巳年、蛇の話
【巳年】
巳年「へびどし」の巳「み」は「始まる」「起こる」「定まる」などという意味です。その漢字は、冬眠から目覚め地上へ出る様子や、胎児の形を表しています。巳とは、蛇のことです。蛇の語源は「ハム」だとされています。ハムは、食べるという意味です。蛇が、小動物を丸呑む様子から、そう呼ばれました。ちなみに、和名では「ヘミ」です。
また、脱皮することから変身「ヘンミ」とも言います。それに語尾に、しっぽを意味する尾「び」が加わったのが「へび」という呼称です。蛇は「長虫」「這虫」などとも言います。マムシは、毒が強く危険なので「真の長虫」と呼ばれました。それが転訛して、マムシとなったとされています。
【象徴】
人は、死ねば、蛇になるという俗説があります。死者の魂が、蛇に乗り移りご先祖様になると考えたからです。蛇は、脱皮をするので、死と再生の象徴とされ、病気を治す力があると信じられました。脱皮は「身削ぎ」とも言い、それが禊「みそぎ」の語源になったとされています。
巳は「実」と発音が同じです。そのため、蛇も「実入りがいい」ものとされました。実とは、お金のことです。蛇の抜け殻は、財布に入れると、お金を使っても再生する縁起物とされました。また、蛇を見た日は、お金に縁があるとか、蛇の夢を見るとお金が儲かるなどとも言います。それらのことから、蛇は、お金と関連付けられ、財産の守護者とされました。
【水神】
蛇は、水辺や湿地に多く棲息しています。そのため、水神とされました。水神は、山神ともされています。なぜなら、山に水源があるからです。水は、川となって平地に流れてきます。川の曲がりくねった様子は、蛇に似ているとされました。そこから、蛇は、川の神ともされています。
川の神として、有名なのが弁財天です。弁財天は、白蛇の化身とされています。そのモデルは、インドの川の女神サラスヴァティです。弁財天は、よく水辺に祀られています。蛇との関連で、金運のご利益があるとされました。また、蛇の形は稲妻に似ています。そのため、雷神と同一視されました。雷神は、雨雲を集め、恵みの雨をもたらすので、農耕神ともされています。
【農耕】
雨は、人々に恩恵を与えるだけではありません。時に、川を氾濫させ、洪水を起こすからです。ただし、水が引いた後は、土壌が肥沃になります。農耕民族にとって、水をコントロールすることは、一大事でした。治水をすることは、大蛇退治にたとえられました。それを神話にしたのが、八岐大蛇伝説だとされています。「オロチ」とは、大きな蛇のことで「尾のある霊」や「愚かな知」という意味です。八岐大蛇を退治したスサノオも、蛇をトーテムとしています。その子孫が、日本を開拓した大国主命です。
蛇は、よく田を荒らすネズミを捕食します。そのため、稲作の守護神とされました。「アオダイショウ」青大将も、屋敷まわりや、米倉に住み着き、ネズミ捕食するので、家の主と呼ばれています。