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エンジニアを右から左に流す人売りSESは果たして必要なのか

こんばんは。ひまパパです。
ここ数日、私のTLでは人売りSESの話で盛り上がっています。

この一連のツイートに色々とリプをいただき「なるほどなぁ」と思う内容もいくつかありました。その辺も踏まえて本記事のタイトル「エンジニアを右から左に流す人売りSESは果たして必要なのか」を考えたいと思います。

「人売りSES」のしくみの簡単な説明

構造

簡単に言うと多重商流構造となります。良く見るこの画像はだいぶ近い感じです。(タダになることはまず無いですが…)

この絵は
・発注者は300万円で仕事を出したい
・なぜか受注者はタダで仕事をすることになっている
というものです。実際の人売りSES企業が介在する場合でもここまで極端な話にはなることはまずありませんが、中間商流によりマージンが発生して最終的な受注者には1円も入らないという構造を表しています。

以下にもう少し現実的な例を書きます。

①発注元企業A:月単価100万円でエンジニアを募集
②人売りSES企業B:月単価80万円でエンジニアを募集
③エンジニア在籍企業C:人売りSES企業を介して月単価80万円でエンジニアを提供

月20万円は人売りSES企業Bが中間マージンとして取ります。
お気付きだと思いますが企業Bは右から左に人を流しているだけで実務は一切行わない形となります。

何が問題なのか

発注元企業Aは月100万円のお金を出します。当然月100万円相当の働きを期待するはずです。
エンジニア在籍企業Cは月80万円しかお金はもらえません。当然80万円分の仕事をすればよいと思うはずです。

ここにズレが生じています。実際に支払われている金額と提供される価値に差異があります。

また、人売りSES企業Bが毎月もらう20万円は果たして何の価値に対する20万円なのでしょうか。(企業Bは実務は一切行いません)

エンジニアの給料も在籍している企業から出ます。エンジニアの在籍企業Cは本来ならば月100万円の売り上げになったはずなのに人売りSES企業Bを介在することによって月80万円に減ってしまいました。年間で言うと240万円の差分となりますのでこれは実務を行うエンジニアの給料にも影響が出てくると考えられます。

人売りSESは必要だという意見

該当ツイートのリプで複数の意見をもらいました。確かに現状の法律や仕組みを考慮するとそういう流れになってしまうのも無理はないという意見も多数ありました。以下にまとめます。

口座(基本契約)の手間を簡略化するための必要性

エンジニアが在籍する企業が10名程度の小さな会社のような場合、人売りSES企業を介することで契約が成立するというシチュエーションがあります。以下のようなパターンです。
①発注元企業Aと人売りSES企業Bは取引実績があり、基本契約も締結済み
②発注元企業Aとエンジニア在籍企業Cは取引実績がない
③人売りSES企業Bとエンジニア在籍企業Cは取引実績があり、基本契約も締結済み

一番自然なのは、発注元企業Aとエンジニア在籍企業Cで新規に基本契約を結び直接契約を行うのがよさそうです。ですが実態はこれが嫌がられます。
理由は基本契約の手間であったり、そもそも企業Cの規模が小さすぎて企業Aの諸事情で基本契約が結べないケースがあります。そこで看板貸しのように企業Bが間に挟まる事でスムーズに契約ができるという仕組みです。基本契約を結ぶには時間もかかるので、実務開始までの迅速化にもなります。

営業や案件ネットワークとしての必要性

もう一つの意見は営業活動・案件の情報網として必要だという考え方です。
小さい会社の場合、代表取締役社長が営業も兼務しているようなケースもあり十分に営業活動が行えない場合があります。
そこで人売りSES企業が流してくれる案件に自社のエンジニアをアサインすることで事業を継続している形があります。
つまり、人売りSESに支払う中間マージンは営業活動のアウトソーシング費用であり「必要経費」とするパターンです。

理由は分かったし納得もした。だが、その上でこれはやはり淘汰されるべきだと思う

ツイートでたくさんのリプをいただきましたが「人売りSESは必要」という意見はおおよそ上記2パターンに集約されそうな感じでした。確かに上記を見ていると納得できそうな面もありますが、それでも私はやはりこれは淘汰されていくべき業態なのではと思っています。

数字上の誇張が発生してしまう

各社の企業指標である「売上」を見ていきましょう。
まずは人売りSES企業が介在しないパターン。

発注元企業A
 支出:100万円
エンジニア在籍企業C
 売上:100万円

自然ですね。直契約するとこうなります。
全ての取引全体で見ると「売上:100万円」です。
では次に人売SESが介在するパターン。

発注元企業A
 支出:100万円
人売りSES企業B
 売上:100万円
 支出(仕入):80万円
エンジニア在籍企業C
 売上:80万円

こうなります。全体で見るとどうなるでしょうか。
「売上:180万円(100+80)」です。
間に会社が入った事によって全体の売上が80万円も増えました。

一般的に「売上」という数字は事業活動における価値指標の一つです。
売上がたくさん上がるということは、それだけ企業が価値を出しているという指標になるのです。
ですがこの例はどうでしょうか。人売りSES企業Bが介在した事によって、果たして80万円の価値は創出できたのでしょうか?私はそうは思いません。
(この例では間が1社だけなので80万円程度で済んでいますが、2社、3社と増えるとますます全体の売上が増えていきます)

この売上という数字は、日本全体の経済状況を表す数値にも使われます。
上記例のような「本来は上がらなくても良い売上」が計上されることは日本全体として見た際にも好ましいことではないのではないでしょうか。

その他の分野における中間商流排除の流れ

話の目先を少し変えて違う業界の動向を見てみましょう。野菜や乳製品などの一般消費物の世界で考えてみます。
インターネットや物流が発展したことにより、令和の時代では生産者から直接物品を購入できる手段など、より安く購入できる手段が普及しました。
TVでたまに放映される特集では「どうしてこんなに良いものをこの価格で?」という問いに対して「生産者と直取引をしていて」「自家牧場を持っていて」など、余分な商流を排除することにより消費者により良いものを安く提供する企業努力が紹介されたりします。

ここで皆さんに聞きたい事があります。上記企業努力や技術の発展によって「良いものが安く手に入る」しくみがあるのに、余分な商流を挟んで高い価格で買いたいですか?

買いたくないですよね。
ITの分野に話を戻しますが、上記の流れはITにおけるSESにも適用されていくべき流れだと思っています。

具体的にどうすれば解決するのか

口座(基本契約)問題について

口座(基本契約)の話は法律にも関与するところなので解決には国の介在が必要かもしれません。
小さな会社が共同で参加するユニオンみたいなものを作って、そこで契約関連などを一元的に管理するなどのしくみが取れないかなぁ等は思いつきました。(思い付きレベルなので実現性はわかりません)

営業活動、案件ネットワークとして

正直これはどうにでもなると思ってます。
あんたらITの会社でしょ?仕事で情報扱ってるんでしょ?と。
いつまで個人・会社のコネクションに依存した調達をしてるの?利権か?利権なのか?あ?いうお気持ち。
発注側も受注側も、アナログなやり方はさっさと捨て去りましょう。

まとめ

上記問題が解決した際、人売SES企業は事業として成立しなくなっていると予想しています。業界の健全性の観点からも淘汰されるべき業態なのかと思っています。


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