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【超ショートショート】(24)☆Code Name.1 Brother Sun☆~豪華客船BROTHER~
1年に一度、ある晴れた金曜日の朝に、
博多港に現れるという、
まぼろしの『豪華客船 BROTHER』
なぜ、まぼろしというのか?
それは、この船の持ち主に起因する。
1970年代、
世界的に有名になったあるマジシャンがいた。
彼の名前は、『マジシャン RBROTHER』
人々から親しみを込めて、
『BROTHER(ブラザー)』と呼ばれた。
BROTHERは、
もともと売れないマジシャンだった。
食うにもマジシャンだけでは食べられず、
仕方なく、いろんな仕事をしてみた。
そんな毎日のある夜、
BROTHERが働くBarへ、
とても有名な投資家がやって来た。
BROTHERのマジックを見に来たというので、
早速、披露すると、
「うちの豪華客船で、
君のマジックショーを開催してくれないか?」
という誘いを受けた。
もちろん、
プロのマジシャンとして雇いたいと。
BROTHERは、即答でOK!を出した翌日、
当時、世界的に有名な豪華客船
『From coast to coast』
に乗り込んだ。
連日のマジックショーも、
同じネタをしないことで、
次第に船内のほぼ全員をファンにした。
最初の乗船から26年後、
BROTHERは、
人々が驚くほどの富を手に入れていた。
だが、BROTHERは富には興味がなく、
彼が愛して止まなかったのは、
マジックだけだった。
BROTHERは、
世界的に有名なマジシャンになっても、
投資家と出会ったBarや最初に乗船した
豪華客船『From coast to coast』の劇場を、
とても大切に思っていた。
マジックは、
豪華さだけを見せるのではなく、
手さばきやその優雅さ、時々摩訶不思議な展開を、
身近で見ることが出来るのが醍醐味なんだと話す。
BROTHERは、
マジックショーのための劇場がほしくて、
それまで稼いだ富の1/4を使って、
この『豪華客船 BROTHER』を作ったのである。
内装は、
彼が愛する1970年代がモチーフになっていた。
1995年6月28日、
博多港から出航して、南に向かう海の上。
BROTHERは、
プール脇のベンチでくつろいでいた。
マジシャンの時はメイクで
素顔がわからないようになっているため、
今、プール脇のベンチに居るのが、
あの世界的に有名なマジシャンBROTHERだと、
誰も気づかない。
NATURALメイクの一人の女性が、
「Something There(そこに何か?)」
と話しかけてきた。
女性の指さす方に目をやると、
〈201号〉
と書かれたルームキーが落ちていた。
BROTHERは、女性にお礼を言うと、
そのルームキーを拾った。
それから数日後、
あのルームキーの女性が、
泣き顔で、〈201号〉の
BROTHERの部屋の前に立っていた。
BROTHERは、訳も聞かずに、
とりあえず人目に触れないように、
急いで女性を部屋へ入れた。
泣き止んだ所で、
理由を尋ねると、
彼との結婚について、
両親とケンカしてきたという。
「どうして両親は、
彼の良さをわかってくれないの?」
話を詳しく聞くつもりもなかったが、
女性が、止めどなく話すので、
事情のすべてを知ったBROTHER。
「NO PAIN NO GAINだよ!」
(女性)
「NO PAIN NO GAIN?」
「痛みなくして得るものなしって意味。」
(女性)
「・・・・・?」
女性の彼は、今、
プロのミュージシャンを目指しいるという。
だから、両親は、
まともな稼ぎも出来ない音楽家を、
うちの婿にすることを反対したのだ。
女性の家は、大企業を代々継いできた、
裕福なお家。
女性は一人っ子だったため、
跡継ぎとなる婿を、
両親は切望したのである。
でも、娘が連れて来たのは、
駆け出しの、まだ将来性も不明な
デビューもしていない
アマチュアのミュージシャンの卵。
どんなに娘が才能があると訴えても、
彼の音楽も聴こうとはしなかった。
BROTHERが、
「NO PAIN NO GAIN」と話したのは、
BROTHER自身にも同じ経験があったからだ。
BROTHERが、
下積みを始めたアパートの隣に、
BROTHERが唯一愛した彼女がいた。
彼女は、
昼間の決まった時間で働く会社員。
24時間365日、
休みなく働くBROTHERを彼女は見て、
ある日、訪ねて来た。
(彼女)
「おはようございます。」
「あっ・・・・おはよう。」
(彼女)
「あの・・・私、夜とか土日暇なので、
もし良かったら、お掃除とかお洗濯とか、
ゴミ捨てとかしましょうか?」
「えっ!あっ・・・大丈夫ですよ!
自分で出来ますから。」
(彼女)
「でも、あの~・・・(苦笑)」
「何?」
(彼女)
「ベランダ!」
「えっ?」
(彼女)
「汚い、ゴミだらけで(笑)」
「あっ、すみません。
捨てるの忘れてました。
ごめんなさい。(苦笑)」
(彼女)
「いや、
苦情を言いたくて来たのではないんですよ!
毎日、お仕事が大変そうだから、
お隣の好(よし)みとして、
お手伝いしたいと思いまして(笑)」
「あっ、でも、それじゃあ、
申し訳ないよ!(苦笑)」
(彼女)
「私、会社の友達に、
〈すごいマジシャンがいるのよ!〉って言われて、
あのBarに見に行ったんですよ!
