インド人にとって、ヒンディー語を話すことはカッコ悪いのか?
今年に入ってから、ヒンディー語を勉強し始めました。といっても、まだまだ初心者で、昔に比べると記憶力も落ちてなかなか上達しませんが・・・
自分が学習する身になって気づいたことですが、実はインド人って、ヒンディー語をあまり話したがらないんだな、と感じることが多々あります。
もう少し正確に言うと、高等教育を受けていたり、都市部で暮らす若いインド人達は、ヒンディー語を話すことに対して、「恥ずかしい、カッコ悪い」と感じているように思います。
これは、私が経験したことですが
ホテルやレストランの従業員に、勇気を出して覚えたてのヒンディー語で話してみたけど、そっけなく英語で返事されてしまったり・・・
会社のインド人の同僚やタクシー運転手に、ヒンディー語で話してみると、ちょっと困ったような、戸惑ったような顔をされたり・・・
ヒンディー語を学習している人であれば、けっこう感じることではないかと思います。
おそらく、その人のヒンディー語レベルが上がっていくにつれて、より強く感じるはずです。
もちろん、「日本人がヒンディー語を勉強してる!」と喜んでくれて、笑顔でヒンディー語で応じてくれる人もたくさんいます。
ローカル色の強いゲストハウスやマーケットに行くと、逆にヒンディー語でしか意志疎通できない人もたくさんいます。
ただ、全員のインド人がそうではないのです。
まず、地理的観点から見ると、ヒンディー語はインドの公用語ですが、ヒンディー語圏というのはインド北部・中部といったほんの一部であり、基本的には地域によって使われる言語が違います。
例えば、ベンガル州へ行けばベンガル語、パンジャーブ州ならパンジャービー語、南へ行くとタミル語やテルグ語など、主要言語は20近くあります。
そのため、インド人同士でも言葉が通じないことは珍しいことではなく、実質的に英語が共通語としての役割を果たしています。
確かにヒンディー語を話せるインド人は多い。でも、全員が話せるわけではない、というのが、背景にあります。
そして、もう一つの大きな要因が、そもそもインドの人達にとって、ヒンディー語のイメージが、「カッコ悪い、ダサい」といったマイナスイメージであることです。
私はインド北部のデリー近辺の都市部に住んでいます。日系企業含め数多くの外国企業拠点が進出しており、まさにビジネスの都市です。
こういった都市部では、当然地方各地からのインド人も数多く働いているため、「ビジネス言語=英語」という概念が強いです。そのため、都市部に住んでいるインド人は英語を使うことに慣れていて、インド人同士でも英語を話すことは普通にあります。
英語は、ビジネスマンとして、一種のマナーなのです。
また、インドでは、高度な英語力が一種のステータスという風に考えられており、「英語を話せる=きちんとした教育を受けている」というイメージが強いです。
そのため、ヒンディー語に対して――特に若いインド人の間で傾向が強いと感じるのですが――教育レベルの低い人や田舎の人間が使うものだと、考えられているようです。
この点について、ヒンディー語学習者としての私は、けっこうジレンマを感じます。
自分としては、上達したいから対インド人ならどんどんヒンディー語で話したいけど・・・相手にとって、それは失礼になるのか? 不快な思いをさせてしまうのか?
考えた結果、ヒンディー語を話す時は相手を選ぶよう気をつけよう、という結論に至りました。
やっぱり、「お互いが気持ちよく意志疎通できること」がコミュニケーションの基本だと、私は思っています。ヒンディー語で話しかけて相手の気分を害してしまうことは、できるだけ避けたいです。
ただ、この話には続きがあって・・・
これだけ見ると、インド人はヒンディー語で話すことが嫌い、と言ってるように見えてしまうので、少し付け加え。
ああだこうだ書いてしまいましたが、ヒンディー語は、『最も庶民的な言語』だと私は思っています。
映画館へ行くと、英語のハリウッド映画よりも、ヒンディー語映画の方が、はるかにお客で賑わっている
インド人同士がビジネスの場で議論している時、最初は英語で話していたのに、熱が入るとヒンディー語でまくしたてる
田舎に行った時、私が片言のヒンディー語を話すのを聞くと、それまで無口だった地元の人達が急にたくさん話してくれるようになる
こういったことも私は経験しました。
やっぱり、まぎれもなく、ヒンディー語はインド人にとって、soul languageだと思いますし、庶民の人達にとって必要不可欠な言葉なんだ、と思わせてくれます。
これからも、(相手を選ぶ必要はあれど、)アグレッシブにヒンディー語を勉強しようと思います。