【超ショートショート】(114)~木漏れ日、謎の鼓笛隊現れる?!~☆ASKA『僕のwonderful world』☆
東京の東の地平線に、
恥ずかしそうに頭を出した太陽。
始発電車のスピードで夜の闇を西に追いやる。
そして、ある高さに太陽がやって来ると、
一瞬だけ赤色の夕景のような朝焼けを作る。
南にある大きな窓の部屋に、
朝の木漏(こも)れ日(び)が届き始める頃、
謎の鼓笛隊が木漏れ日の光に乗って行進してくる。
朝7時、目覚ましアラームが鳴ると、
謎の鼓笛隊は、自分の持ち場に散る。
朝7時15分、2度目の目覚ましアラームが鳴ると、
やっと起床する、1人の男の人。
男の人が眠い目をかいてから、
「うぅ~ん!」とベッドの上で
両手を上げて背伸びをする。
すると、ファンファーレのような音楽が、
空耳の音量で聴こえる?
そんな気がする。
男の人は、起きると、
洗面台に向かい顔を洗おうと水道の蛇口を開ける。
すると、流れ落ちる水の音の中から、
何やら音楽が聴こえる?
男の人は、その水の音を気にしてみたが、
気のせいだろうと、今度は髭を剃りはじめる。
電動髭剃りの音の中から、
再び何やら音楽が聴こえる?
スイッチを切っては入れ、
切っては入れを繰り返すが、
音楽が聴こえるのは、髭剃り中のみ。
いつもなら「ジャリジャリ」という音がするのに、
今日はサーティワンの
ポッピングシャワーのように、
髭が剃れるたびに、何かが弾けるように、
「ポッ!ピン!ポッ!ピン!」と音楽が聴こえる?
男の人は音楽の正体もわからないまま、
タンスから新しいシャツを取り出し着る。
肌触りがヒヤッと感じると、
また不思議な音楽が「ザワザワザワザワ」と
鳥肌のように、全身を駆け上がるように聴こえる?
やっとこさ、身だしなみを整えた男の人は、
キッチンに来ると、
お気に入りのデロンギのコーヒーメーカーで、
コーヒーを作る。
コーヒーの香りがリビング中に広がると、
その香りの中から、また、
空耳のような音量の音楽が聴こえる?
コーヒーメーカーから入れたて熱々の
コーヒーカップを取り出し、
お気に入りのソファへ座ると、
ソファの空気が抜ける音の中に、
また空耳のような音量の音楽が聴こえる?
一口コーヒーを飲むと、
テレビのリモコンの電源を押す。
すると、
テレビに反射する木漏れ日の太陽の光が、
まるで光のリボンのようになり、
男の人の腕に絡まる。
その光のリボンを伝って、
謎の鼓笛隊が男の人の腕まで行進して来る。
「あっ!この曲だ!」
男の人が朝から空耳のような音量で
聴こえている音楽の正体を、
やっと発見する。
鼓笛隊が全員集合すること朝の8時だよ!
(謎の鼓笛隊のリーダー)
「今日は髪型がうまくいきませんでしたね?」
(男の人)
「なぜ?そんなこと知ってるの?」
(謎の鼓笛隊のリーダー)
「昨日、あなたは、長年の愛用していたくしを
壊してしまいましたね?」
(男の人)
「あぁ~、そうだけど。」
(謎の鼓笛隊のリーダー)
「今日、新しいくしの音色を
僕らも確かめたのですが、
何せ新品。まだまだ人見知り中ということもあり、
これからしばらくは髪型がうまくセットできる
保証はありません。」
(男の人)
「保証って?」
(謎の鼓笛隊の太鼓の男性)
「あの!太陽が!リーダー急ぎましょう!」
(謎の鼓笛隊のリーダー)
「よし!では、出発だ!
行~進~始め!」
謎の鼓笛隊のリーダーは、
男の人の質問に答えず、
そのまま、再び、
男の人の右手から光のリボンを行進して、
南の窓の木漏れ日の中へ消えて行く。
男の人が、自分の手に痒みを感じ、
蚊に刺されたと手をかいてみる。
すると、謎の鼓笛隊のフルートの女の子が、
男の人の左手の小指に、
小さな光のリボンを結わいて、
小さなリボンリングを作って見せる。
(謎の鼓笛隊のフルートの女の子)
「痛いの痛いの飛んで行け!」
(男の人)
「僕はどこも痛くないよ!」
(謎の鼓笛隊のフルートの女の子)
「おじちゃん!気づいてないの?」
(男の人)
「僕はまだおじちゃんじゃないよ!
何を気づくって言うんだい?」
(謎の鼓笛隊のフルートの女の子)
「ここケガしてるよ!でも、
もうお手当てしてあげたから大丈夫だよ!
