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【超ショートショート】(79)~スクランブル交差点が見つめる縁の行方~☆アルバム『SCENE』☆

東京なのに緑豊かな山に近い街で出会ったふたり。

同じ小学校に入ると、
6年間同じクラス。
そのまま同じ中学校に入ると、
3年間同じクラス。
また、そのまま偶然に同じ高校に入ると、
3年間同じクラス。

またまた、偶然に同じ大学に入ると、
同じサークル。

男は、雨水健三。
女は、平野なおみ。

このふたり自身、
出会った頃に、
まさか恋をするふたりになるなんて、
予想もしていなかった。

ふたりは、
常に同じクラスで一緒のようだったが、
互いを恋愛対象と見ておらず、
それぞれ最初の恋人から、幾人かと、
恋愛経験を積んでいた。

大学2年の時、
なおみが健三を呼び出し相談。

なおみの今の彼には、妻子がいて、
でもなおみはその男が話した
「妻とは別れるから待っていてくれ。」
この言葉を信じて、
半年間も付き合いを続けてきたという。

そして、先日、
妻が妊娠していることを聞かされ、
「別れたい」
というお願いをされたと。

ちあきは、男に裏切られた思いで、
悔しくて悲しくて、
毎日のように泣いたような
腫れた瞳で健三に助けを求めた。

「まぁ、いい経験したと思えるまで、
泣いてもいいんじゃないか。
それに、そんなダメ男と別れて良かったじゃないか。
いつかそう思えるときが来るさ。」

それから1ヶ月。
あの涙が嘘のように、
いつもの明るさを取り戻したちあき。

健三が安心すると、

「私、新しい彼氏ができたの!」

ちあきの突然の告白に、
またその恋の行方を心配した。

ちあきの夏休みだけの恋ははかなく散った。

健三は、
高校時代からの同級生と交際中。
この恋のキューピッドはちあき。

健三はおそらく知らない、
女のバトルがあった。

ちあきが健三に恋をしたのは、
小学一年生。

同じクラスで、一度目の席替えで、
ふたりは隣どおしになる。

その時、
ちあきは健三の優しさに触れ、
好きになってしまう。
この時、健三がした優しさは、
ただ消しゴムを拾うことや、
教科書を忘れたら見せてあげること、
掃除を手伝ってあげることくらいだった。

