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ちりめんじゃこ

衝撃の結末が待っている作品が好きだ。

作品に裏切られていたことを知るとき

ああ、出逢えてよかったと思うから。


まだ寒さの残る2月下旬

運転を手伝うという重大任務を放棄して、

助手席からぼーっと夜の街を眺めていた。

車内のテレビでは洋画が流れていて、

異国の男はどうやら焦っているようだった。

乾かしていた小魚が風に飛ばされてしまったのだろうか。


そして、頭に浮かびきるより先に口にしていた。


ちりめんじゃこって面白くない?


今までずっと思っていたわけでもない。

なにか話そうと思っていた矢先、

静寂を裂いた一言がたまたまこれだった。

自分でもびっくり。

無責任に放ったそれになんとか責任を持つべく言葉を探す。


でも考えてみると天才的な発見だなと我ながら感心。

なんて面白く、素敵な単語なのだろうか。


ちりめん


ひらがなの中でも特に丸みを感じさせる4文字が見事選抜されている。

そして、どことなく日本が誇る「和」を感じる。

いろはにほへとちりぬるを

はないちもんめ

このあたりとの共通部分に日本を感じているのかもしれない。

日本語はなんて美しい言語なんだろう。


じゃこ


ちりめんにうっとりしていると、後ろのいかつい奴らに気が付く。

ちりめんじゃこという単語を面白くしているのは彼らに違いない。

せっかくの丸く可愛らしい雰囲気を彼らが鋭く乱暴に破壊する。

丸さと可愛らしさにそれらが加わり、もはや混沌状態だ。

そしてその混沌加減が何とも面白い。


運転手はそんなしょうもない私の語りを親身に聞いてくれた。

幸い、言葉が届いたようで共感してくれているようだった。


ちりめんじゃこ

まさにラスト数分の逆転劇

衝撃の結末だ


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