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第十六回ヒマラヤなんちゃって句会                                                                     「ヒマラヤ地」発表!!

Twitter@himahira19で行っていた句会の結果発表の三日目です。

いつも同じようなこと言ってるような気がしますが、今回は本当に選句に苦労いたしました。ひーひー言ってました。
特に「ヒマラヤ地」!これもうホントみんな「ヒマラヤ天」ですって出したいくらいでした。がしかし、最終回も近いですしそんなトリッキーなこと今さらするわけにもいきませんのでどうにかカタつけました。
「ヒマラヤ苺」も数句ほぼ「ヒマラヤ地」と言える句もあったりして、ウンウンうなってる間に時間が過ぎ発表まで間もなくなってしまっていました。
いつも以上に乱文ですがもうすぐ最終回だし、お許しを。

今回予告通り、このはる紗耶様にも選んでいただいたので、ボクの感想文のあとご紹介しましょうね!


悩みぬいて決めました!!「ヒマラヤ地」はこの四句です!!


桜蕊降る喘息の予感する 青川紅藤子                    

ボクは幸いおもだったアレルギー、「喘息」の症状はありません。
花粉症も全然平気。ちょっと腰が痛みやすいかなという健康体です。
ですが所謂「喘息」持ちの方、アレルギー持ちの方をよく見かけます。
昔、友人グループでなんとかアレルギーだというヤツがいたのですが、別のヤツがそれはただの好き嫌いで甘えであるという持論を掲げ、アレルギー食品を巧みに隠した料理をみんなに内緒でこしらえて食べさせたところ、たちまちアレルギー持ちのヤツが咳き込みだして倒れ込んで救急車を呼んだという話がありまして、料理を作ったヤツはおろおろするだけでなにもせず、
アレルギーの出たヤツは無事に元気になったのですが、謝りもしないのでただただ縁を切ったという思い出があります。
「桜蕊降る」頃はもう桜も散ってのこった蕊が散ったらあとは葉桜になるだけとなります。そんななんともうっすら寂しい時期に作中主体は「喘息の予感」を感じているのです。
きっと季語と「喘息」に因果関係もないでしょう。蕊アレルギーって聞いたことありませんしね。
ただ「喘息」の実はおっかない壮絶な症状と、たくさんの桜がはらはらと散ってゆく光景も、「桜蕊」が「降る」という光景も、不謹慎ながら合うと思うのです。
そしてそれは「予感」であるという、なんとも危なげで切なく句が終わります。「桜蕊降る」あと、夏はすぐそこです。夏の何かにアレルギーがあるのでしょうか。夏を楽しみにする人も多い中、毎年不安をもって迎えている作中主体の胸中はいかに。
繊細で何故かどこか眩しい日差しも感じる一句でした。


朽ちゆくよ厚き囀り従えて このはる紗耶                                                


「ヒマラヤ苺」でゴーレムが目覚めるという句をいただきました。
その句もこの句も季語「囀り」でした。ゴーレムの句は「苺」に書かせていただいた通りですが、こちらの句は「朽ちてゆく」のです。
季語「囀り」とはすごい季語なんだなぁと思い知らされました。
どちらの句も、語順や措辞が巧みだからだと思うのですが、
ちゃんと「囀り」がけたたましく聞こえてくるのです。
兼題写真の建物(選句時建物についてなにも知識がない)や蔦、木々が爆発などではなく、ゆるやかに「朽ちゆく」中、他の音も聞こえてくるはずなのに、鳥の「囀り」だけが聞こえるんです。不思議ですよね。
まぁそう書いてあるんだからそう聞こえるんでしょと言われたらそれまでですけど、その「囀り」が、とても悲痛に聞こえるのです。
助けを求めるような、仲間の鳥を呼ぶような、住んでいた木々が朽ちるのを嘆いているような、抗議しているような。
そんな聞いたことのないような「厚き囀り」が。
「朽ちゆくよ」の「よ」の存在があるので、その様子を見届けている何者かの存在をにおわせます。「朽ちゆく」ことになにもできず見届けるしかない何者の姿が。その人物はどういう思いだったのでしょう。
決して笑ってはいないような気がします。


亡国のロボット兵の手にすみれ ノセミコ             


この句に似た発想の句が何句かある中選ばせていただきました。
それは何故かと聞かれたら、季語「すみれ」の存在でしょうか。
この記事を書いている時点でまだ見ていない皆さんの感想文をみれば、この句の発想の元の答えがわかりそうなのですが、ボクがこの句を拝見した時に感じたのは「ドラクエⅦ」のからくり兵でした。
詳細な説明は省きますが、完全な悪役のロボットの話でしたが、その中でもお手伝いロボットが、ロボットを作った博士の死後何十年後に至っても健気に毎食毎食スープを作り続けているエピソードを思い出しました。
ありがちな疑問ですけど、ロボットって悪者なのでしょうか?
ゴーレムやロボットも創った人間の言う事を聞くように作られていて、忠実に命令通り動いたのです。突然自我を持つという話もありますが、ロボットは基本的に命令を聞く道具なのです。
この句ではロボットを作った国は滅んでしまいました。
きっとこの国の学者たちは、ヒトにやさしくしなさいとロボットにプログラムしたのかもしれません。そして何百年後何も知らない作中主体が、国の跡地へ訪れた時、ロボットが何かの拍子で再起動して、挨拶をしようとします。節々はおそらくさび付き、バッテリーか燃料なのかわかりませんが、
おそらくもう少しで動けなくなる寸前の最期の最期にプログラムされた命令がゆっくりと機動します。「ヒトニヤサシク」。
びっくりして怯えている人間に残り少ない力で何ができるか。
捧げてくる季語「すみれ」の可憐さに、もう言葉はいりません。

あ、けど「ドラクエⅦ」のお手伝いロボットは何十年もどうやって動いていたんだろう・・・??