あなたは、私の事には気づいてなかったけど。」
「・・・・・」
そんな話をされた翌日から、
BROTHERは合鍵を彼女に託し、
仕事に毎日奔走した。
BROTHERと彼女は、
自然と恋人となり、
未来の約束もしていた。
たまに出来るBROTHERのお休みの日は、
彼女の好きなミュージカルへ行く。
ある日のミュージカルは、
『めぐり逢い』というお話で、
もちろんLove Story。
紫陽花と向日葵が、この物語のキーになっていた。
紫陽花は花色が移ろいやすく、変化することから、
恋人の心変わりを暗示させ、
向日葵は、ただ一心に太陽に向いて咲くことから、
恋人の一途な想いを暗示した。
さて、
このミュージカルの結末は一体どうなったのか?
BROTHERの彼女も、
実は、良家の令嬢だった。
花嫁修業と社会科見学のつもりで、
両親から一人暮らしを許可されていたのである。
そんなある日、
BROTHERが仕事で家にいない時、
彼女がBROTHERの家から出てくると、
そこに両親がいた。
もう、想像できてしまうと思うが、
ルームキーの女性と同じ展開が起こり、
BROTHERの彼女は、
ほぼ強引に実家へ戻されたのである。
それから、
BROTHERの彼女は、
お見合いし結婚したそうだ。
BROTHERは、
ルームキーの女性に、
自分の経験を話し終わると、
こう話した。
(BROTHER)
「良いかい!
本当に彼を愛しているなら、
また、彼の才能を信じているなら、
心の底から応援しなさい!
あきらめてはいけないよ!
どんなに貧しくなっても、
どんなに芽がでなくても、
彼を信じ、愛し続けることができるかい?」
(女性)
「はい!」
(BROTHER)
「じゃあ、あとは簡単だ!
駆け落ちしちゃえば?(笑)」
(女性)
「・・・・・(苦笑)」
(BROTHER)
「はぁはぁはぁ(笑)。
冗談だよ!そうじゃなくてね(笑)。」
と話ながら、BROTHERは、
女性にもその彼にも、
自分を信じて、
結婚の夢を叶えてほしいと話す。
BROTHERは、
彼女が実家へ戻された時、
一度も迎えに行かず、逃げたと後悔していた。
自分のような売れないマジシャンに、
彼女をしあわせにしてやる術も、金も、
自信もないと、あきらめたのだ。
愛から逃げたのだ。
その事を今日の今日まで後悔し続けている。
また、明日も後悔し続けるだろう。
最後にBROTHERは、
結婚の夢を託したルームキーの女性に、
日本のミュージシャングループ〈HEART〉の
世界的にも話題となった名曲『can do now』の
CDをプレゼントした。
(BROTHER)
「挫(くじ)けそうな時に聴きなさい!」
BROTHERは、
女性を帰すと、マジックショーへ出掛ける。
大成功を本日も納めると、
BROTHERの彼女が好きだった
カルーアミルクを一口飲んでみる。
彼女が作ったいつもの鼻唄を、
BROTHERがギターで曲に完成させた
〈君の好きだった歌〉
BROTHERのこの部屋は〈201号〉
彼女の部屋番号と同じ。
窓の外に再び朝が来るまで、
BROTHERは、
ギターを弾き歌い、
そして遠くを眺めて、
また、窓の外を見るを繰り返した。
2000年のある日、
マジシャンBROTHERが作った、
豪華客船BROTHERは、
BROTHERが亡くなったために売却され、
船の名前も内装もすべて変えられてしまった。
つまり、もう『豪華客船BROTHER』は、
この世に存在しないのである。
だが、
1年に一度だけ、
ある晴れた金曜日の朝の博多港に現れるのである。
(制作日 2021.6.28(月))
※このお話はフィクションです。
今日のお話は、
1995年6月28日発売の
CHAGE&ASKAのアルバム
『Code Name.1 Brother Sun』
全13曲の曲タイトルを入れてみました。
少し無理がある部分もありますが、
お話よりも、
ぜひ、
このアルバムを聴いてほしいと思います。
今日で発売から「26周年」になりました。
(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/
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参考にしたアルバムは
CHAGE&ASKA
『Code Name.1 Brother Sun』
(1995.6.28発売)
①君の好きだった歌
作詞作曲 ASKA/編曲 十川知司
②Something There
作詞作曲 ASKA/編曲 ASKA・松本晃彦
英語詞 CHSRLE MIDNIGHT
https://m.youtube.com/watch?v=2cJtQ1dlbNU
③BROTHER
作詞作曲 ASKA/編曲 ASKA・十川知司
④201号
作詞作曲 ASKA/編曲 ASKA・西川進
⑤めぐり逢い
作詞作曲 ASKA/編曲 澤近泰輔
https://m.youtube.com/watch?v=s-IW5qpEU7M
⑥紫陽花と向日葵
作詞作曲 CHAGE/編曲 服部隆之
https://m.youtube.com/watch?v=JwspLKC2kro
⑦can do now
作詞作曲 ASKA/編曲 ASKA・十川知司
https://m.youtube.com/watch?v=2Ro4T4KKtkM
⑧ベンチ
作詞作曲 CHAGE/編曲 十川知司
⑨ある晴れた金曜日の朝
作詞作曲 ASKA/編曲 松本晃彦
⑩From coast to coast
作詞作曲 CHAGE/編曲 澤近泰輔
⑪NATURAL
作詞 ASKA/作曲 CHAGE・村上啓介
編曲 村上啓介
⑫NO PAIN NO GAIN
作詞作曲 ASKA/編曲 ASKA・澤近泰輔
⑬HEART
作詞作曲 ASKA/編曲 十川知司
https://m.youtube.com/watch?v=r585WXniqqI