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【超ショートショート】(35)☆Love's A Cradle☆~愛のゆりかご~

日本から、
あるプロジェクトのリーダーに抜擢され、
海外赴任することになった女性がいる。

入社して、まだ5年、
あまりに大きな仕事に不安を抱いていた。

赴任先は韓国。

日本と変わらない顔立ちの人を見て安堵するも、
言葉が読めず分からず通じず、
到着の空港から、
すでにホームシックにかかってしまった。

赴任期間は約1年、
こんな調子で、彼女は大丈夫なのだろうか?


何とか、空港から電車に乗り、
ソウルに到着。
会社が用意したマンションを探していた。

マンションまでは、
バスを利用するように、
教えてもらっていたが、
そのバスもバス停も、
たくさんあって迷っていた。

ようやくバスを見つけるも、
発車あと1分のところで、
通行人の男性とぶつかり転倒。

散乱する荷物を拾い集めている時に、
バスが発車してしまう。
そして、
通行人の男性が、
どうやら怒っている。
でも、
何を話しているかわからない。
とりあえず謝り続けた。

彼女が頭を下げていた時、
デニムに白シャツの男性が、
通行人の男性と話している。
しばらくして、
通行人の男性は、
諦めたような表情で、
その場を立ち去ってくれた。

彼女は、
助けてくれたデニムに白シャツの男性に、
お礼を言った。

「謝謝(笑)」

「謝謝?
여기는 한국이야!(ここは韓国だよ!)(笑)」

「・・ヨギヌン ハングリア?(困)」

「This is Korea!(笑)」

「あぁ~コリア(笑)
コリアで、“ありがとう”って何て言うの?(困)」

「Thank you in Korea,
say 감사합니다(カムサハムニダ)」

「あぁ~、カムサハムニダ~(笑)」

「ハッハッハッ(笑)」


助けてくれた彼の案内で、
目的のマンションまで来ることができた。

どうやら、
同じマンションの住民らしい。


それから、
韓国語も話せない私を、お休みごとに、
ソウルの街を案内しながら、
語学の勉強もしてくれた。


ある日、
仕事で韓国人と対立して、
ストレスを抱えて帰宅。
彼が食事に誘ってくれたが、
言葉が分からず、疲れもあって、
強く八つ当たりをしてしまった。

部屋もめちゃめちゃにしたまま睡眠。
翌朝、
きのうのことが夢のように、
キレイに片付いてたいた。


またある日、
彼女には、
子供の時に大きな火傷(やけど)をして、
腕に跡が残ってしまっている。
でも、彼女はむかしのことであり、
残っている傷跡も、
だいぶ薄くなったと、気にせず、
夏には、
肩を出したファッションをしていた。

彼女が街を歩くと、
その傷跡に気づいた人が、
コソコソと彼女を見ながら話をすると、
彼はいつも、傷跡のある左側へまわり、
通行人に傷跡が見えないように隠してくれる。


またある日、
彼女の好きなアーティストのライブ映像が、
日本で発売されたとき、
韓国では、購入出来ないからと、
わざわざ日本の韓国の友だちに頼んで、
届けてもらったり。


またある日、
彼女は仕事で悩むと、
最初の頃のように、
部屋をめちゃくちゃにしなくなった分、
お酒に頼るようになった。
彼が彼女のお酒の量が増えたのに気づくと、
いつも、二日酔いのお薬と、
二日酔いに効く食べ物や飲み物やサプリなど、
彼女の部屋にコレクションのように並べる。


またある日、
お酒の力では、助け切れない時は、
一晩中そばにいてあげる。


でも、ある晴れの日、
彼が彼女から離れる事になった。
なぜ離れなきゃいけないのか?
彼女はその文化の違いを
なかなか受け入れることが出来ずに、
とうとうお別れの日を迎えた。

「반드시 데리러 오기 때문에 일본에
돌아가서도 기다려 줄래?」
(必ず迎えに来るから、
日本に帰っても待っててくれる?)


それから、約2年、
韓国での仕事が延長になり、
また、
ほかのプロジェクトリーダーを任された彼女は、
すっかり韓国語もマスターして、
今もあのマンションで暮らしていた。

彼女が仕事を終え、
ソウルの彼と出会ったあのバス停、
少し小雨が降ってきた。
バスが到着し、急いで乗り込む時、
赤い傘が彼女の前に現れた。

あっけに取られるうちに、
バスが発車してしまった。

赤い傘を彼女がのぞき込むと、
短髪の少し痩せて、
小麦色した肌の
デニムに白シャツの彼が立っていた。


手には白いマッコリとチキンの唐揚げ、
そして、
彼の好きなショートケーキと、
彼女のための二日酔いと
胃もたれ用のサプリを、
嬉しそうに持っていた。

「기다리게!」
(お待たせ!)

(制作日 2021.7.8(木))
※この物語はフィクションです。

今日は、
1996年7月8日、
英国ほかヨーロッパで発売された、
CHAGE&ASKAコンピレーションアルバム
『ONE VOICE』
発売から今日で「25周年」になります。

それを記念して、
収録曲『Love's A Cradle』
原曲は、CHAGE&ASKA『天気予報の恋人』
を参考に書いてみました。

原曲の『天気予報の恋人』とは、
歌詞のストーリーが違う。

この『Love's A Cradle』に登場する女性は、
少しわがままな所がありますが、
それをやさしく支える男性がいつもいてくれる。

その男性のやさしさは、
まるでゆりかごのように、
彼女の毎日こぼれ落ちそうな心を、
そっと助けてくれる。

愛の形には色々ありますが、
女性は、どこかで、
守られたい願望のような、
やさしい見守りを求めているような気がします。

子どもの頃、
頭を撫でられることが嬉しかったりしますが、
大人になっても女性は、
好きな人に頭を撫でられたいと思うもの。

お仕事で、
男性に負けずに強さを装う。
それを癒すのも、
また女の子に戻してあげるのも、
時には大切に思います。
それが出来るのは、
ゆりかごのような
やさしい愛を持つ人なんじゃないかと思います。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~~​

参考にした曲は
キャシー・デニス(Cathy Dennis)
『Love's A Cradle』
原曲/CHAGE&ASKA『天気予報の恋人』
☆収録アルバム
『ONE VOICE』
(1996.7.8発売)
~~~~~~~
(歌詞の一部・訳詞)

わたしを守って明るい気分にさせてくれる人
どんなことがあってもわたしの力になってくれる人
長い夜は一晩中ぴったりくっついていられて
最後まで大事にいつくしめる人


何をしていても どこを向いても あなたを感じるの
愛のゆりかごが
わたしの落ちるのを受け止めてくれる
(あなたは絶対受け止めてくれるわ)

あなたはわたしの気持ちを見通せる
お願い もう2度とわたしを離さないで


わたしの中の狂気を分かってくれる人
わたしの信じることにあれこれ言わない人

わたしが何も言わずに苦しんでいることを
見抜いてくれる人
気分をひきたて楽しくさせてくれる人
灰色の空で雲が泣いているとき
雨の中からわたしを連れ出してくれる人

こんなことを思い描いていれば
すばらしい日が訪れるはずよ

(対訳:大野れい)

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