だが、健三はちあきの思いには気づかず、
誰にでも優しくできる子供だった。
そのため、案の定、女子にはモテる。

その度にちあきは、
ライバル心メラメラの女子たちに、
毎日困ってしまう。

それが中学まで続き、
結局、高校に入ると、
ちあきの恋は自然と終止符を付けた。

ちあきと健三は、高校生の頃、
ダブルデートの場所として、
渋谷のスクランブル交差点を目指した。


1月の成人式の日。
中学の同窓会が開かれた。
ちあきも健三も参加すると、
お節介な女子が、
健三に余計なことを話してしまう。

「ちあきは、健三のことが好きなのよ!」

人生で初めて飲むお酒の力とは、
やや恐ろしいものである。

「ちあきはね、ずっ~と健三のことが好きなのよ!
今の健三の彼女がちあきに意地悪して、
ちあきはそれで健三を諦めたのよ!
でも、あの娘は今も健三が好きよ!」

健三は、話し半分に聞いた。

同窓会の帰り、
ちあきと健三は一緒に帰った。

「ちあき。あの~」

健三は、ちあきの気持ちを聞けないまま、
ちあきの家の前まで来た。

「じゃあまた。」

大学3年になると、ふたりが会うことが減った。
スレ違いで会う程度になり、
会話もしなくなっていく。

それから、ふたりは、
それぞれ別の会社に就職。

健三は、彼女の願いを叶えるために、
結婚を考え出す。

そんな頃だった。
梅雨の長雨降る蒸し暑い日。
仕事で外回りを終え、
渋谷のスクランブル交差点を渡って
駅へ向かおうとしていた健三。

信号待ちに歩いて来た一人の女性。
健三が声を書けようとした次の瞬間、
健三よりも20歳くらい年上の男が、
その女性に傘を掛けた。

女性はそれを嬉しそうに、
男性を微笑むように見つめ、
人混みを気にせずキスを交わした。

健三は、ただ立ち尽くすしかなかった。

それから、健三は、
友人に相談する。

「健三には悪いけど、みんな知ってるよ!」

あの女性は健三の彼女。
それで、健三だけが知らない事実は、
あの男と付き合い出したのは、
健三と交際スタートして間もない頃。

あの男には、恋人がいて、
今はその人と結婚して子どももいるという。
それでもいいからと、
彼女は友達の助言を無視して、
付き合いを続けているという。

それから、
健三は、彼女と1ヶ月ぶりにあった。

そして、見たこと、聞いたことを全て話すと、

「あの娘にだけは負けたくなかった。」

ちあきから健三を奪うことが目的で、
本当の意味で健三を好きでいたわけではなかったと、
健三は腸から煮えくり返る怒りを、
人生で初めて味わいながら、
冷静さを装い続けた。

「別れよう。いや、別れたい」

健三と彼女の別れはあっさりしていた。

ちあきは、
結婚したばかりの友達の家に行くと、
健三と彼女の話を聞いた。

実は、健三と同様に、
友達みんなが健三の彼女がしている事実を、
ちあきにも隠していた。

「で、今、健三は?」

メール、そして電話をするが、
健三の反応はない。
心配したちあきは、健三の実家を訪ねた。

健三は元気に仕事をしているが、
母親でさえ連絡がつかない時あると、
教えてもらった。


渋谷のスクランブル交差点が、
冬のコート姿の人であふれる12月。

ちあきは、
久しぶりに渋谷で買い物を楽しんでいた。

目的のCDを買って駅に戻るため信号待ち。

青信号になると、
少しずつ見覚えのある人に気づく。

「健三!」

ちあきは一か八かでその人に声を掛けた。

「お~、ちあき?」

スクランブル交差点の真ん中で、
時を止めて見つめ合うふたりは、
点滅信号に右往左往。

健三はとっさに、
ちあきの手を握り走り出し、
なんとか赤信号までに交差点を渡った。


それから10年の月日が流れた。
ちあきは久しぶりに渋谷に買い物に来た。
彼女の両方の手には、
左に夢を、右にはるかを、
握り、スクランブル交差点を渡った。

「あっ!お父さ~ん!」

「お母さん、あそこにお父さんがいるよ!」

ちあきの右からはるかが離れると、
健三がはるかを高く抱き上げた。

そのまま家族は4人で、
子供たちが楽しみにしている
映画を見に行った。


(制作日 2021.8.21(土))
※この物語は、フィクションです。

今日は、
1988年8月21日発売
ASKAソロファーストアルバム『SCENE』
発売から今日で「33周年」。

このアルバム全10曲を参考に考えたお話。

アルバム『SCENE』の中のラブストーリーが、
ややせつないので、
そして大人な恋なので、
そのように書いてみました。

生きていればいろんな人がいて、
いろんな恋模様があるのでしょうが、
なるべくなら、
まっすぐな恋をしていたいと、
思ってしまいます。

騙し騙されるなら、
騙される側でいいし、
誰かを傷つけるなら、
自分が傷つく方がよいと、
私は思います。

それは、ただ負けをよしとするのではなくて、
よく人生訓のように言われる
「人にしたことは返ってくる。」
これを恐れてのことです。

だから、一見すると負ける今があっても、
なるべく良いことをして、
未来にその良いことが返ることを信じている。

その方が、
心穏やかにいれるような気がします。

YouTube
【ASKA Official Channel】
☆『SCENE』リミックス盤発売の告知映像☆
https://m.youtube.com/watch?v=ptAhD3BkvHI
☆こちらは、リミックス盤のインタビュー映像☆
https://m.youtube.com/watch?v=3mUGz0Tka0E

※リミックスバージョンの『SCENE』は、
現在も発売中です!
ぜひ聴いてみてください。



(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
ASKA
『SCENE』
作詞作曲 ASKA
編曲 十川知司
☆収録アルバム
ASKA
『SCENE』
(1988.8.21発売)

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