治るまでこのリボン外しちゃダメよ!」
男の人は女の子が言う場所にキズがあるのか確認。
すると、どこかにぶつけたような、
アザとキズの跡がある。
男の人はそのケガをいつしたのか、
わからなかった。
謎の鼓笛隊のフルートの女の子は、
鼓笛隊の最後尾に入りるように、
リーダーに促されると、
急いで男の人の左手の小指の頭にキスをする。
(謎の鼓笛隊のフルートの女の子)
「これですぐ治るからね!(笑)」
バイバイと手を振りながら、
女の子は急いで鼓笛隊の最後尾に入り行進。
そのまま木漏れ日の中へと消えて行く。
(男の人)
「あの、あなたたちは、
また明日もここに来るのですか?」
(謎の鼓笛隊のリーダー)
「明日は来れません。雨が降りますから。
申し訳ない。では・・・」
男の人は、まだ寝ぼけているのだろうと思い、
そのままソファで二度寝。
お昼頃の11時に目をさますと、
コーヒーはすっかり冷めている。
「そうだ!」と、
先ほどの謎の鼓笛隊が夢だったと確かめるために、
自分の左手の小指を見てみる。
「あっ・・・あっる!」
謎の鼓笛隊のフルートの女の子が結わいてくれた
小さな光のリボンリングがそこにある。
「あれは夢じゃないんだ!」
男の人は、お昼に目覚めのコーヒーを、
またお気に入りのデロンギの
コーヒーメーカーで作る。
でも、もう空耳はしない。
そういえば太陽の木漏れ日は、
お昼にはなくなっている。
男の人はコーヒー片手に仕事部屋に。
「あの曲は何て言う曲かな?」
ふと男の人がピアノ譜面台に
小さな落書きを見つける。
~~~~~
あの曲をそのまま作ってみて!
それがあなたの新曲よ!
~~~~~
男の人はその落書きの意味もわからないまま、
とりあえず曲を制作。
盗作にならないかと心配したものの、
オリジナルをふんだんに施(ほどこ)し、
やっと男の人だけの曲が完成。
「どんなタイトルが良い?」
と考えていると、
突然、ラジオが流れ、
ルイ・アームストロングの
『What a wonderful world』
が流れてくる。
「あっ!これだ!」
と、ひらめいた男の人は、
自身の新曲をこう名付ける。
『僕のwonderful world』
僕の素晴らしい世界。
男の人にとっての素晴らしい世界は、
自身が作る曲が広がり、
人々が喜び口ずさむ世界。
「ブチッ!」
突然何かが切れる音がする。
男の人が左手に熱を感じ、見てみると、
謎の鼓笛隊のフルートの女の子が結わいてくれた
リボンリングが切れている。
そして、
その切れたリボンリングをよく見てみると、
ギターの弦。
男の人がそのギターの弦を拾うと、
まるでマシュマロの柔らかさで、
チョコレートの溶けかたで、
サラサラと男の人の
摘(つ)まんだ指から消えて行く。
「やっぱり、まだ寝ぼけてるのか僕は・・・」
そう思うと、再びお気に入りのソファに戻り、
三度寝をする。
すっかり夕景になる頃、
「ピンポーン!」
いつもの仲間が集まり、
新曲のレコーディングが始まる。
もちろん、この新曲が、
謎の鼓笛隊が教えてくれた曲だなんて、
男の人は誰にも言えないまま。
それからしばらくして、
朝焼けのような夕景のような
オレンジの空色を真似た
金の木星から来たというお花。
甘い香りを漂わせて咲いていると、
その香りの中から男の人が作った
新曲が街中に届けられる。
すると、その空耳を聴く者は、
笑顔になる者、踊る者、コーヒーを飲む者、
一緒に歌う者、そして、
謎の鼓笛隊のように演奏する者。
「ピッ!ピッ!ピッ!・・・・・」
と、いつもの目覚ましアラームが鳴っている。
男の人は、やっとこさ起床すると、
こんなメールが届いている。
~~~~~
おはようございます。
素敵な新曲ですね。
ところで、歌詞はいつ頃完成しますか?
レコーディングのスケジュールを
決めたいのですが、
返信のほど、忘れずに、
よろしくお願いいたします。
マネージャー
~~~~~
男の人は、
急いでリビングに向かうと、
今日の東京は雨だった。
「はあー、ダメか・・・・・」
(制作日 2021.9.25(土))
※この物語はフィクションです。
※謎の鼓笛隊は〈小人〉設定です。
今日は、
2020年9月25日配信された
ASKA『僕のwonderful world』
配信1周年を記念して、
この曲を参考にお話を書いてみました。
何かを制作する方は、
夢でも制作される、
そんな夢を見るというので、
その世界観で書いてみました。
(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/
~~~~~
参考にした曲
ASKA
『僕のwonderful world』
作詞作曲 ASKA
編曲 澤近泰輔
(2020.9.25配信)
YouTube
【ASKA Official Channel】
『僕のwonderful world』(Teaser)
https://m.youtube.com/watch?v=nGEDusVruqg
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