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「解体士 切崎りんね」企画書

キャッチコピー:美しい建物は、美しく壊さないと

あらすじ:
その国は建築国家として知られ、その独創的な建築群の美しさ、構造力学を無視したビジュアルは他の国ではとても真似できなかった。この国に住む切崎りんね(16)の姉せつな(18)は建築士になる夢を追い求め、見事試験に合格。早速ビルの建築を任される。
しかし、そこにはある秘密が隠されていた。この国の建築物は魂を喰らう存在であり、その美しさは人々の命を奪う代償で成り立っていた。せつなが気付いた時には手遅れで、建築物に取り込まれ、その魂を喰われてしまう。
姉の死に悲しみに暮れたりんねは、姉の復讐を誓う。彼女は建築士ではなく解体士となり、この国にある建築群を一つずつ解体していくことを決意した。

第1話のストーリー:
日本のような日本でない美しい建築物が立ち並ぶ建築国家。人々はその建築群を称賛し、国は観光名所として栄えていた。

この国では建築士になることが最高の名誉であり、親子孫3代が栄えると言われている。多くの人が建築士になることを夢見ているが、その倍率は10000倍。その狭き門をくぐり抜けようと、切崎りんね(16)の姉せつな(18)は寝食も忘れ、勉学に励んでいる。せつなは、幼い頃から建築に魅了され、見るものを圧倒させる建築を設計する夢を追い求めていた。

一方のりんねは、保育士の夢を持っているが勉学が振るわず。ガソリンスタンドでアルバイトをし、不良仲間と遊び呆ける毎日。そのことを姉のせつなに問い詰められるもどこ吹く風。自分が姉のように夢に向かって努力する才能もないことに、りんねは劣等感を抱いていたのだ。

そんなある日、せつなが建築士試験に合格した知らせが届く。りんねも家族の喜びに混じり姉を祝福した。せつなの成功は家族の誇りであり、彼女自身も自分の姉が一流の建築士になったことを誇りに思っていた。しかし、せつなの成功はりんねの葛藤を増長させる。りんねは、せつなのように輝く未来を描ける自信が持てなかった。学校でも落ちこぼれ、アルバイトをして悪友と遊ぶだけの日々に今まで以上の焦りを抱く。

せつなは建築士として初めての仕事に挑み、新たな観光地にホテルを設計する機会を得た。そのビルは建築国家の誇りとなるであろうもので、せつなは自信に満ちていた。

ある晩、せつなは建設途中のホテルの奥深くに設計図には載っていない不気味な部屋を見つける。その部屋には、この世には存在しない異形の生命体が鎮座していた。生命体は、この国の建築物は魂を喰らう存在であり、その美しさは人々の命を奪う代償で成り立っていることをせつなに伝え、突如せつなの魂を喰らう。

せつなの夜食を届けるためホテルへやってきたりんねは、その一部始終を目撃してしまう。恐怖に怯えるりんねだが、せつなの魂を喰らったホテルが瞬く間に姿を変え、色彩鮮やかで凛とした姿にせつなを重ね、思わず息を呑んでしまう。

異形の生命体が、りんねの魂も喰らおうとした時、フロアに爆音が鳴り響く。それはホテルの壁を破壊する音だった。巨大ハンマーを持って現れた男は、間一髪のところでりんねを救助する。りんねに何者かを問われた男は、この国で最も蔑まれた職業、建築解体士であることを明かすのだった。


第2話以降のストーリー:
突如現れた解体士、打越みろく(以下、打越)はホテルを解体しようとするが、せつなの魂が取り込まれたホテルを解体させまいとりんねは必死に抵抗
する。りんねの抵抗をあしらう打越だが、りんねには本能レベルで的確に急所をつく才能があることに気づく。
解体士としての素質を秘めたりんねに打越は、一つの交換条件を出す。

「わかった。俺は姉ちゃんを解体しない。その代わり、お前解体士になれ」

突然の申し出に戸惑うりんね。
建築士とは真逆の存在である解体士。過酷な肉体労働、その日暮らせるかどうかの低賃金、そして何よりこの国のアイデンティと相反する存在。犯罪者が就く職業とまで噂されている。
その上、保育士になりたいりんねにとって解体士の職に就くことには抵抗がある。そして何より、自分の姉をダシに交換条件を出してくるその魂胆が気に食わず、りんねは申し出を拒否する。
そのとき、ホテルが大きく揺れる。

りんねが外を見ると幾人かの人間がホテルに食われている。その中には幼い子もいて今にも食われてしまいそうだ。
この混乱で忘れていたが警察に連絡することを思い出すりんね。
急いで警察に連絡するがまともに取り合ってくれない。さらに、この異常事態を拡散しようと動画をSNSにアップするも即座に消されてしまう。
何が起きているのかわからないりんねに打越は言う。この国において建築に関わる事件は無いことにされている、と。

そうしてついに、りんねの眼前で幼い子がホテルに食われてしまう。強いショックと憤り、自身の無力さに打ちひしがれるりんね。自分のような人間にも邪気なく接する子どもという存在がりんねは大好きだったのだ。

一瞬でもせつなのホテルを美しいと思った自分を呪い、もはやこのホテルはせつなの残骸であって、せつなではないことに気づく。
ぶっ壊す、と呟くりんねの言葉を聞き、ようやく理解してくれたかと巨大なハンマーを大きく降りあげる打越。その背中にりんねはドロップキックをかます。

