈博多っ子〉しかいないことを確認すると、
井戸からピョ~ンと飛び出した。

「はぁー!やっと外に出れたよ!(笑)」

「〈ラブちゃん〉井戸で何してたの?」

「君を待っていたんだよ!(笑)」

「へぇ?」

「〈博多っ子〉がこの家に生まれるように、
僕らは確認するためにここに来たんだ!」

「もし別の家に生まれていたら?」

「それはないよ!」

「どうして?」

「ほらっ!君も憶えているだろう?
生まれるときのこと。」

「火の中に落とされたこと?」

「そう!僕が君を火の中に落としたんだ!」

「へぇ~!(怒)何で?」

「そんなに怒らないで(笑)。
あれは決まりなんだ。それに、
火に見えたのは火じゃないんだよ!
人が生まれるときは、
あーして、火をくぐらせ、
男と女を分けるんだ!」

「何で?火で分けるの?」

「火は?」

「燃える!」

「そう燃えるだろう!
もし生まれるとき、
あるものが燃えて無くなると、
それは女の子になり、
あるものが燃えて無くならなければ、
それは男の子になるんだ!」

「じゃあ、僕のが燃えていたら?(涙)」

「大丈夫!君は男の子に生まれるように、
僕らが守ったんだよ!
その証拠がこの井戸だ!」

「井戸がどうしたの?」

「この井戸は、
宇宙の遠い国の〈博多っ子〉王国に繋がっているんだ!」

「どこにあるの?」

「それは・・・説明が面倒くさいから、
君が大人になってから話すよ!」

(イント・ジィンカレー)
「ワン!(笑)」

「君は〈博多っ子〉王国の王子様なんだけど、
どうしても、ほかの星で歌の修行したいって
言うから、この地球のこの街に生まれるように、
この井戸と〈博多っ子〉王国を繋いで、
ここに君を生まれさせたんだ!」

「僕、歌は好きじゃないよ!」

「いや!君は大きくなったら、
立派な歌手になるんだよ!」

「えぇ~恥ずかしいよ!」

「大丈夫!〈博多っ子〉王国が、
全面バックアップするから!」

「バッグ・・・ドロップ?
プロレス好きなの?」

「あぁー、こりゃダメだ!(苦笑)」

〈ラブちゃん〉と〈インド・ジィンカレー〉は、
急いで井戸に戻る。

(祖父)
「〈博多っ子〉!(笑)
元気にしてたか?(笑)ジィジだぞ!(涙)」

「うん!」


それから、十数年後、
本当に〈博多っ子〉は、
歌手になり、
まず九州人を魅了。
そして日本、世界、地球までも魅了させる。


(ラブちゃん)
「もう少しね!〈博多っ子〉王国に王子様が戻るのは!
みんな、喜ぶわね!(涙笑)」

(インド・ジィンカレー)
「そう言えば?
あの合言葉、王子様に教えたっけ?」

(ラブちゃん)
「あっ!いけない!ワタシとしたことが!
どうしよう、今から教えに行かないと・・・(焦)」

ラブちゃんは、
久しぶりに家に戻った王子様の2階の部屋へ、
ネグリジェの姿で、登った。

部屋へ窓の隙間から入ると、
突然、普通の人の大きさになり、
王子様の〈博多っ子〉の上に落ちる。

「うっ!くるし~い!」

(ラブちゃん)
「あっ!ごめんなさ~い!」

「誰?!(怒)」

(ラブちゃん)
「えっ!いや~・・・(もじもじ)」

「警察呼びますよ!
嫌なら早く出ていってください!(怒)」

(ラブちゃん)
「王子様!〈博多っ子〉王国の王子様!」

「はぁー?なんだよ!」

(ラブちゃん)
「ワタシ!ワタシですよ!
ラブちゃんとインド・ジィンカレー。
ほら?井戸の中の・・・」

「井戸?あっ!子供の時に見た小さいおっさん!」

(ラブちゃん)
「はぁー!(怒)ワタシはおっさんじゃあありません!
この格好を見てもわかる通り、
どう見てもお姉さんでしょう?(怒)」

「はぁはぁはぁ!怒るなよ!(笑)
冗談だよ!ちゃんと憶えてるよ!」

(ラブちゃん)
「も~う!冗談言ってる場合じゃないんですよ!
まったく~(怒)」

「で、どうした?」

(ラブちゃん)
「あっ!はい!(笑)
王子様に大切な合言葉を教えるのを忘れていました。」

「合言葉?」

(ラブちゃん)
「はい!王子様が〈博多っ子〉王国に
戻るための合言葉でございます。」

「まだ戻らないよ!」

(ラブちゃん)
「はい!まだまだ、
この地球でお勉強が残っております。
ですが、もし王子様の身に危険が及ぶとき、
一時的に〈博多っ子〉王国に避難するためにも、
合言葉を覚えなければなりません。」

そう話すと、
ラブちゃんとインド・ジィンカレーは、
ジェスチャーと合言葉を覚えるように、
何度も王子様に見せる。

王子様も真似るが、

「僕は金色のパンツがいい!」

(ラブちゃん)
「あっ、王子様、これはズボンでございます。」

「じゃあ、これは?」

(ラブちゃん)
「それがみどりのパンツであります。」

「どうしてみどりのパンツ?」

(ラブちゃん)
「それは、〈博多っ子〉王国の
王子様の制服だからです。
王子たるもの、緑を制止、緑にくるまれ、
緑を宿す!そう王国の法律にございます。」

「意味は?」

なぜ、地球に
〈博多っ子〉王国の王子様が生まれた理由は、
この地球がどんな宇宙の星よりも
緑という自然を残していたからである。
かつて〈博多っ子〉王国も地球のように、
緑と青色のきれいな星として、
宇宙新聞で話題だった。

だが、宇宙海賊により、
緑を奪われ、少しずつ茶色い星へと変化すると、
宇宙からもお荷物扱いされ、
大切にされなくなった。

〈博多っ子〉王子様は、
王国を救う救世主として、
地球の神様の協力のもと、
この井戸のある家(うち)に生まれたのである。

ちなみに、
地球の神様は、
インド・ジィンカレーと祖父だ。
インド・ジィンカレーは戌年に生まれたから、
犬の姿をしており、
祖父は、王子様が〈博多っ子〉王国を忘れないように、
わざと祖父の格好をして、
ずっとそばで守る役割を果たしてくれた。


さて、〈博多っ子〉王子様は、
合言葉を覚えることが出来たのだろうか?

合言葉は・・・
「ビー玉・めんこ・パチンコ・2B弾・銀玉鉄砲、
ふうたらぬるか生きかたのくさ、
どうしようもない俺たちばたんがくさ、
この歌を 愛すべきばかちんたちへ」


(制作日 2021.7.30(金))
※この物語は、フィクションです。
※最後の合言葉は、
CHAGE&ASKA『愛すべきばかちんたちへ』より

今日のお話は、
きのうまでの3日間の反動で、
笑える話を考えてみました。
目的も、また選曲もせず書き始め、
終わりにやっと今日の参考曲を思い付きました。

また、
このお話に出てくる登場人物や合言葉は、
CHAGE&ASKAコンサートツアー '02~'03
『THE LIVE』のオープニングフィルムを
参考にしています。

CHAGE&ASKAに詳しい方ならわかる!
そんな単語を使ってみました。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲は
CHAGE&ASKA
『愛すべきばかちんたちへ』
作詞作曲 チャゲ&飛鳥
☆収録アルバム
『黄昏の騎士』
(1982.2.14発売)

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