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「定義」は「レジリエンス」を焙煎しない
専門家が教えてくれない「レジリエンス」①
みなさんこんにちは。みなさんの「レジリエンス」を泡立てて心に薫らせる「レジリエンスの焙煎士」ほりしんです。
「レジリエンス」をわかりやすく伝えるためにいろいろなアプローチをしています。今回から『専門家が教えてくれない「レジリエンス」』というシリーズを始めました。
「レジリエンス」という言葉はよく聞くけど、いまひとつよくわからないという方が多いのではないかと思います。
特に「レジリエンス」の専門書の第1章に必ず出てくる「レジリエンスの定義」は何度読んでもどうもピンときません。
例えば全米心理学会の「レジリエンスの定義」は、
「逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理プロセス」となっています。
またマイケル・ラターというイギリスの心理学者は
「不適応につながりやすい危機的環境に対する、人の反応を修正、改善、または変化させる防御推進要因」
と言っています。
何とか言葉自体は理解できても、その「レジリエンス」が自分の中でどう働いているのか実感が湧かないのではないでしょうか。
しかも「レジリエンス」の働きはひとそれぞれで「多様性」が「レジリエンス」の特徴ということで、世界には100以上の「レジリエンスの定義」があるらしいです。
ちなみに「定義」に含まれているキーワードは、
「逆境」「困難」「ストレス」「防御」「回復」「適応」「成長」「精神力」「資質」「能力」「プロセス」・・・単純にこの11個の単語の組み合わせで多数の「定義」が作られたとしか思えませんね。
そしてこの「定義」をじっと眺めていても「レジリエンス」が自分のメンタルの一部だとは自覚できません。
例えば「レジリエンス」は「能力」なのか「資質」なのか。
「能力」なら「トレーニングで鍛える」必要があります。でも「資質」なら気づいて発揮すればいいだけです。
またミッション(役目)は「防御」なのか「回復」なのか、はたまた「適応」なのかという、その働きも複雑です。
もちろん研究者のみなさんにとってはこの「定義」を定めることで、その後の理論の方向性が決まる訳ですから重要なプロセスであることは否定しません。
しかし一般人である私たちにとっては「レジリエンス入門」のそれこそ入口にこの「定義」がどんと構えていることで、せっかく興味を持って来たのにその「門」をくぐりにくくしていることも事実です。
「レジリエンス」ともっと気軽に付き合うためにはこの「定義」を深く追求することはやめて、「レジリエンス」は「資質」であり、「回復」より「適応」が最優先の「ミッション」であるという私なりの解釈に立って、その存在や働きを「イメージ」で捉える方が簡単でいいのではないかと考えました。
つまり私たちが知りたいのは「定義」ではなく、「レジリエンス」という力が本当に自分の中に存在して、困難な出来事に遭遇して途方に暮れている時や大きな失敗をして心が折れそうな時に、それ以上傷が深くならないようにギリギリで自分を支えてくれているのだという実感、そして次に誰もが持っている「資質」である「レジリエンス」をどうやって意識すればいま抱えているストレスを少しでも軽く感じることができるのか、という「感じ方」と「使い方」なのではないでしょうか。
この「感じ方」と「使い方」を意識しやすいように、このシリーズでは特に「資質」と「適応」にフォーカスしました。
「レジリエンス」は誰もが持っている「資質」です。であるなら「鍛える」のではなく意識して発揮すればいいのです。
そして「レジリエンス」の最優先のミッションは「回復」より「適応」です。
落ち込んだ時はすぐに「立ち直ろう」としなくてもいいのです。
(『チャレンジしない「Never Give Up」』で紹介した、シモーン・バイルス選手を思い出してください。)
まず「立ち止まる」。
「落ち込んでいる自分を受容する」。
そして「ネガティブ感情とネガティブ思考」を底打ちする。
これが「レジリエンスを焙煎する」プロセスと意味です。
「定義」は「レジリエンス」を焙煎しないのではないでしょうか。
⇒ぜひYouTubeの「レジリエンスの焙煎士」もご覧ください。
次回は『「レジリエンス」は「精神力」の一つ』であるという話を書きたいと思います。
「集中力」や「持続力」と同じように私たちの心に存在している「精神力」の一つです。だから「集中力」と同じように意識すればもっと発揮できるはずです。
それでは次回をお楽しみに。
「レジリエンスの焙煎士」ほりしんでした。