「誰がてめぇみたいなバカハンマーに解体させるか!私が、私の手で、せつなを解体するんだろうが!」

ホテルを解体する覚悟を決めるりんね。
すると打越が作業着のポケットから取り出したのは、小さな鉄の塊のようなものだった。これを掌で持ち、意識を集中させると解体道具が具現化するのである。そうして、りんねの掌から生まれたのは、見るからに心許ない小型ドリルだった。

謎の生命体の攻撃を交わし、逃げ続けるりんね。進展しない展開に痺れを切らしかけた打越だったが、わずかにホテルが傾いていることに気づく。
りんねは、攻撃をかわすふりをしながら、このホテルの急所を見抜き、ピンポイントで穴を開けていたのだ。じわじわとりんねを追い詰める生命体が最後の攻撃で仕留めようとした瞬間、形勢が逆転する。一気にホテルが崩壊したのである。
やがて、ホテルの残骸から七色の光の筋が朝焼けの天に向かって伸びていく。おそらくあれは、せつなの魂なのだろうとりんねは思う。

りんねの背中に向かって打越は言う。

「普通、解体ってのはまあ建物が無くなりゃいいんだよ。だからガサツで手の速い人間が向いてるんだけど。お前の解体は、綺麗だな。煙一つない」

「姉ちゃんも嬉しいんじゃないか」

この事件を経て、りんねは解体士になる。二度とせつなのような存在を生み出さないために。そして、この建築国家に復讐するために。


世間では、このニュースは全く報じられなかった。観光地に建設予定だったホテルが崩壊したことも、幾人かの死傷者が出たことも、せつなが犠牲になったことも。

その後、りんねは復讐を原動力にいくつかの建築をたて続けに解体をしていく。
ある日、打越に呼び出され向かった先に広大な土地が広がっていた。この土地に新たなランドマークタワーが建てられるという。通称、真白の塔。究極の白をテーマにした建築。何万年経とうと色褪せることがない白。その建築を完成させるのに必要な犠牲者は推定100万人。罪のない人々がこの建築物のために文字通り人柱となる。その建築の最高責任者が超一級建築士の社まこと(以下、社)である。
さらに最近、政府は解体士たちによって国の秘密が次第に明るみにされていくことを警戒し始めている。

そのため打越は、解体士ギルドを組織しこれに対抗しようとしていた。りんねもギルドに誘われるが、その要請を断る。今は姉を失った家庭のフォローを最優先にしたかったのだ(家族は姉が失踪したと思っている)。

しかし、りんねが解体士になった噂が囁かれるようになり学校で居場所を失ってしまう。集合住宅中にもビラを撒かれ、姉を失った家庭に更なる精神的負荷がかかっていく。このままでは家族にも迷惑をかけてしまうと行き場を無くしたりんねは、失踪したせつなを探すと書き起きを残して家出をする。

屋根付きのバス停で目を覚ますと年の近いギャル(六道ろっか。以下、六道)が座っていた。六道は建築士であり、りんねのことも知ってると言う。

「りんねの解体、無駄がなくて超かわいい」

邪気のない性格でりんねに懐いてくる六道。次第に心が通じ合う2人。りんねは六道の家に泊めてもらい普通の高校生の生活を思い出す。
しかしある日、六道は自身で設計した建築に自ら喰われにいく。またしても目の前で大切な人を失うりんね。六道は喰われる直前に言う。

「自分の作品に喰われるなら本望だから!私が死んでも魂は一生生き続けるっていうか」

その言葉を受け、ただ建築士の建築物を解体しているだけの自分の存在意義を問い始めるりんね。自分のやっているのか正しいのかがわからなくなっていく。そして、建築士の魂を搾取する国家に対する憎悪もまた一段と増してゆく。
そこに突然解体士ギルドの一員である男が現れる。正義を盾に、六道の魂が入った建築を雑に壊し始める。その行為に憤怒するりんね。解体士の男をショベルカーで轢き倒す。
りんねは自身の破壊作業も建築士と合作の一つの作品と捉え、六道の建築を丁寧に解体する。
以後りんねは、自身の解体作業を復讐だけでなく建築士に対する敬意も込めた破壊行動と再定義し、今まで以上に綺麗に解体することをポリシーとする。

その後、行くあてのないりんねは解体士のギルドに所属し、真白の塔計画を阻止すべく、ギルドメンバーとともに解体作業に勤しむが、解体士たちの力及ばず、ついに真白の塔は完成してしまう。

たくさんの犠牲を払いながら塔の中枢部に潜り込むりんね。そこに鎮座していたのは超一級建築士の社である。

りんねが塔を解体しようとするも彼の特技、超高速建築によって、りんねの解体を上回るスピードで塔を建築し直していく。何度解体しようが、それを上回る速度で建築し直していく社。りんねの心は徐々に摩耗していく。

しかし、スピードでは敵わないが、りんねの真摯で丁寧な解体作業、その熱量に建築士たちの魂は動かされていき、やがて自ら崩壊することを望む。そうして塔は自ら解体し、七色の光が空一杯に舞い上がっていく。

真白の塔が崩壊し、その光景は国中に広がった。国民たちは初めて建築の闇に気づき、真実を知ることとなった。塔の崩壊は、建築国家の偽りの栄光が崩れ去る象徴でもあったのだ。

事件の真相が明るみに出ると同時に、建築国家は混乱に陥る。りんねは、新たな未来を切り開くため、魂を喰らわずとも美しい建物を作れる建築士になるために建築学を学び始める。


#週刊少年マガジン原作大賞


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