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創作童話「キツネの勘違い」


村の裏山に、チャッカリ者のキツネとのんびり屋のタヌキがおりました。
性格は違いますが、2匹は仲良しでした。

 ある日、2匹がいつものように山で遊んでいると、
「わっ、キツネ君見て。山ブドウがあるよ」
 タヌキが叫ぶように言いました。
タヌキが指さした先には太い木の枝に山ブドウがからまって、
垂れ下がっています。
タヌキが短い足でピョンピョンしますが
届きそうで届きません。
「くやしいな~。あと少しなんだけどなあ・・・」
 タヌキは足をじたばたさせながら山ブドウを睨みつけています。
「タヌキ君、簡単だよ。肩車すればいいんだ」
「あ、そうか。さすがキツネ君だ」
 タヌキは手を叩いて、喜びました。
「じゃ、ぼくからね。君が肩車して」
 キツネがチャッカリと、言いました。
「うん、わかった」
 気の良いタヌキは、さっそくキツネを肩車して、
立ち上がりました。
「やあ、大きくて甘い、甘い・・・」
 キツネが口に入らないほどほおばるので、甘酸っぱいブドウの汁が、
肩車しているタヌキの顏や体に飛び散ります。
 タヌキのお腹はグーグー鳴りっぱなしです。
そのうち肩車に疲れて、足がブルブルしてきました。
「キツネ君、そろそろかわってよ」
「う、うん、わかった」
 キツネはしぶしぶ、下におりました。
「さあ、キツネ君、早く肩車して」
 タヌキは待ちきれなくて、ノロノロしているキツネにをせかしました。
「グフッ!食べ過ぎた。タヌキ君ごめん、少し休ませて」
 そういうと、なんとキツネは、その場にゴロンと横になったのです。
そしてそのまま、本当に寝てしまったのか、呼んでも目を開けません。
「キツネ君、起きないかなあ。お腹すいたな」
 タヌキはペチャンコのお腹と、キツネの寝顔と山ブドウを交互に見ながらつぶやきました。
 そこへ、おばあさんが通りかかりました。
「あれ、タヌキじゃないか。情けない顔してどうしたんだい?」
「あ、おばあさん。キツネくんがね・・・」
 話を聞いたおばあさんは、
「またキツネに、だまされたのかい」
 おばあさんは、呆れ顔で言いました。
「おまえは、ほんとに気が良すぎるんだよ。
うちに来るかい? おいしい物を作ってあげるよ」
 それを聞いたとたん、寝ていたはずのキツネがバネのように飛び起きて、「おばあさん、ぼくもお腹ペコペコ」
と、言うではありませんが。
「おまえはいつも・・・」
 言いかけたおばあさんは、
「仕方ないねえ。じゃおまえも一緒においで」
タヌキとキツネは喜んでついていきました。
「いいかい、おじいさんに見つからないように、庭で待っておいで。特にキツネはおじいさんの弁当をひっくりかえしたり、いたずらばかりしてるから、見つかるとただじゃすまないよ。それから台所には絶対来てはだめだよ」
 おばあさんは二匹にしっかり言い聞かせて家に入って行きました。
それきり、おばあさんは、出て来ません。
 キツネはとうとう待ち切れず、タヌキが止めるのも聞かず、
台所に様子を見に行きました。戸のすきまから中をのぞくと、おじいさんとおばあさんが何やら話していました。
キツネは耳をピンと伸ばして、聞き耳を立てました。
「ばあさんや、今日はキツネかい。昨日のたぬきも、うまかったがな」
 キツネは飛び上がるほどびっくりしました。
「おじいさん、今日はこっちの棒で力を入れて、打って下さいよ」
 おばあさんが太い棒を、おじいさんに渡しています。
キツネは、心臓が口から飛び出しそうで、思わず両手で口を押えました。
そしてそのまま、おばあさんんの家を飛び出して、一目散に山に逃げ帰りました。
「はーい、お待ちどうさま。たんとおあがり」
 ようやく、たぬきの前に、ごちそうが運ばれてきました。
「わーい、おいしそう。キツネ君の大好きなおあげさんだ。あれえ、キツネ君はどこに行ったのかな?」
「キツネのことはいいんだよ。おまえはゆっくりおたべ」
  おばあさんは、(ふふふ)と笑いながら、言いました。
  その頃、キツネは自分の巣穴に逃げ帰って少し落ち着きました。
すると、残してきたタヌキが心配になってきました。
「ああ、なんてことしたんだろう。あんな優しいタヌキ君を置いて、
逃げ帰って来るなんて。今頃、たぬき汁にされているかも知れない。
ああ、タヌキ君ごめんよー」
 キツネは、心から後悔してクオーンと声を振りしぼって鳴きました。
「おーい、キツネくーん、帰ってるの?」
 居るはずのない、たぬきの声が聞こえます。
「ヒエー、タヌキ君が化けて出た~」
  キツネは、穴の奥にへばりついて、頭を抱えて震えていました。
「何寝ぼけてるんだよ。お化けじゃないよ。
それより、どうして先に帰っちゃったの?」
キツネは、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、こわごわ聞きました。
「き、き、きみ、たぬき汁に、されたんじゃなかったの?」
「変な事いうなよ。優しいおばあさんたちが、そんなこと、するわけないだろう」
「だって、たぬきもうまいがキツネもうまいって、じいさんが言ってたぞ」「え? ああ、それって手打ちのうどんのことだよ。おばあさんたちが、おいしいきつねうどんを作ってくれたんだよ」
「なーんだ、ぼくはてっきり、棒でじいさんに、なぐり殺されるのかと思って」
 キツネは、風船の空気が抜けるようにフニャフニャとその場にへたり込みました。
「ほら、君の好きなアゲだよ。半分持って帰ってきたからお食べよ」
 キツネは、今まで食べたあげの中で、一番甘くておいしいと思いました。   気の良いたぬきは、キツネがおいしそうに食べる様子を、ニコニコ笑って見ていました。

終わり
長い文章を最後まで読んで下さって有難うございました。




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