雑録:小説Aについて(3)
どうもストーリーがつながりません。はっきりとしているのは書きたいポイントだけで、そこに至る道筋が、まったく浮かんで来ないのです。
それはそれとして、目下の関門になっているのは、神々と人間たちとのつながり方の問題です。今のイメージだと、神も人も、此岸と彼岸を行き来します。彼岸の場合には何でもあり、としても、此岸では神に実体はない、というのが現時点での前提です。神が人間に憑依することを可能にするための手段でもあるのですが、その際、憑依された人間の意識と尊厳は、どのように位置付ければよいのか?
掻い摘んでいえば、神と巫女とをどのように折衝させるのが適当なのか、ということです。
無垢であり、肉体的には原状復帰が約束されているとすれば、憑依された者には、少々常軌を逸した場面に身を置いてもらうことも考えられます。ですが、それに重ねて人間もが絡んでくる場合、すべてのことをきれいさっぱりと水に流すというのは、少々難しいようにも思われます。それこそ、あくまでも神の所業に属することとして、それに関与した人間については、記憶を含めてすべて消してしまう、というようなことにしてしまうのか?
何だかまだ、ちょっと足元が定まらない感じです。
それはそれとして、今痛感しているのは、神話の世界に関する素養に貧しく、どうにもイメージの膨らみが乏しいことです。こんな段階で下手にストーリーをひねり出そうとするよりは、以前から気になってはいたものの、まじめに読むことのなかった吉野裕子さんの本でも手に取ってみようか、などと、つらつらと思い悩んでいる昨今です。