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テレビゲームとゲームセンターとナラティブと

 今年(2020年)の1月、小樽で文化庁メディア芸術祭小樽展が行なわれました。メディア芸術祭とは何ぞやというのは文化庁のホームページにて下記のように書かれています。

 文化庁では,アート,エンターテインメント,アニメーション,マンガの4部門において優れた作品を顕彰するとともに,受賞作品の鑑賞機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバル「文化庁メディア芸術祭」を実施しています。
 この受賞作品を中心に,優れたメディア芸術作品の鑑賞機会を提供するため,平成14年度から国内の様々な都市において展覧会を開催しています。このたび,文化庁メディア芸術祭 小樽展として展覧会「メディアナラティブ ~物語が生まれる港街で触れるメディア芸術」を別紙のとおり開催いたしますので,お知らせいたします。

 エンターテインメントの中にビデオゲームも含まれていて、『人喰いの大鷲トリコ』や『Rez Infinite』、『初音ミク -Project DIVA-』といったタイトルが展示されていました。このイベントのエグゼクティブアドバイザーである水口哲也さん(エンハンス代表)は元セガ社員で「セガラリー」や「スペースチャンネル5」を手掛けた方でもあります。

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 また、ここ数年の小樽は『小樽アニメパーティー』というイベントを開催しており、アニメ・マンガを含むメディア芸術に力を入れているという向きもあります。小樽アニメパーティー・メディア芸術祭ともに小樽文学館が会場のひとつになっており、小樽におけるメディア芸術の発信拠点のひとつといっていいでしょう。小樽のような地方におけるメディア芸術祭は、メディア芸術と地域を連動させて地域起こし的な側面を与えようとしている感じもあります。
※小樽アニメパーティー:http://otaru-anime.com/

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 そんなメディア芸術祭小樽展のキーワードだったのが『ナラティブ』。ちょくちょく聞く言葉でありながら今ひとつ意味が不明瞭なワードですが、今回のメディア芸術祭では「個々人の経験から生み出される個々の物語」という定義付けがされていました。小樽文学館では、札幌在住の漫画家・瀧波ユカリさんと詩人の三角みづ紀さんによるライブドローイングが行なわれ、そのネタとなったのがお二人が小樽滞在中に出かけた場所での体験でした。
ナラティブライブのメイキングとトークイベントの映像は下記リンク先でご覧になれます。
https://youtu.be/1tcNekxwMOI

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 さて、ここから2021年に小樽文学館で開催予定の『小樽・札幌ゲーセン物語』展と絡めた話になります。ナラティブというのは昔からテレビゲームと親和性が高いものだったと思います。ポケモンの生みの親である田尻智さんがその昔に書いた本『パックランドでつかまえて―テレビゲームの青春物語』は文字どおり田尻さんが一人のゲームプレイヤーだった頃の経験から紡ぎ出された物語で、田尻さんのナラティブと言えるものでした。
https://bookmeter.com/books/45457

 ビデオゲームに長時間親しんだ者は例外なく何らかのナラティブを生み出していたはずです。それは楽しい・面白いことばかりじゃなく、悲しいことや悔しいことでもあったでしょう。さらに、そういった人たちが集まるゲームセンターという場では、個々人のナラティブがより複雑に絡まって多層的なナラティブを生み出していた。前述の「パックランドでつかまえて」もそういう物語でした。

 『小樽・札幌ゲーセン物語』は昨年末まで「テレビゲームと文学展1.5」みたいな認識のまま停滞していましたが、その停滞を崩して具体的な方向性を与えてくれたのがメディア芸術祭でした。であるならば、このナラティブという要素は外せない。コロナ禍が本格的になる前の2月まではテーマがあやふやでしたが、3月以降になってテーマをゲーセンに絞る形になりました。ゲーセンをキーワードにいろいろリサーチすると、ゲーセンを通してナラティブを生み出している人が多いことも透けて見えてきて。よりナラティブという文脈を取り入れて良さげになってきています。わたしの前回の投稿「ゲーム道のはじまり」もわたしなりのナラティブへと至るそのはじまりといった内容でした。
https://note.com/hilow_zero/n/ne785a1b995bd?magazine_key=m535d51202b05

 以上、メディア芸術祭小樽展と小樽文学館でのテレビゲーム展をつなぐキーワードのひとつである「ナラティブ」について文章にしてみました。展覧会開催までに集まったナラティブを展示して終わりではなく、来場してくれた皆さんからさらなるナラティブを集める形にするのも面白いかもしれません。

 ビデオゲームにおけるナラティブについてはゼビウスの作者である遠藤雅伸さんがまた違う定義付けをしています。
https://news.denfaminicogamer.jp/projectbook/xevious
先に述べた田尻智さんや同じくポケモンを手掛けた杉森建さんとのトーク。「パックランドでつかまえて」についても触れられています。ゼビウスを例にとってゲーム中に提示される断片的な情報からプレイヤー各人が自由に解釈できる余地をナラティブと定義付けています。

■ 地方の文学館でテレビゲーム展を開催する・バックナンバー
https://note.com/hilow_zero/m/m535d51202b05

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