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【超ショートショート】(123)~抱きしめられたい、抱きしめる、愛の空で~☆MULTI MAX『愛の空で』☆

西に太陽、東に満月が浮かぶ暮れないの森で、
出会ってしまった2匹の動物がいる。

森の茂(しげ)みで遊ぶウサギの群れ。
それを大きな木の影でのぞくオオカミ1匹。

1匹のウサギのオスが茂みから抜け出した瞬間、
オオカミのメスが襲いかかった。

だが、タイミングがはずれて、
2匹は互いに至近距離で見つめ合う。

このとき、ふたりの間に愛が生まれた。


それからしばらくして、
別のオオカミがあのウサギたちを襲おうと、
狙いを定めていた。

子ウサギが一匹になったとき、
そのオオカミが襲いかかるが、
ウサギのオスを愛したオオカミのメスは、
身を呈(てい)して子ウサギを守った。

オオカミのメスは、
身体にたくさんのケガをしたものの、
ウサギたちの無事を確認すると、
嬉しそうに森へと帰っていった。


ケガを癒そうと森の水辺にやって来た
オオカミのメス。
その様子を心配してオオカミのメスを追ってきた
ウサギのオス。
2匹は、ここで初めての会話をした。

「大丈夫?」

「えぇ、私なら大丈夫です(笑)」

「あの~、どうして僕らを守ってくれたの?」

「守りたかったからです。」

「そう、ありがとう。(笑)」

ウサギのオスはお礼の代わりに、
オオカミのメスの傷を嘗(な)めてあげた。

するとオオカミのメスは、
嬉し涙をウサギのオスに見えないように流した。

ふたりは、愛し合うことは出来ないと、
互いにわかっているように、
そのささやかなふたりの時間を大切に過ごした。

翌日、
きのうウサギたちを襲ったオオカミのオスが、
オオカミのメスにプロポーズしてきた。
その求婚は力ずくで、オオカミのメスは、
またたくさんの傷を作っていく。

「止めてください!」

「ダメだ!お前もオオカミなら、
オオカミと一緒になるのがよいだろう」

「それはできません!止めてください!(涙)」

オオカミのオスは、結局、
オオカミのメスの繰り返される
拒絶の願いに、ついにあきらめた。

だが、オオカミのメスは、
二度と群れに戻ることを許さなかった。

オオカミのメスは、
本当のひとりぼっちになり、
森を歩いていると、
森をまもなく襲いそうな、
真っ黒い雨雲を見つける。
そして、
森の入り口で雨雲に気づかず遊ぶ
子ウサギたちを見つける。

この子ウサギたちは、
あのウサギのオスの子供たち。
ウサギのオスには家族があった。

オオカミのメスは、
近づいてくる雷雨と化した嵐から、
子ウサギを守ろうと、
傘のようになり、
子ウサギの上に覆(おお)い被(かぶ)さった。

嵐が去ると、
子ウサギが顔を出し、

「もう大丈夫だよ!(笑)」

そう話しながら、オオカミのメスを起こした。
オオカミのメスは全身ずぶ濡れになり、
冬の近づく、少し肌寒い夜に、
風邪を引いてしまう。

ウサギの家族は、
オオカミのメスの看病をしようと、
自分たちのごはんを食べるようにすすめるが、
オオカミは食べなかった。
「グゥ~グゥ~」とオオカミのメスのおなかは
鳴いているのに、何も食べなかった。

翌朝、
ウサギたちが見守るなかオオカミのメスは
息を引き取った。

オオカミのメスとウサギのオスが、
森の水辺で初めて話したあのとき、
こんな話をしていた。

「どうして、そんなに痩せているの?」

「もう何日も食べていないんですよ!」

「どうして?」

「あなたたちを
食べるわけにはいかないからです。」

「じゃあ、何か他の食べ物は?」

優しく心配してくれるウサギのオスの言葉に、
嬉しそうな笑みを浮かべて、
オオカミのメスはただ頷(うなず)いた。

そして、2匹は別れ際に、
こんな話をした。

「もし、私が死んだら、
抱きしめてくれませんか?」

「でも、僕のほうが身体が小さいよ。」

「それでもいいのです。
あなたに抱きしめてもらいたいのです。
私が死んでからなら、
あなたの奥さんを悲しませることなく、
抱きしめてもらうことが出来ると思って。」

「・・・う、うん!わかったよ」

「ありがとう(笑)。
そのお礼に私はあなたの家族を抱きしめますね!」

「どうやって?」

「それは・・・(笑)」


オオカミのメスが死んだその身体を
ウサギのオスは、
涙をこぼしながらオオカミの頭を抱きしめた。
そして、
子ウサギたちは、
腕や脚に抱きついて泣いていた。

東から昇る太陽の光が
オオカミのメスの身体を包み始める。

すると、
オオカミのメスの身体が空へと昇っていく。
そして、
白い雲がオオカミのメスの身体を隠すと、
「パンっ!」と弾ける音がした。

ウサギたちの頭の上から、
キラキラした小さな星屑が降り、
ウサギのいる空と森を星屑が覆(おお)い、
巨大なドームのような部屋を作った。

このオオカミが作った部屋には、
ウサギを襲うオオカミなどは誰も入れなかった。

ウサギのオスの家族たちは
オオカミのメスの愛の空の下で、
いつまでも、いつまでも、
平穏な毎日を過ごした。


(制作日 2021.10.4(月))
※この物語はフィクションです。

今日は、
明日が記念日となります、
CHAGEさん率いるスペシャルバンド
MULTI MAX(マルチ・マックス)の曲、
『愛の空で』を参考にお話を考えてみました。

ウサギとオオカミは歌詞からもらって、
この2匹の種を越えた恋愛を書いてみました。 

マルチマックスの曲の中でも人気の名曲です。
ぜひ聴いてみてください。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
MULTI MAX
『愛の空で』
作詞 CHAGE・澤地隆
作曲 CHAGE・村上啓介
(1994.10.5発売)
☆収録アルバム
MULTI MAX
『Well,Well,Well』
(1994.11.16発売)

YouTube
【Chage Official Channel】
『愛の空で』Music Video(ショートバージョン)
https://m.youtube.com/watch?v=rA6jAFqKdro



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