【超ショートショート】(128)~雨の向こう、土曜のふたり~☆CHAGE&ASKA『no no darlin'』☆
窓辺に映るふたり。
日曜の朝、とっても嬉しそうに、
一緒に朝食を食べている。
ふたりがこの家に住んで、
もう3年になるだろうか。
近所のどこから見ても、
誰が見ても、
ラブラブにしか見えないふたり。
いつも窓辺に映るふたりを見ていると、
誰もが幸せのお裾分けをもらうかのように、
穏やかな気持ちが広がっていく。
月曜の朝、
大きなスーツケースを転がす夫(ひと)。
(近所の人)
「おはようございます!どうしたの?
そんな大きなスーツケース持って、出張?」
(夫)
「はい!1泊2日の出張です。」
(近所の人)
「1泊、奥さん寂しくならないかしら?」
(夫)
「えぇ、でも1泊ですから。(笑)」
火曜の午後、
夫からメールが届く。
~~~~~
ごめん!
今日もこっちに泊まることになった。
向こうの会社の偉いさんが、
明日にならないと、
こっちに戻って来ないってさ。
だから、こっちにもう1泊することになった。
ごめんな。
今日、プロポーズ記念日だったのにさ。
~~~~~
火曜の夜、
届いたばかりの
大きなデコレーションケーキを眺めて、
妻が添えた手紙を読んだ。
~~~~~
あの日のプロポーズから、
今日で3年。
あの時の約束、憶えてる?
僕が、
「記念日には君に君が好きな花束を送る。
いつも、毎日は、
〈ありがとう〉〈好きだよ〉〈愛してる〉
君の胸に溢(こぼ)すくらいに言うから、
だから、君は、
どんな僕になっても
《怒らず》《笑顔で》《許して》ください。」
って。
今日の夜は、
一緒に仲良くしませんか?❤️
~~~~~
水曜の夜、
冷蔵庫には、食べられた痕跡もない、
出来立てホヤホヤな顔をした
デコレーションケーキが大切にしまってあった。
(夫)
「どうしたんだよ!
ケーキ食べて良かったのに(笑)」
(妻)
「・・・・・(怒)」
(夫)
「なぁ~、そんなに怒ることか?
仕事だったんだから、仕方がないだろう(苦笑)」
(妻)
「・・・・・(怒)」
夫は、妻のご機嫌を取ろうと、
1泊余計にすることになった仕事の話をしたり、
帰りの新幹線で見つけた可愛い子供の話をしたり、
今度一緒に旅行に行こって話をしたり。
でも、
妻は無言のまま、
夫の荷物を片付け、夕食を作り、片付け、
洗い物をし、翌朝の支度をして、
お風呂に入ると、
自分の部屋で眠ってしまう。
(夫)
「(妻の部屋のドアを叩く)トン!トン!
なぁ~、まだ怒ってるのか?
今日は一緒に寝ないか?話もあるし。」
木曜の朝、
夫が起床すると、
妻はすでに仕事に出掛けていた。
(夫)
「あいつ、今日は遅番のはずなのにな。(困)」
木曜の深夜、
妻が帰宅すると、
玄関に夫が待っていた。
(夫)
「お帰り」
(妻)
「・・・・・(怒)」
夫は妻へのお詫びに、
妻がその日にする家事をすべて終わらせていた。
(夫)
「夕飯も作ったんだ!
お前が美味しいって言ってくれたカレーをさ、
作ってみたんだけど(苦笑)」
(妻)
「・・・・・」
妻はそのままお風呂に入る。
(夫)
「やっぱりダメか!今回は相当怒ってるな。」
夫には、
妻がこんな怒る理由に心当たりがあった。
今年の夫の誕生日。
妻はだいぶ前から楽しみに準備していた。
そして、
夫の誕生日の夫のスケジュールも
予約していた。
だが、
その誕生日の日に上司からの命令で、
お姉ちゃんのいるお店へ接待することになった。
妻も仕事なら仕方がないと怒らなかったが、
誕生日の翌朝の土曜、
妻が夫のスーツや荷物を片付けていると、
一枚のストロボ写真と、
その写真の裏にあったメッセージを
見つけてしまう。
~~~~~
きのうはとっても楽しかったです。
また、お店に来てください!
