見出し画像

【超ショートショート】(191)~決して言ってはいけない言葉~

決して言ってはいけない言葉がある。

もし、

その言葉を言われた者がいたならば、

必ず、

その者の未来に、

幸せは訪れることはない。

2999年12月31日、

ノーテンキナアダムの大予言が、

世界中を駆け巡り、

人々を混乱の渦へと落とした年の最期の日。

ノーテンキナアダムの大予言には、

この最期の日を乗り越え、

生き延びることができるのは、

あの決して言ってはいけない言葉を、

他人に言った者と書かれていた。

だが、

幸せは訪れないと知っている人々は

たとえ、

本当にこの日が人生最期の日となっても、

人を傷つけてまで生き残るという選択を

しなかった。

つまり、言われた者も言った者も、

どちらも生き残れたとしても

幸せになれないという矛盾が隠れていたのだ。

日付が変わる頃、

人々は互いに別れの儀式をし、

あの世に召されると信じて、

天に手を合わせてその時を待った。

夜中0時、除夜の鐘がなる。

手を合わせてその時を待った人々は、

互いの無事を確認し、

抱き合って喜びあった。

だが、

ふと一人、また一人、

姿が見えない者がいた。

2人の小学生の女の子たちが泣いている。

「どうしたの?」と尋ねると、

「お母さんが居ない!」と答えた。

近くでその話を聞いていた、

一人の小学生の祖母が、

奇妙なことを話した。

「除夜の鐘が鳴ったら、娘が消えた!」と。

なぜだろうと誰もが、

ノーテンキナアダムの大予言を思い出した。

「決して言ってはいけない言葉を

お母さんから聞いたことある?」

と尋ねると、

女の子も祖母も「うん」と頷いた。

「それはどんな言葉だったの?」

「学校で歌のテストがあって、

一人一人みんなの前で歌うの。

それをお母さんが恥ずかしいことって言ったの。」

誰もが感じた、

こんな程度が言ってはいけない言葉なのかと。

だが、

言ってはいけない言葉の持つ

本当に言ってはいけない理由を

その女の子が教えてくれた。

「お嬢ちゃんは、その言葉をお母さんに言われて

どう思ったの?」

「すごく哀しかった。

私も一緒にいた友達も歌うことが好きだから、

それが恥ずかしいって言われたみたいで、

哀しかった。」

「私も哀しかった。

私たちってお母さんにしてみたら、

恥ずかしい娘なのかな?」

母親にとっては自らの経験から

話した感想だったかもしれない。

でも、子供たちにとっては、

楽しみを奪われ、

自らの存在すら否定されたと、

小さな抜けないトゲを心に刻んでいるようだった。

元旦、

ノーテンキナアダムの大予言の真実と題された、

ネットニュースが速報で世界中に流れた。

決して言ってはいけない言葉は、

この世から多くの人々を奪った。

だが、

一つだけその消えた者を取り戻す方法がある。

それは、

決して言ってはいけない言葉を言われて、

心にトゲを刺された者が、

その苦しみを正直に

今は天にいる者に伝えること。

それがその者に伝わり、

心からの謝罪ができた者は、

この世に再び戻される。

母親を奪われた2人の女の子たちは、

すぐに天に手を合わせ祈り始めた。

翌日、

それぞれの女の子の家に、

それぞれの母親が帰って来た。

娘を苦しめたという大きな反省とともに。

ノーテンキナアダムの大予言の挿し絵の中に、

誰もが幸せになるように!

という祈りの言葉が描かれている。

人が人を言葉で傷つけていることを、

言葉を放つ者のほうが、

ほとんど気づいていない。

ノーテンキナアダムは、

その事を気づいてほしくて、

大予言と題して本を出版したと後に言われている。

ノーテンキナアダム自身、

普通の人間として扱われず、

親からも友達からも孤立し、

いつも存在を否定する意地悪な言葉を

浴びせられて生きてきた。

だが、

ノーテンキナアダムを唯一大切に見守る人がいた。

それが、

近所にある教会のお掃除のおばさん。

ノーテンキナアダムはマリアさまと読んで、

時に姉のように、

時に先生のように、

時に母親のように、

素直な心を見せていた。

「ノーテンキナアダム!あなたはね、

生けていいのよ!

あなたの好きなように!

あなたはあなたの幸せを見つけなさい!

幸せになりなさい!

そのために、

世界を見なさい!

世界中の人々を見れば、

あなたに意地悪な言葉を言う人の

心の狭さに気づくでしょう。

世界には、飢餓や病気、貧困に苦しむ人がいて、

子供たちは学校にも行けずに、

家族のために働いている。

ノーテンキナアダム!

本当は、あなたは幸せなのよ!

わかるかしら?」

ノーテンキナアダムは、

自分のことを否定しないマリアの言葉だけを

信じて、大人になった。

そして、

自身の苦しみを元に世界中を旅して、

言葉で苦しむ人が人々と会い、

世の中からそうした不幸をなくすために、

大予言を書いた。

3000年になると、

人々は、

決して言ってはいけない他人を否定する言葉を

言わないように生き始めた。

これから999年後の世界が、

幸せだけの言葉で溢れたいることを、

ノーテンキナアダムは信じた。

(制作日 2021.12.11(土))
※この物語は、フィクションです。

今日は、
文中にある親子の会話を、
外出途中に聞いたことがきっかけで
考えたお話です。

こうした親子以外にも、
嫌な言葉だと気づいて言う人がいて、
嫌な毎日になることもありますが、
それを越えるように、
広い世界の美しい努力や文化芸術音楽を
見て聴いて、
自分の心の器を広くすることが大切に思うように
最近なりました。

幸せを応援してくれる人と、
お友達になりたいものですね。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?