MANDARAの赤ワイン

20年前のわたしはスタンディングのライブハウスに行ったことがなかった。ホールコンサートは別にしても、当時は少しのお酒とごはんを楽しみながら聴くのがライブハウスだと思っていた。通っていたホームは南青山曼荼羅。お洒落な街にある品のよい箱だけど、メニューの高さにビビりながらささやかにオーダーしていたのでセレブとは程遠い女である。

コンサートホールにばかり通っていた人にとって、音楽を聴きながらお酒が飲めたり食事できる場所があるのは衝撃だった。そのころ、(信じられないことに)下戸だったわたしは飲み会の3000円がめちゃくちゃ損に思えていて、同じ3000円で音楽が聴けてしまうライブハウスという場所を知ってこれだって思った。そうだ、わたしがお酒を楽しめるのはこういう場所なんだって。

それから、文字通りバーに通う感覚で南青山に通い始めた。マンスリースケジュールを見てブッキングの編成と名前で行く日を選んでいた。当然、どこの誰だか知らない(わたしも知らない)アーティストのライブに同行してくれるような友達はいない。バーカンのスタッフとも横に座る人とも会話をせず、それでも十分に楽しかったんだと思う。

思い返せばいろいろ信じられないことばかりだけど、あの頃の出会いがあるから、いまのわたしがあるんだと思う。

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