たくさんサービスしますから❤️
でも、ワタシ、
お店の外ででも会いたいです❤️
◯◯より
~~~~~
妻は、そのメッセージを読み終えると、
裏返して写真を見た。
夫と深く腕組みして
どこぞのお姉ちゃんなんて
どうでもいいお姉ちゃんに、
夫は頬をキスされて、
リップのキスマークつけて、
酔って嬉しそうに笑っている。
そんな展開になってるなんて夢にも思わない、
下戸(げこ)な夫は、
きのうのことは何も憶えていなかった。
だから、自分は被害者だと訴えるが、
妻は許さなかった。
(夫)
「でも、これも俺の仕事だろう。」
(妻)
「仕事なら何してもいいの!(激怒)」
(夫)
「何って、ただの接待だろう。」
(妻)
「接待なんてどうでもいい!
あなた電話で残業で会社にいるって言ったのよ!
私に嘘ついたのよ!(怒)」
(夫)
「俺だって接待の話、お前に電話したときには、
知らなかった。」
(妻)
「じゃあ何で、せめてメールしてくれなかったの?
私は心配で会社まで夕飯を届けたのよ!
でも、あなたは接待に行きましたって、
部下の人から聞いたのよ。(涙)」
(夫)
「・・・・・(困)」
この時は、約1ヶ月もの間、
妻は夫と口をきかなかった。
毎日重苦しい時間が流れた。
どんなふうに仲直りしたのか?
それは、
季節にヒントがあった。
妻はクリスマスが好きだった。
ただクリスマスがあるというだけで、
秋から笑顔を増えるのだ。
だから夫はそんなクリスマスを利用して、
勇気を出して妻にデートを申し込んだ。
妻は仕方なく受けてくれたが、
内心ではとても喜んでいた。
金曜の朝、
妻が起床すると、
すでに夫は仕事に出掛けていた。
テーブルには、
夫が朝食に作るいつものメニューが
妻の分として用意されていた。
季節のサラダに、
妻の好みのしっかり焼いた卵焼きに、
少し焦がしたトースト2枚。
冷蔵庫には、
お手製のフルーツと野菜たっぷりの
緑色したスムージー。
金曜の昼、
夫から妻に、こんなお願いのメールが届く。
~~~~~
急で悪いけど、
今日これから、同僚のお見舞いに行くんだけど、
どんなお花が、今はいいのかな?
お前、花に詳しいだろう?
~~~~~
妻は、仕方なく、メールを返した。
~~~~~
何でもいいんじゃない!
お花屋さんに聞いてよ!
~~~~~
すると夫からまたメール。
~~~~~
じゃあ、お前の好きな花は何だ!
今の季節なら何がほしい?
~~~~~
またまた妻は仕方なく、
とりあえず好きな花を書いて返信した。
金曜の夜、
どこかで期待していた妻は、
夫が手ぶらで帰宅したのを見ると、
本気で怒ってしまった。
日々の鬱憤(うっぷん)や接待のときの嘘、
ただただ思い付くネガティブな思いや思い出を
夫にぶつけた。
妻は、この時、
「もうこれで終わりね!」
そう思い、家を出ようと考えていた。
だけど、
突然現れた台風で、
家の外に出るのは危険な金曜の深夜。
妻は仕方なく、家に留(とど)まった。
その時、夫は、
妻の様子から、
自分と別れようとしていると気づく。
夫はそんな健気な妻が好きだった。
まだ恋人の頃、
些細なことでケンカした。
その時、妻にほかの女が、
夫のことで「手を出すな!」って
いじめられたようだった。
その時、妻は、自分が彼女なのに、
彼女と公に出来ない孤独と、
夫の浮気を心配して、
もう心の我慢も限界と感じていた。
そんな頃に、
夫がデートに5分遅れたことがきっかけで、
その日、1日険悪な雰囲気のデートになった。
そして、人目も気にせずに、
妻がキレてしまう。
(夫の心の声)
「いつもあ~やって、
嫌われようとするんだよな!