果樹植う日たとへ明日が来なくとも まんぷく


大概の人はどうにかふんばって働いて、翌月お給料をもらいます。
時々思うのですが、例えばもし明日死んだりしたら、仕事していた日々はすべてタダ働きになるんだなぁ・・・。
なんていくら考えても明日死にますなんて教えてくれるものはありませんし仮に本当にそう言われても、んなもん信頼度0です。
明日死ぬかもしれない等と考えながら仕事に行く人などいないでしょう。
自分のために家族のために日々頑張っていることでしょうし、これからもそうするでしょう。
我々が俳句を日々詠んでみたり、勉強するために句集を読んだりするのも、
すべて季語「果樹植う」ことになるかもしれませんね。
いやぁ季語「果樹植う」とは、明日への希望や願いを感じる季語です。
実際に果樹を植えている農家の人も、例え「明日が来なくとも」子供たちや次の世代のためへの命のリレーとして、「果樹植う」でしょう。
そして作中主体も誰もかれも「あんた明日死にますよ」と言われてもきっとその人それぞれの「果樹植う」ことでしょう。
農業の方への賛歌とも、人間賛歌ともとれるような一句。
もっと言えば我々俳人たちの賛歌かも応援歌かもしれません。
今詠んでいる句が自分のメモ帳からこの世に解き放たれず今すぐ消えてしまっても、大したことではないかもしれません。
ボクの俳句なら尚更小指の先ほども問題はないではないか。大した句じゃないし。無駄になるかもしれませんがでも、それでもやっぱり今際の際(いまわのきわ)まで俳句を詠んでいることだろうと、気付かせてくれました。
一見ネガティブに見えますが、大きく力強い一句だと感じましたよ。


これにて「ヒマラヤ地」は以上になります!
画像を提供してくださった、このはる紗耶様が選んでくださった
「このはる地」三選を発表しちゃいます!



たんぽぽのわたが脱獄してるなあ いかちゃん               


たんぽぽは見た目の可愛らしさに反して、とても強い植物だと思う。たとえ牢獄に見えるような地であっても、きっとそこここに根を張り、花を咲かせている。
綿毛は更なる冒険への旅立ち。風に乗ってゆく先は果たしてどんな場所なのか。もちろん全ての種が芽吹けるわけではないし、芽吹いたところで邪魔者扱いされてブチッと抜かれてしまうかも。それでもたんぽぽの綿毛は現在を「脱獄」して旅立っていく。なんて軽やかで、なんて無謀で、なんて羨ましい!
眺めている人物はその綿毛を目で追いながら、少し嫉妬しながらも微笑んでいるのかもしれない。



パン生地をこねたら春をひとつまみ コンフィ         


ふんわり幸せな味になるように、丁寧に丁寧に生地を仕立てましょ。
一次発酵が終わったらガス抜きして丸めて、ベンチタイムは鼻歌で過ごして。成形はお好きな形にしちゃいましょう。動物のかたちもいいですよね。うん、かわいいかわいい!
そして忘れちゃいけないのが隠し味。そう、春を、この光や風をはらりとひとつまみどうぞ。びっくりするくらい口当たりがよくなっちゃうんですよ!
……えっ、知ってた? まあまあ、そんな顔しないで、二次発酵が終わったら焼きますよ〜♪
蔦若葉の覆うこの洋館で、春のほんわか焼きたてパン体験。
一日一名様限定のスペシャル企画、あなたも今度いかがですか?



燕来る洞窟教会の窓に オキザリス


かつては信仰の場として人が出入りしていた洞窟教会は、今は保全のため大半のエリアで立ち入りが禁止されている。口ずさんでみる讃美歌。歌詞はよくわからなくてメロディのみだけど。洞窟の中に声が淡く反響する。
少し湿った岩の匂い。昨日の雨の名残かもしれない。窓から外を見れば、今日はよく晴れて遠くにひと匙ほどの海も見えた。心地よい風がやんわりと吹きこんでくる。
その時、ふと視界を横切った何か。……鳥? 多分鳥だと思うけれど。立ち止まってしばらく見ていると、また。ああ、燕だ。今年も渡ってきたんだ。この洞窟教会のどこかに巣を作りたいのかもしれない。ほどよく観光客が出入りするし、雨風しのぐにもちょうどいいんだろう。
どうぞ神のご加護が燕たちにもありますように。
春の光の祝福がありますように。


明日は「ヒマラヤ天」予想の日!

さぁどの句が「ヒマラヤ天」でしょうかね??ぜひ予想を!!
お楽しみに!

第十六回 ヒマラヤなんちゃって句会

「ヒマラヤ苺」等々発表!!
「ヒマラヤ龍」発表!!
「ヒマラヤ天」発表!!

ヒマラヤなんちゃって句会 アーカイブ
俳並連1st句集 「ふんわり」
恵勇先生の俳句小説シリーズ! 
「ほんとはね」 ヒマラヤで平謝り

選句 本文 編集/ヒマラヤで平謝り 
兼題画像/このはる紗耶    
SpecialThanks/髙田祥聖 カニくん


お試しで作ってみた項目ですので、本当にサポートしていただかなくてもいいのですが、万が一なんとなくそんな気分でしたら・・・!