作品ごとに”異なる構造”の笑いを生み出す三谷幸喜監督(ザ・マジックアワー)
三谷幸喜監督映画「ザ・マジックアワー」を観ました。
本物の殺し屋と信じているギャングのボスと、ギャングのボスを映画の登場人物だと思っている殺し屋とのすれ違いが面白い映画でした。
三谷幸喜監督作品は、コメディの中でも、様々な構造の作品があると気が付きました。今回の「ザ・マジックアワー」はすれ違っているのに、なぜか会話が成立してしまう「すれ違い系」の笑い。お笑い芸人のアンジャッシュのネタと同じ構造だと感じました。
「ザ・マジックアワー」にも一瞬登場した、香取慎吾演じるミュージシャン只野憲二が出てくる同監督作品「THE 有頂天ホテル」は、伏線回収系の面白さでした。物語のあちこちに伏線を敷いて、回収していく痛快感と面白さ。「鍵泥棒のメソッド」「アフタースクール」「運命じゃない人」で知られている映画監督・脚本家の内田けんじさんの作品と似た構造だと思いました。
さらに古い作品「12人の優しい日本人」は、「12人の怒れる男たち」がもし日本人だったらどうなるかを描いた作品でした。「日本人らしさ」への共感と、原作への反映の見事さが面白い映画だと思います。共感と原作への反映による面白さは、「現代であれば…」と聴き手の共感と、長年受け継がれてきた噺への反映で笑いをとる落語「叙々苑」「シャブ浜」と似た構造だと感じました。
三谷幸喜監督は、様々な笑いの構造、笑いの型を使いこなして作品を生み出し続けているところが、すごい人だと思いました。