もっと素直になればいいのに、
人見知りがすぎると、
頑固になるのかな。(笑)」
土曜の朝、
ふたりはお休みだった。
妻はまだ不機嫌だった。
だけど夫は、
そんな妻を見ていると、
笑顔がこぼれた。
妻は、そんな夫の笑顔を見つけると、
頬を膨らませて、怒って見せた。
土曜のお昼、
ふたりの共通の友達がぞろぞろと遊びに来た。
妻と一番仲のよい女友達が、
妻の不機嫌に気づいて、
一連の話を聞いた。
(女友達)
「夕べ、そんなにケンカしたの?」
(妻)
「うん(困)」
(女友達)
「でも、いつもそうだよね!(笑)
あんたのケンカはさ、
結局〈夫が好きです!〉
そう告白しているだけなんだよね!(笑)
もう自分でも分かってるんでしょう?」
(妻)
「うん。(苦笑)」
(女友達)
「ほら!見てごらん!
ケンカしてる割には、あなたの旦那さん、
とっても嬉しそうよ!(笑)」
(妻)
「うん。(笑)」
(女友達)
「じゃあ、早く仲直りしなね!(笑)」
友達たちは、
夕方になると女友達に急(せ)かされて、
帰って行った。
ふたりは、一緒に片付けをすると、
こんな展開に・・・。
(夫)
「ごめんな!」
(妻)
「・・・・・(困)」
妻は、
自分の本当の気持ちが
どこにあるのかを考えていた。
(妻の心の声)
「怒れば怒るほど、
とっても悔しくて哀しい。
こんなに怒っていたら、
どんなに優しい夫でも、
いつかは自分のことを嫌いになっちゃうよ!(困)
でも、何でそんなに怒っているのかと思うと、
嫌いな人なら、離れればいい。
でも夫は嫌いな人じゃない、
嫌いになろうとしても、
ただ悔しくてムカつくだけで、
結局私は、夫が好きなのね!
自分でも怒らば怒るほど、
わざわざ夫に
《好きだ!》って告白しているみたい。
それがまた逆に悔しい!
だから、余計に素直になれないな!(笑)」
土曜の夜、
夫が妻の部屋に行くと、
妻が眠るベッドに入る。
そして、
妻は、それが嬉しくて、
勇気を出して、夫の胸に飛び込んでみた。
そんな妻の態度に夫も嬉しくなり、
鳥の羽を畳むように妻を
自分の胸の中に包み込んで、
大切にしまった。
翌朝の日曜、
夫が入れてくれたコーヒーを、
ふたりは幸せそうな笑顔を浮かべ、
見つめ会いながら飲んでいた。
次の土曜の朝、
夫が注文したプロポーズ記念日中に花束が届く。
ふたりは、それから、
窓辺の向こうの人を気にすることもなく、
いつもいつまでも
仲良くじゃれあったのである。
(制作日 2021.10.9(土))
※この物語はフィクションです。
今日は、
1991年10月10日発売 シングル
CHAGE&ASKA『no no darlin'』
発売からあすで「29周年」になります。
この曲の最初の歌詞に
~~~~~
土曜の夜はは 朝まで君を抱く
窓の外 過ぎていくら横流れで ふたり動かずに
~~~~~
これをヒントに、
記念日からは1日早い土曜日に、
お話を書いてみました。
(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/
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参考にした曲
CHAGE&ASKA
『no no darlin'』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 Jess Bailey・飛鳥涼
(1992.10.10発売)
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『GUYS』
(1992.11.7発売)
YouTube
【CHAGE&ASKA Official Channel】
☆『no no darlin'』Music Video ☆
https://m.youtube.com/watch?v=RAYaSSoFM4A
☆『no no darlin'』ライブ映像☆
https://m.youtube.com/watch?v=P9fLQ_54pu0